注目がん治療“免疫療法”は万能?注意も…
“免疫療法”は万能?京都大学の本庶佑特別教授のノーベル賞受賞決定でがん治療の“免疫療法”が注目されている。しかし、受賞決定の翌日、国立がん研究センターは注意を呼びかけた。私たちは一体、何に注意するべきなのだろうか。
今月1日、ノーベル生理学・医学賞の受賞がきまった京都大学の本庶佑特別教授。「免疫療法」と呼ばれる新たながん治療に大きく貢献した。
~「免疫療法」ネットの声~
「免疫療法でがん治るといいな」
「またひとつ不治の病はなくなりそうだ」
「免疫療法ってすごいよね」
1日で6000件以上のツイートを記録。しかし、受賞決定の翌日、国立がん研究センターは、「本庶先生が研究された免疫療法(効果あり)とそうではないものがあることを多くの方に知っていただくことが大切と考えております」と効果が明らかになっていない免疫療法があると注意を呼びかけた。
免疫療法を受けた女性「結局、自分には意味のないかえって害になる治療だった」
免疫療法は万能なのだろうか?
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国立がん研究センターの相談支援を行う部署には4日も、免疫療法に関する問い合わせがきていた。
がん専門相談員「免疫療法で科学的根拠があるものっていうのが…」
少なかった免疫療法の相談が、全体の約8割にまで増えているという。
がん対策情報センター、若尾文彦センター長「『免疫療法』使えるのかというような問い合わせが増えてきているなと」
そもそも免疫療法とは、自分の体を守る抵抗力=免疫を使った治療。これまでの、手術、放射線療法、化学療法に加え、免疫療法は第4のがん治療と呼ばれている。
若尾文彦センター長「免疫療法という言葉が一人歩きしてしまっていますので、非常に万能じゃないかという非常に大きな誤解が生じてしまっています」
免疫療法がすべてのがんに効果があると、誤解している人も多いという。
本庶佑特別教授の研究がきっかけで開発され、免疫療法に使われるオプジーボ。実は有効性が科学的に認められているのは、胃がんや肺がんの一種などで、効果がある人はさらに限られる。例えば肺がんの一種の場合、効果がある人は2割程度だという。
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また免疫療法の中には、オプジーボとは違い効果が証明されていないものもある。
効果が明らかになっていない免疫療法を受けたという女性「私は小さい子どもを抱えていて、少しでも良くなりそうなものだったらなんでも試してみたいというような思いもありまして」
2011年に子宮体がんと診断された40代の女性。わらにもすがる思いで治療を受けたが、効果は得られず副作用にも悩まされたという。
免疫療法を受けた女性「注射を最初、左腕に受けました。(左腕が)結構腫れて、左側を下にして夜寝られないような状態になりまして」
女性が受けた免疫療法は、オプジーボとはまったく仕組みが違うものだったという。
免疫療法を受けた女性「(Q費用の面は?)免疫療法受けて150万円」
効果が認められていないため、保険は適用されず治療費は150万円だったという。副作用もあり、治療を途中でやめたものの、全額、支払ったという。
保険の適用されないこうした自由診療は、死亡リスクが2.5倍になるというデータもある。がんの専門医は次の3つに当てはまる場合、注意が必要だという。
日本医科大学武蔵小杉病院、勝俣範之医師「1番として“高額な自由診療”であること、2番目が『がんが治る』『消える』『副作用が少ない』といった“うたい文句”、3番目が“個人の体験談がのせられている”このうち1つでもあればまず怪しいと疑った方が良い」
有効性が分かっていないだけで、今後効果が認められる場合もあるが、国立がん研究センターは、自由診療の免疫療法を選ぶ前に、主治医と話し、臨床試験や治験に熟知した医師に相談することが望ましいとしている。