非常勤産業医、増える役割に「自信なし」
世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「非常勤産業医の43%、増える役割に“自信なし”」。産業医・眼科医の三宅琢氏に聞いた。
オンライン健康相談サービスを提供している会社が産業医519人を対象にアンケートを実施した。働き方改革によって「産業医に求められる役割は増えている、もしくは増えていく」と答えた産業医のうち、「産業医に求められる役割に、対応しきれると思うか」と聞いたところ、非常勤産業医の43%が「対応しきれる自信がない」と回答した。
「自信がないと答えた」産業医からは「月1訪問では面談などで、時間がつぶれてしまう」「メンタルヘルスなど専門の内容が増えている」「産業医の責任が次第に重くなってきている」という意見が出た。
――フリップをお願いします。
『知識+姿勢』と書きました。多くの先生が「自信がない」と書かれていましたが、「自信がある」という先生はいないと思うんです。この時代の変化で企業が大きく変わっている中で、自信がありますというよりも、もっと大事なことは「知識の場所と姿勢」
だと思います。
僕ら産業医は、産業医学や医療の専門家であって、そこに対しての知識は我々が持っていて、現場の課題やニーズ、困っていることというのは現場の人が持っているんですね。現場の人の知識と、僕らの知識が混ざることがまず大切であって、彼らの知識は知らないというのが当たり前なので、ちゃんと聞きにいくということが、大切だと思います。
その上でもっとも大切なことは、私がここで紹介した『知識+姿勢』の「姿勢」なんですね。これは、僕らは医学や産業保健のことを教えにいくんですが、現場のニーズや課題は、教わりに行くんです。だから、産業医がいくら知識を持っていても、現場のニーズや課題は、現場の人が持っていますので、彼らに学び、僕らも教え教わるというのが、これからの時代にいちばん大切なことだと思います。
――まさに最初におっしゃっていたような友だちのような存在で、話を聞き合うという。
そうです。僕自身が新入社員研修で、新入社員の人たちの意見を聞くことで、今年のこの企業はこういう課題があるのかなというのを教わっているという感じですね。
■三宅琢氏プロフィル
産業医・眼科医。眼科医としてキャリアをスタートした後、「病気だけでなく人と社会をなおす」という魅力にひかれ、7年前に産業医としての仕事を開始。企業に対してのメンタルヘルス研修をはじめ、障害者雇用や健康経営に関するコンサルティング、小学生への出前授業の講師担当やマネジメント本を執筆するなど気づきと学びを処方する医者として活動している。また、眼科医としても目の不自由な人が、自分らしく生きるためのタブレット活用や運動と食事の処方、ゲームの開発など笑顔を増やして、新しい医療のあり方を模索している。
【the SOCIAL opinionsより】