温泉街の「廃虚」再生へ 「街を盛り上げたい」大学生らの取り組みとは… 群馬・みなかみ町
温泉街などの観光地で旅館やホテルの廃虚が増加し、問題となっています。廃虚をどう再生させるのか? にぎわいを取り戻す新たな取り組みを取材しました。
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3連休最終日の9日、「news every.」は群馬県みなかみ町にある温泉街に向かいました。シャッターが閉まっていて、看板が割れてしまっています。
みなかみ町 企画課地域創生係 石坂貴夫さん
「自分たちが子どもの頃のイメージとは、かけ離れていますね。もっと人が歩いていたのは覚えています」
人通りは少なく、閑散とした様子。さらに4年前に営業をやめた宿泊施設は、放置された状態になっていました。
許可を得て、特別に中へ入らせてもらいました。客室は当時の状態で残されたまま。ガラスのコップがそのまま置いてあり、大浴場もシャンプーなどが置かれたままになっていました。
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みなかみ町によると、このように「廃虚」となった旅館やホテルは複数あるといいます。北関東屈指の温泉地である水上温泉は1970年から80年代、高度経済成長期からバブル期にかけて、大型の宿泊施設が建設され、主に大口の団体旅行客でにぎわいました。
しかし、その後のバブル経済の崩壊で、日本の旅行形態はグループや個人旅行に変化。みなかみ町役場の石坂さんによると、次々と宿泊施設が廃業に追い込まれ、建物だけが残されたのです。
全国的に広がる「廃虚」の問題。栃木県日光市の「鬼怒川温泉」や、兵庫県神戸市にも廃業したホテルがありますが、いずれも所有者の特定や解体にかかる費用がネックとなり、放置されたままに。廃虚群が観光業に暗い影を落としています。
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こうした中、9日に大勢の人でにぎわっていたのは、廃旅館でおこなわれた“あるイベント”。その名も、「廃虚再生マルシェ」です。
“みなかみ町を人が集う場所にしたい”と、東京大学大学院の学生たちが町などとタッグを組みました。
東京大学大学院 都市デザイン研究室 長谷川帆奈さん
「この場所の将来像を、地元の人や観光客、訪れる人と一緒に共有する。将来こんな空間が広がったらいいなって」
イベントでは当時、宿泊施設で使われていた食器などの販売や、地元の食材を使った料理を出しています。
隣町の来場者
「どんどん廃れていく感覚があったけど、新しくて楽しそうと思い来ました。活気が出てきた感じを、きょう感じられてうれしい」
今後、レストランやサウナを完備した温泉施設などを作って、街を盛り上げたいということです。
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「活気を取り戻したい」と強化しているのは、ほかにも。
みなかみ町 企画課地域創生係 石坂貴夫さん
「このあたりは、みんなリノベーションをした建物ですね」
近年、廃虚とされていた施設をリノベーションした飲食店などが、続々とオープンしていました。
街の再生。日本が高齢化や人口減少の問題に直面する中、街を活性化するため知恵を絞っていました。