青森市の高校生が“師匠のねぶた”に挑戦
青森市の高校生に唯一ある「ねぶた部」に所属する高校3年生が、かつて師匠が手がけた題材のねぶた作りに仲間たちと汗を流している。
青森工業高校の工作実習室でねぶたの色付け作業が進んでいる。青森工業の部活動「ねぶた部」が、今年の青森ねぶた祭に出陣させる担ぎねぶた。27年目の出陣に向け、電気科3年の林良紀さんが制作のリーダーを務めている。
林良紀さん「私の力がみんなに伝わるじゃないですけど、みんなのためになってくれればというのが、今のいちばんの思いです。みんなで作り上げるねぶたなので」
ねぶたの題材は「奥内伝説貝倉明神と龍」。鮮やかな青の明神様が真っ赤な龍と相対する勇壮な場面。配置や配色は違うが、これは林さんの師匠、ねぶた師の内山龍星さんが19年前に手がけた題材。
ねぶた師になるのが目標の林さんは、高校入学と同時に内山さんに弟子入り。今ではある程度の作業を任されるまでになっている。
ねぶた師・内山龍星さん「(下絵を見て)それなりに頑張っているなっていう印象は受けましたね。色合いといい、構図といい、面白いんじゃないかと思ってましたけど」
林さんたちねぶた部の部員はこの日、青森市の奥内地区にある神社を訪ねた。ねぶたの題材に選んだ言い伝えのある貝倉神社。
貝倉神社のご神体は、巻き貝やホタテなど貝の化石が固まってできた大きな塊。伝説では、貝殻が金貨に変わったといううわさを聞いた心無い村人が貝を持ち帰ったところ、雷鳴とともに龍が暴れて嵐を起こし里は大洪水に襲われた。そこで、貝を元の場所に返すと明神様が現れ、龍の怒りを鎮めたとされている。
青森工業高校ねぶた部、太田蒼希部長「本当にこういう伝説があることに実感が湧いて驚いたというか、とてもワクワクする気持ちになりました」
青森工業高校ねぶた部、三津屋虹南さん「いろいろ宮司さんからもお話を聞いて、よりもっと熱心に取りかかろうと思った」
地区の人たちもねぶたの題材に選ばれたことを喜んでいる。
貝倉神社、役員代表、吉崎琢也さん「どういう絵に、ねぶたになるか楽しみ」
貝倉神社、5代目神主、奥谷清四郎さん「作るのはたいへん難しいことだと思っていますけど、それに取り組む、そういう心意気がすばらしいと思う」
拝殿には、師匠の内山さんが19年前に手がけ神社に奉納したねぶたの下絵と見送りの一部も飾られていた。
林良紀さん「重さというか、やっぱり感慨深いものがあるというか」
ゆかりの神社を参拝し、気持ちも引き締まった林さんは、ねぶたの龍に目を描き入れ魂を吹き込んだ。
林良紀さん「結構、壮大な伝説を作っているので、改めてちゃんとものにしなければいけないという意気込みが出てきた」
林さんは、ねぶた部の仲間たちと迫力あるねぶたで沿道の見物客を湧かせようと最後の仕上げに取りかかる。