ウクライナ侵攻から3年 “日本に避難”した親子…娘は大学生に 父は戦地、離れて暮らす家族
ロシアによるウクライナ侵攻から24日で3年がたちました。出口の見えない戦闘が続く中、日本で避難を続ける親子を取材しました。
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24日、ウクライナの首都・キーウ。
佐藤篤志記者(NNNキーウ)
「戦死した兵士を追悼する旗がたてられた独立広場ですが、近づくことができません。キーウでは、各国の首脳が集まり緊急のサミットが開かれるため、厳戒態勢となっています」
ロシアによる軍事侵攻が始まって24日で3年。独立広場では、ウクライナのゼレンスキー大統領や各国の首脳らによる、犠牲者を追悼する式典が行われました。
これまでの戦闘で、ウクライナでは子ども650人を含む約1万2700人の民間人が死亡。また、ウクライナ軍の死者は4万6000人以上、ロシア軍の死者も9万5000人以上にのぼっています。
長引く戦闘で犠牲者が増え続ける中、停戦交渉の“仲介役”として戦闘を終結させたい考えなのが、アメリカ・トランプ大統領。ただ、ゼレンスキー大統領を「選挙なき独裁者」と呼ぶなど、“ロシア寄り”の発言を繰り返しています。
アメリカ トランプ大統領
「プーチン氏とは非常に良い話し合いができたが、ウクライナとはあまり良い話し合いができなかった。ウクライナは(交渉)カードを持っていないが強気だ」
21日に出演したラジオ番組では「停戦交渉にゼレンスキー大統領が出席することは重要ではない」としたほか、「プーチン大統領が望めばウクライナ全土を占領できるだろう」などと、ロシアの戦力を誇示するかのような発言も。こうした中、ゼレンスキー大統領は…
ウクライナ ゼレンスキー大統領
「ウクライナの平和のためなら、私は辞任する用意があります。可能ならNATO(加盟)と引き換えにしたい」
NATO=北大西洋条約機構に加盟できるのであれば、辞任もいとわないと発言。トランプ大統領から「選挙なき独裁者」だと非難されたことに対し、反論する狙いがあるとみられます。
一方、兵士らを前に演説したプーチン大統領は…
ロシア プーチン大統領
「みなさんの奮闘のおかげで、我々は特別軍事作戦の目標を達成しつつある。みなさんは国の誇りだ」
それぞれの“思惑”が交錯する中、キーウに集結したヨーロッパなどの首脳らと会議を行った、ゼレンスキー大統領。
ウクライナ ゼレンスキー大統領
「プーチンは我々に平和を与えたりはしない。私たちは団結して平和を達成しなければならない」
侵攻から3年。「news zero」が訪ねたのは…
マリナさん(42)
「こんにちは、よろしくお願いします」
ウクライナから避難し、都内で暮らしているマリナさん。
初めて取材したときは娘・ミラーナさんと一緒に暮らしていましたが、去年4月、ミラーナさんは大学生に。寮での生活が始まり、この日は、久しぶりにマリナさんが住む家に帰ってきました。
──大学は楽しいですか?
ウクライナから避難 ミラーナさん(19)
「楽しいです」
ミラーナさんが、写真を見せてくれました。
ミラーナさん(19)
「これは研究室で着ている服です。理学部に入りました。大学で学んでいることが何らかの形で、ウクライナの復興に役立つことを願っています」
ウクライナを離れ、日本に避難している人は約2000人。マリナさんとミラーナさんも、日本での生活に慣れてきたといいますが…
マリナさん(42)
「日本での生活がこんなに長引くとは思いませんでした。夫のことを非常に心配しています」
ミラーナさんが大学に入学したのと同じ去年4月、ウクライナで暮らす父・ドミトロさんにも大きな変化が。ウクライナ軍に動員されたのです。
ドミトロさんが任務にあたっているのは、南部・ザポリージャ州。いまもロシア軍による激しい攻撃が続いている地域です。マリナさんは、ドミトロさんの休憩中などのタイミングをみて連絡を取っているといいます。
マリナさん(42)
「いまどこにいるの?」
ザポリージャ州で戦闘に参加 父・ドミトロさん(43)
「監視所にいるよ。氷点下10度近くで寒い」
任務について尋ねると…
父・ドミトロさん(43)
「私が所属しているのは防空部隊です。(ロシア軍の)ドローンなどを撃墜しています。ドローンは重要な拠点を狙っていて、いま私たちがいる所は標的ではないが、いつ私たちに直撃してもおかしくない状況です」
戦闘が長引く中、いまドミトロさんたちが“複雑な思い”を抱えているのが、停戦交渉にむけたトランプ大統領の動きです。
父・ドミトロさん(43)
「期待する気持ちもあれば、疑う部分もあります。停戦交渉について多くの話が出回っているにもかかわらず、激しい戦闘が続いているのです」
ウクライナから避難 マリナさん(42)
「すべてのウクライナ人が停戦を望んでいます。ただアメリカとロシアが協議しているとしても、ウクライナなしでできることは、あまりないと思います」
当たり前に家族で暮らせる“日常”が奪われて3年…。娘との共通の趣味が「登山」だというドミトロさんには、かなえたい“夢”があると、マリナさんは話します。
マリナさん(42)
「戦争が終結すれば、娘と夫の夢をかなえてほしいです。夫がすぐに日本に来て、一緒に富士山に登るという夢です。3年は非常に長いです。非常にです。家族が再会することが、すべてのウクライナ人にとって共通の夢です」
(2月24日放送『news zero』より)