現代アートは社会にケンカを売るのが仕事
世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「“防護服着た子供像”解体・撤去始まる」。社会学者・古市憲寿氏に話を聞いた。
「放射能のない未来」をテーマに、現代美術家のヤノベケンジさんが、東日本大震災の翌年に制作した子どもの立像「サン・チャイルド」。立像を譲り受けた福島市が先月から展示を始めましたが「防護服を着る子どもの姿が風評につながる」などと批判意見を受け、撤去・解体されることになりました。
解体・撤去費用は約160万円がかかる見込みで、像は当面、市の施設に保管されるということです。
ネット上ではこんな意見が見られた。
「設置したら撤去、税金使って無駄」
「撤去するまでやらなくてもいい」
「芸術作品なら美術館で展示すれば」
――この話題について古市さんの意見をフリップに書いていただきました。
「現代アートは社会にケンカを売る仕事」と書きました。
この像が論争を生むのはすごくわかるんです。福島イコール放射能、放射能イコール危ない、というイメージを増幅させると批判される方もたくさんいると思います。地元の人からしてみたら、福島はもう別に危険でもないのに、なぜこんな像がという批判も当然わかるんですね。
ただ一方で、現代アートの役割というものを考えると、みんなから批判もされないようなすごく穏便なものをつくったところで意味がないと思うんですね。こうやって論争になって撤去されるとか、世間で話題になることを含めて現代アートの役割だと思います。
現代アートとして考えてみるならば、撤去自体までを含めてある種のアートと思ってもいいかもしれなくて、現代アーティストとしては、ただ作品をつくって誰にも注目されない、もしくはただ褒められるようなモノをつくるよりも、あえてこうやって社会にケンカを売るような作品をつくったということは意味があると思います。
――現代アートとしては成功したんじゃないかということですか。
そうですね。もちろん地元の人の気持ちとかもわかるのですが、どうしてもアートに限らず言論もだと思うのですが、何かを言うと絶対に誰かを傷つけたりとか、誰かが嫌な思いをするというのはあると思うんです。
だからといって、みんなが傷つかない言葉ばかりを探していったら多分、本当に当たり障りのないつまらないことしかいえなくなってしまいます。それも社会としては不健全だと思うんですね。
そうではなく、社会の方向をみんなはこう見ているけれども、こういう見方もありますよね、ということを主張することがアートであったり、時には言論であったりだと思います。そういうことを含めると論争が起こること自体は必ずしも悪いことではなくてむしろ前に一歩進んだと思います。
だから福島イコール危ないという議論も、みんなしなければしないで済むけれども、あえてこういうタイミングでこういう議論するということは意味があったんじゃないかなと個人的には思います。
――そうですね。風化するのが一番怖いというなかで、話題に上がることは良いことかもしれませんね。
【the SOCIAL opinionsより】