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冷たい海~知床遊覧船事故 犠牲者の叫び~

2023年1月27日 12:22
冷たい海~知床遊覧船事故 犠牲者の叫び~

去年4月、北海道知床半島沖で起きた観光船沈没事故。乗客乗員20人が死亡、6人はいまも見つかっていない。天候の悪化が予想される中、観光船「KAZU Ⅰ」は港を出航した。今も帰りを待つ家族の苦悩と怒り。次々と明らかになるずさんな運航実態。未曽有の沈没事故の真相に迫る。

冷たいオホーツクの海に投げ出された、幼い我が子。

家族が行方不明の男性「信じたくないですけど。これを見たときに、乗っていたんだな、と思って」

沈没した観光船「KAZU Ⅰ」に乗っていた息子とその母親の行方は、いまもわかっていません。

北海道内を旅行していた2人。事故前日には、母親が撮影した息子の様子が、男性のスマートフォンに届いていました。

家族が行方不明の男性「旅行に行く前の日も、2人と会って話をして、気をつけて行ってきてねと言って見送りました」

事故当日の朝に届いたメッセージ。『今から船乗る!』このメッセージを最後に、2人との連絡は途絶えました。

唯一返ってきた、息子のリュック。中には、息子がいつもかけていたメガネも入っていました。

家族が行方不明の男性「船から海に飛び込むときに、息子の母親が海で無くさないようにってリュックにしまってくれたんだと思うんです。最後の最後まで、生きる望みは捨てていなかったと思います」

男性は事故のあと、PTSD=心的外傷後ストレス障害を発症。食事も喉を通らなくなり、自宅でふさぎこむようになっていました。

事故を起こした観光船会社「知床遊覧船」の事務所は、シャッターの閉まった空き家になっています。

沈没した観光船「KAZU Ⅰ」。20人が亡くなり、いまも6人が行方不明のままです。

去年4月。

報道陣「どうして遺族に説明しないんですか?」

「知床遊覧船」の桂田精一社長は、事故について発言を避け続けてきました。

会見を開いたのは、事故から4日後。

桂田精一社長「この度はお騒がせしまして、大変申し訳ございませんでした」

これ以降、桂田社長は家族に向き合っていません。

家族が行方不明の男性「弁護士を立てているから、もう自分は関係ないというような、そんな感じはします。まだ直接、しゃべったこともないですし、直接、謝罪も受けたわけでもないです。そこだけは本当に許せないと思っています」

事故当日、4月23日の日付が押された、乗船券とパンフレット。亡くなった家族の荷物から見つかりました。

家族が行方不明の男性「パンフレットがまた上手に作ってあるんですよね。きれいにやっているからこそ、ちゃんとしている会社なのかなって、たぶん自分だったら思っています」

国の運輸安全委員会が発表した報告書では、沈没の原因として、船の前方にあるハッチの留め具に不具合があったと推定しました。船の揺れでハッチが開いて浸水し、船底の隔壁にできた穴から広がって沈没したとみられています。

ずさんな運航体制が招いた取り返しのつかない事故。これまで、自宅でふさぎ込んでいた男性。

しかし。

家族が行方不明の男性「このままじゃちょっといけないなと思って。2人のために、自分がしっかりしなきゃいけないなと」

あの日から止まった時間。

でも、つらい現実と少しずつ向き合い始めています。2人への、「おはよう」「おやすみ」の声かけは、いまも欠かしません。

家族が行方不明の男性「今回の事件って、これだけの事件なのに、誰一人としてまだ責任を取っていない。何も変わってないんですよ」

凍てつく寒さに見舞われる、知床の冬。残る行方不明者6人の捜索は、いまも続けられています。

2022年12月25日放送 NNNドキュメント’22『冷たい海~知床遊覧船事故 犠牲者の叫び~』をダイジェスト版にしました。