経産省トイレ訴訟“女性として生きる”職員が逆転勝訴……最高裁「制限は違法」 職員は「職場で肉体的性別は全く関係ない」
女性として生きる性同一性障害の経済産業省職員が、女性用トイレの使用を巡って国に改善を求めていた裁判。最高裁は11日、職員の訴えを認める判決を下し、逆転勝訴となりました。性的マイノリティーの人の職場環境について最高裁が初めて判断を示しました。
■職員「自認する性に即した生活を」
11日夕方、都内で経済産業省の職員が会見を開きました。「女性として生きているのか、男性として生きているのか。服を着て業務をやるわけですから、そこ(職場)で法的性別や肉体的性別は全く関係ないわけですよね」と訴えました。
職員は、戸籍上は男性ですが性同一性障害と診断され、女性として生きています。「大事なのは、自認する性別に即した社会生活を送ることです」と会見で強調しました。
■最高裁「トラブルは想定しがたい」
勤務するフロアの女性用トイレを使うことが認められず、2階以上離れた女性用トイレを使うよう制限されたとして、国に処遇の改善などを求め、裁判を起こしていました。
一審では、トイレの使用制限は「違法」。ただ二審では一転「違法ではない」と判断され、判断が割れていました。
11日の最高裁での判決では二審判決が取り消され、職員の逆転勝訴に。裁判長は「女性用トイレを自由に使用することについてトラブルが生ずることは想定しがたい。他の職員に対する配慮を過度に重視し、職員の不利益を不当に軽視するもの」と指摘しました。
■勝訴受け…職員「かなりポジティブ」
最高裁は、数年にわたり離れた階の女性用トイレを使ってもトラブルが起きていないというこれまでの生活実態などを例に挙げ、職員の訴えを認めた形です。性的マイノリティーの人たちの職場環境について最高裁が判断を示したのは初めてです。
勝訴を受けて原告の職員は「かなりポジティブと言いますか、踏み込んだ指摘がなされています。トイレに限った話ではなく、他の職員と差別がないようにしてもらいたいというのが私の要望です」と語りました。
経済産業省は「今後の対応は、関係省庁と協議の上対応していく」とコメントしています。
■落合さん「性について抑制的すぎる」
「今回、原告の方は女性として生活してきて、職場で説明会が開かれるなどしたことを踏まえての、個別での判断です。男性として生活している人がある日突然、『自分は女性だ』と行って女性トイレに入ってOK、という話では全くありません」
落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「私は当然の判決だと思います。今回のケースは微妙に違いますが、カフェなどで個室のお手洗いが男女で分かれていないのは合理的だと思っています」
「お手洗いなどだけでなく、今の日本はこのような性の部分が慎重で抑制的すぎると思っているので、今見直す時なのだろうと思います」
有働キャスター
「多様性という言葉が最近よく使われますが、言葉だけが独り歩きしているような部分があります。今回の最高裁判決をきっかけに、一人一人が考えていくことが大事だなと思います」
(7月11日『news zero』より)