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「選手にならないと」障害者スポーツの障壁

2019年7月11日 16:32
「選手にならないと」障害者スポーツの障壁

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「障害者、スポーツへの障壁」。NPO法人「D-SHiPS32」代表・上原大祐氏に聞いた。

スポーツ庁の調査によると、障害者がスポーツやレクリエーションを行う上で障壁となっていることについて尋ねたところ、「特にない」が一番多く37.7%だった。次いで「金銭的余裕がない(21.5%)」「体力がない(20.9%)」「時間がない(14.2%)」「交通手段がない(9.4%)」「仲間がいない(8.8%)」と続いている。


――上原さん、いかがでしょうか。

『障害と生涯』と書きました。障害者スポーツってどうしても今、「アスリートにならないといけない」という感覚があるんです。つまり、『生涯』にあたる楽しむスポーツという部分が、まだまだ足りてないのではと思います。

あと2番目にある「金銭的余裕がない(21.5%)」というところで言うと、車いすってすごく高いんですよ。例えばバスケットボールの車いすを買うのに50万円とか、マラソン用は80万円とか、ラグビー用は120万とか――1年生で買った車いすが3年生になると体が大きくなるので乗れなくなってしまいます。そういう点で体が成長しきった後でないとスポーツできないという人もいるので、そこを今、私はスポーツ庁と一緒に、体にあった車いすをレンタルしていきましょうといった仕組みを今後つくっていきます。


――レンタルで金銭的な負担を解決しようということですね。あとスポーツが身近になってないというところも問題のように感じますが。

そうなんですね。やっぱりそれは、体育館を貸してもらえないとか、そのために練習場所に3時間かけて行かざるをえないとかの理由で、「交通手段がない(9.4%)」というところにもかかわってきてしまうと。だから障害者だけではなくて、健常者のみなさんも、このパラスポーツを一緒にしてくれるだけでチームが増える、チームが増えるだけですぐアクセスできるようになる。だからこの「交通手段がない(9.4%)」「仲間がいない(8.8%)」、そして、移動にもお金がかかるので「金銭的余裕がない(21.5%)」もかかわってくる――つまり、実はこれらは一緒のことだとも思います。

「特にない(37.7%)」というのも、どうしても今パラリンピックを取りあげてもらっていることもあって、(スポーツが)遠い存在になってしまっています。「僕たちはスポーツができない、だから関係ない」ということで、「特にない」につながってしまっていると思います。


――1位が「特にない(37.7%)」というのは、最初、良いことなのかなと思ったのですが、実は問題があるということですね。

そうですね。「関係ない」と思っているんじゃないかとも感じています。


――つまりそれは、「パラスポーツの選手にならなければいけない」という、そういう部分で身近に感じられないにつながるんですね。

そうですね。だからぜひ『生涯』スポーツと言うことで、エンジョイスポーツをもっと日本に広めていければいいかなと思っています。


――上原さんがやっていらっしゃるイベントもそうなんですよね。

そうですね、誰でも参加できるイベントなので、まずは参加してもらって、スポーツを通して、障害者と健常者が体験を共有するみたいなところから始めるといいのかなと思います。


■上原大祐氏プロフィル
NPO法人「D-SHiPS32」代表。障害のある子どもたちがスポーツや夢に挑戦できる環境づくりを行っている。上原氏は、生まれながら二分脊椎症の障害があり幼少期から車いす生活を送っている。19歳で始めたパラアイスホッケーでトリノパラリンピックに出場。バンクーバーパラリンピックでは、銀メダル獲得に貢献した。海外で障害のある子どもが気軽にスポーツを楽しむ様子をみて、日本のバリアフリーの遅れを痛感。石川県中能登町の「障害攻略課」プロジェクトを立ち上げるなど障害者の理解促進を図っている。また、NECの社員としても東京オリンピック・パラリンピック、さらに、それ以降の日本を見据え、様々なプロジェクトに取り組んでいる。


【the SOCIAL opinionsより】