「最期に大切な時間を」コロナ感染者家族の選択は“自宅で看取り”
新型コロナウイルスに感染し、自宅で容体が急変した95歳の女性。家族は「最期まで一緒に過ごそう」と、病院ではなく自宅で看取ることを選びました。
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今月18日、訪問診療を行う医師が訪れたのは、以前から往診していた、都内に住む95歳の女性患者がいる自宅です。
医師
「しんどいですか?」
陽性が判明した女性(95)
「はい」
女性はワクチンを2回接種していましたが、検査で陽性と判明しました。
医師
「いま中等症Ⅱって状態で、重症の一つ手前だけど、事実上は重症に近いところであって」
2週間ほど前に一時利用した高齢者施設で感染したのではないかといいます。その後、女性は容体が急変しました。
医師
「最近まで元気でね。昨日も『すごいぐったりしてて』って言うから、『えー』って思って。本当に悔しい。すごい、悔しいんだけども」
持病の心臓疾患も悪化し、医師が診察したときにはもう回復の見込みがほとんどない状態になっていたとのことです。
医師
「今って、『コロナ』ってなったら病院に送って、会えることなくどんどん(病状が)進んで、小さくなって(お骨で)帰ってくるから」
女性の娘
「それもちょっと悲しい。せっかくね、おうちでできることが」
家族は、女性を家で看取ることを決めました。
医師
「また来るよ」
そして、診察の2日後である今月20日、医師が再び女性宅を訪問していました。
医師
「死亡を診断させていただきます。このたびはご愁傷様でした」
女性の娘
「こんなに早くね、急に…」
陽性と診断されてから、わずか2日での急な別れとなってしまいました。4月に誕生日を迎える予定だった女性のために、家族はあることを計画していたといいます。
女性の娘
「孫やひ孫が集まって、うちでささやかだけどホームパーティーをやってあげようかなと思って」
その計画は、実現しませんでした。それでも――
女性の娘
「最期の方になって、やけにお母さんが手を握ろうとしていたんです。握って何か言いたそうな、“これでお別れ”みたいな感じだったのかなと」
「最期までちゃんとそばにいられて、やれることだけやってあげられたなと。娘とも話して、『よかったね、うちでね、病院に行ったら会えなかったよね』と」
亡くなった女性の娘は「最期に一緒にいられてよかった」と語っていました。
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第6波では、高齢者の死亡者数が増え続けています。
医師は――
ひなた在宅クリニック山王 田代和馬院長
「高齢者によっては、典型的なコロナの症状が出ない方も多くて、診断時すでに重症化していた方も複数いらっしゃいまして、高齢者ならではの難しさを日増しに痛感するようになっています」
高齢者の家族には、「ちょっとした体調の異変でも気軽にかかりつけ医に相談してほしい」と話します。
そして――
田代院長
「場合によっては、自宅で人間らしい時間を、最期に大切な時間を過ごすということも、社会的に受け入れていくべきなのかな」
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24日、東京では、新たに1万169人の感染を確認。5日連続で前の週の同じ曜日の人数を下回りました。全国の新規感染者は、6万1259人で、206人の死亡が確認されています。全国的に減少傾向が続いていますが、専門家は、「その速度が鈍化している」と指摘します。
厚労省アドバイザリーボード 脇田座長
「10歳未満と80代以上は横ばい。今後BA.2系統に置き換わることで、新規感染者数が再度増加に転じる可能性にも注意が必要」
「これから年度末を迎える。卒業式あるいは春休み等の機会に多くの人が集まる行事が行われる。これまでも、このような機会をきっかけに感染が拡大したことから、感染防止策の徹底が必要」
(2月24日放送『news zero』より)