【解説】震源から遠く離れた場所で高い津波を観測 巨大な海底山脈の存在
12月11日から17日までの期間、震度1以上の地震は27回ありました。このうち震度3以上の地震は1回ありました。
▼17日午後2時11分ごろ、栃木県宇都宮市と鹿沼市、茨城県笠間市などで震度3の揺れを観測する地震がありました。震源は栃木県南部、地震の規模を示すマグニチュードは4.3、震源の深さは60キロでした。(速報値)震源が深かったため、関東甲信と東北地方の広い範囲で揺れを観測しました。
今月2日、フィリピンのミンダナオ島でマグニチュード(Mw)7.5の大きな地震が発生しました。気象庁は、千葉県から鹿児島県にかけての太平洋沿岸、伊豆諸島、小笠原諸島、宮古島・八重山諸島、奄美群島・トカラ列島に津波注意報を発表しました。この地震では、伊豆諸島の八丈島・八重根で40センチをはじめ、千葉県から沖縄県にかけての太平洋沿岸、伊豆諸島および父島で津波を観測しました。
一方、震源近くのフィリピンで観測された津波の最大波は、マウェス島の32センチ、震源付近より日本の方が高い津波観測となったのです。
気象庁によりますと、一般的に海外で発生する地震では、震源付近で発生した津波が色んな経路をたどって、複数の方向から日本付近で合流することで、津波が高くなることがあるといいます。
■2006年 千島列島でM7.9の大規模地震発生
2006年11月15日午後8時14分ごろ、千島列島東方(シムシル島東方沖)でマグニチュード7.9の大規模な地震が発生しました。この地震で気象庁は、北海道太平洋沿岸東部とオホーツク海沿岸に「津波警報」を、北海道日本海沿岸北部と北海道太平洋沿岸中部から静岡県にかけてと伊豆諸島と小笠原諸島に「津波注意報」を発表しました。震源に近い北海道・紋別で30センチの津波が観測されたほか、青森県・八戸などの東北地方に加えて、千葉県館山市などでも津波が観測されました。
当時の日本各地の検潮記録によると、北海道・浦河では、地震発生から約2時間半後に津波の第一波が到達したものの、徐々に津波波形の振れ幅が小さくなっていきました。
気象庁によりますと、午後8時29分に津波警報・注意報を発表しましたが、観測した津波は予想の高さよりも低く、徐々におさまりつつあったため、警報を注意報に切り替え、翌日の午前1時30分にはすべての注意報を解除したということです。しかし、その後、津波波形に動きがあり、日本各地で再び津波が観測されたのです。
▼北海道浦河で59センチ
▼青森県八戸で53センチ
▼宮城県石巻市鮎川で48センチ
▼千葉県館山市布良で45センチ
▼三宅島坪田で84センチなど
さらに、震源から遠く離れた、四国や九州、沖縄地方でも津波が到達しました。
▼高知県室戸岬で42センチ
▼高知県土佐清水で46センチ
▼鹿児島県奄美市小湊と中之島で47センチなど
気象庁気象研究所の分析では、地震発生から30分後に発生源から津波が徐々に広がっていきました。2時間後には東北地方や関東地方までの広い範囲に津波が到達。3時間半後には、これまで一方向へ同心円状を描いていた波紋が、震源から離れた場所で発生し、津波が伝播していきます。そして、地震発生から5時間50分後、日本の太平洋沿岸の広い範囲で津波の波面がはっきりと出ています。
なぜ、一度おさまったとみられた津波が、時間が経過した後に再び観測されたのでしょうか?その理由は、海底にある巨大な山脈「天皇海山列(てんのうかいざんれつ)」が関わっていました。日本列島のはるか東の太平洋にある海底山脈「天皇海山列」まで津波が到達し、この山脈にぶつかったことで津波が跳ね返りました。跳ね返ったことにより、津波が方向を変えて日本付近に戻ってきたと考えられています。
地震の専門家で、環境防災総合政策研究機構の草野富二雄さんによりますと、津波は発生源から同心円状に一様な強さで広がるものではなく、横方向へ強く放出される性質があるといいます。
たとえば、チリ沖で発生する津波の場合、その発生源であるチリ海溝は日本に対して平行な位置関係にあるため、日本で高い津波となるということです。
一方、アリューシャン沖やメキシコ沖などは日本に対して長軸方向となるため、津波は小さくなる傾向があります。また、津波には屈折や反射という現象があり、チリ沖で発生した津波であっても日本に向かう途中で、ハワイ諸島などの海底の凸凹によって日本に津波が集中すると考えられるということです。
遠く離れた海外の地震でも、日本に高い津波をおよぼす可能性があるため、津波注意報や警報などの情報に十分注意してください。