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公共の場の微生物“殺菌主義”はリスクも?

2019年5月8日 16:01
公共の場の微生物“殺菌主義”はリスクも?

都市環境における微生物の研究をしている伊藤光平氏。微生物は、数や種類を含め未知の部分も多いが、抗菌・殺菌のような排除の方向性は、人間の健康にとって好ましくない可能性もあるという。微生物が持つ可能性について聞いた。


――伊藤さんが今、興味を持っている研究はなんですか?

都市環境の微生物に興味がありますが、その中でも特に、海外のチームが発表した「ニューヨークの地下鉄でとれたDNAの約半分が未知の生物だった」というのに興味があります。


――ということは、伊藤さんも含めて、研究者が知らない微生物が存在していると?

そうですね、山ほどいると思います。


――そもそも微生物はどれくらい存在しているんでしょうか。

それもとても難しいところで、実際、微生物を研究するにあたって知らないことがたくさんあります。微生物を育てる条件などもわからないこともあり、環境中から微生物をとってきても、それをうまく自分たちの環境で育てられないということが多々あります。微生物の数も可能性も未知数だと思います。


――一方で、良い微生物と、悪い微生物ではないですが、そういう区分もありますよね。

それはあくまでも人間側で決めているものですが、良い微生物、悪い微生物が、私たちのおなかの中――腸内細菌などと言われていますが、ヨーグルトなどをとって、そのバランスを変えたりとかも可能になっています。私たちの健康にとって微生物の影響は大きいと思っています。


――健康に対して影響が大きい?

そうですね、病気になりやすかったりとか、逆に病気を防いだりとか、微生物がいろんな働きをしているというのは今までの研究で知られています。


――私たちは、微生物とか聞くと、ついつい殺菌とか除菌とか、排除の方向で考えてしまいますが、あまり排除するのも良くないということですか。

逆に、過度に微生物を殺してしまったりとかするのは、あまり良くないと思っています。逆に微生物の多様性をもってして、より良い健康な都市作りというのが、可能になってくるのではと思っています。

良いものも悪いものもたくさんいるというのが私は健全な環境だと思っているので、悪い微生物だけじゃなくて、良い微生物がいることで、特定の種類のものが増えるということがなくなるのでとても良い環境になるのではと思います。


――伊藤さんは、どういったものを目指しているのでしょうか。

今の抗菌・殺菌のように、微生物をたくさん排除する方向性から、多様性を重視する方向に、人々の意識を向けたいなと思っています。それが健康になる道だと私は思っています。そうすることで、今後、都市で人と微生物が共生できるような――それがもしかしたら建築デザインかもしれないし、いろんな可能性があると考えています。


■伊藤光平氏プロフィル
慶応義塾大学4年生。公共交通機関をはじめとした都市環境にひそむ微生物の研究をする「GoSWAB」プロジェクトの代表を務めている。微生物の研究に関わり始めたのは、高校生の頃。地元の山形県鶴岡市にある慶応義塾大学先端生命科学研究所の特別研究生に応募したのがきっかけだった。GoSWABプロジェクトでは、都市におけるヒトと微生物との共生関係を明らかにし、都市デザインや工学・医学への応用を目指す。


【the SOCIAL guestより】

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