分別収集のはずが…川から“プラゴミ”が
マイクロプラスチックによる環境汚染の対策として国は19日、レジ袋の有料化を義務づける方針を打ち出す。取材をすると、分別収集されているはずのプラスチックゴミが、私たちの身近な川にも流れ出ている実態が分かってきた。
先月、東京・荒川の河口に若者たちが集まっていた。
「これが我々が開発した調査装置なんですけども、この中にたくさん汚い水を送り込んでこしとるんですけども」
手作り感あふれる調査機器。スクリューを起動して水に沈める。彼らは環境汚染対策のベンチャー企業の社員たち。水を吸い込んでネットが大きく膨らむ…3分後。引き上げてネットを調べると、緑や白の粒が出てきた。
「これとかは完全にそうだと思います。自然界にこんなものはないので」
彼らは川に流れているマイクロプラスチックを捜していた。マイクロプラスチックとは、プラスチックゴミが細かく砕けたもので、それによる海洋汚染が今世界中で問題になっている。主に途上国から海流に乗って日本に流れてくるとみられてきた。
株式会社ピリカ・小嶌不二夫代表「まだこれが国内海外と断定できるものではない。おそらく相当量、国内のものが多いと思っています」
まだデータは少ないが、調査を重ねた結果、ある実態がみえてきた。
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最もマイクロプラスチックが多かったのが東京湾の河口。主に海からの漂着ゴミとみられる。その一方で、全ての川からもマイクロプラスチックが見つかった。中でも注目は荒川。河口付近だけでなく海から遠くさかのぼった上流でも多く見つかった。これは何を意味するのだろうか。
集めたマイクロプラスチックを分析すると、まず目で見て気づくのは緑色の破片が多いこと。
「これはまだ断定はできないんですけど、人工芝っぽいものかもしくは足ふきマット。緑色のものが、ぱきっと割れたものが粒状になっている」
また、集めたゴミを調べると一番多かった成分はポリエチレン。全体の7割近くを占めていた。代表的なものはレジ袋。
「この物質はポリエチレンであったということが推測されます」
つまり、分別回収しているつもりなのに私たちが使ったプラスチックゴミが川に流れ出ている。
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問題はそれだけではない。今国内では、分別回収されたプラスチックゴミも業者に引き取ってもらえず、行き場を失っている。
日本でのプラスチックゴミは年間約940万トン。国内で新たな製品にリサイクルしているのは7%足らずで半分以上は、燃やして発電や熱として使っている。そして実は…2割近くが、再利用可能な“資源ゴミ”として海外、主に中国に輸出されてきた。ところが去年、中国は「もうゴミはいらない」とついに輸入禁止を決定。その結果今、国内でプラスチックゴミがだぶつき、自治体が悲鳴を上げていた。
宮城県環境政策課・三沢松子技術副参事「これまで買い取ってもらっていたというふうなものが、お金を払って処理してもらわなければいけなくなって負担になっている。出口があったところが出口がなくなってきているんじゃないかと」
中国に代わる新たな輸出先としては-。
三沢松子技術副参事「(代わりに)タイあるいはフィリピン、あるいは今まで輸出がなかったインドが入ってきているという形」
そうした輸出先の1つ。タイ・バンコクを今年8月、当時の渡嘉敷奈緒美環境副大臣が訪れた。日本からのプラスチックゴミの輸出が増える中、日本のゴミ処理技術でタイを支援しようと考えていた。
それにしてもゴミだらけ…家々からは、生活ゴミがそのまま川へ捨てられるという。
渡嘉敷環境副大臣(当時)「昔の日本みたい。大昔の」
とその時。ボートのスピードがおちはじめ、とうとう動かなくなってしまった。スクリューにプラスチックゴミがからまってしまった。
渡嘉敷環境副大臣(当時)「うわーひっかかってる」「すごくない。それ流したらまたゴミになりますよ」
日本から資源ゴミを輸入する一方で、タイ国内ではゴミがあふれている。こういう状況の国に、日本のゴミを輸出することに専門家は警鐘を鳴らしている。
日本から東南アジアに輸出された資源ゴミ。しかし、こうした国ではプラスチックゴミが適切に処理されず、海に流れ出て海流に乗り、めぐりめぐって日本に来るという。
東京農工大学環境資源科学科・高田秀重教授「やっぱり、元を断つことですね。日本が使いすぎているプラスチックを減らしていって、自国の中で処理できる量まで減らしていくことが必要だと思います」
国内にあふれ、海を汚すプラスチックゴミをどうするのか。政府は19日、審議会を開きまずは第一歩として“レジ袋の完全有料化”を打ち出す方針。問題を根本から解決するには私たちが出すプラスチックゴミを減らす以外に方法はない状況。