人事部がない?“介護人材争奪戦”の背景
世の中で議論を呼んでいる話題について、意見を聞く「opinions」。今回の話題は「介護人材争奪戦」――株式会社ウェルモ代表の鹿野佑介氏に聞いた。
公益財団法人「介護労働安定センター」は、人手不足を感じている介護事業所が全体の66.6%に上るとする2017年度の調査結果をまとめた。その理由で最も多かったのは「採用が困難」で88.5%を占めている。
ネット上では「現場を離れた介護士、二度とは戻らない」「医療現場も大事だが、特効薬はない」「外国人受け入れが、人手不足解消になるか」などの声が聞かれた。
――こうした調査結果についてどう思われるか、フリップをお願いします。
「人事部がない!」――とにかくこれかなと思っています。人手不足66.6%という数字がありました通り、人の採用が難しい、この中で人事部が果たす役割というのはすごく大きいんですね。
やはり採用のブランディングをしたり、あとは雇った方に対して、辞めないように、顧客満足度と同じように、従業員満足度を高める、そういった仕事を人事部はしていくんですけど、現状、介護事業所というと、中小企業が8割を占めています。その中で、人事部をちゃんと設置して、人事戦略を打てているかというと、そういった事業所は多くないという現状があります。
それが原因で、やはり離職率に影響が出たり、あとそもそも人事部が行っている採用ブランディングのところが、業界全体としてはやはり後手後手になっているので、介護の魅力というのが伝わっていない現状というのがあるんじゃないかと思っています。
本当に介護の仕事というのは、心がゆたかな現場だと思っておりまして、これだけ利用者やその家族から感謝される仕事はなかなかない、特に前職はITコンサルタントをしていたので、その感覚と、現場のこの温かい業務というのは、少し違うなと。やはりいい仕事だなと思っていまして、こういった魅力を、ぜひ人事部をつくって発信できればなと思っています。
とはいえ、人事部をつくるとコスト面が合わないということもあったりするので、弊社としては、ICTや人工知能を使いながら、そういった課題解決ができればなという思いで、そういった取り組みもやっています。
――人事部がないということをAIでまかなうことができるということですか。
例えば、介護事業所においては、どういう人がほしいかというのがあります。弊社がやっているデータベースがあるんですが、介護事業所のデータを分析することによって、その事業所にどういった人材が向いているのか、合っているのかという相性の問題ですね――これを、やはり介護事業所だと他の会社はどうかというのを、なかなか可視化できないですし、自身のことを客観的に見るというのは難しいので、その点においてICTで“見える化”をして、俯瞰(ふかん)することによって、その本人にとってベストな人を探せる環境づくりができるかなというところで、人工知能とかITの力を使っているというイメージですね。
■鹿野佑介氏プロフィル
株式会社ウェルモ代表。仙台から福岡までの介護現場のボランティアで感じた問題意識から超高齢社会を支援すべく、ウェルモを設立。AI(人工知能)を使ったケアプラン作成など先端技術による「利用者本位の介護」の実現をめざし、課題解決に取り組んでいる。
【the SOCIAL opinionsより】