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【解説】最高速度320キロから緊急停止 被害軽減へ少しでも早く送電停止させるシステム改良――新幹線の最新地震対策は

2023年12月12日 10:14
【解説】最高速度320キロから緊急停止 被害軽減へ少しでも早く送電停止させるシステム改良――新幹線の最新地震対策は
東北地方では東日本大震災以降も規模の大きな地震が繰り返し発生しています。2022年3月には、走行中の東北新幹線が強い揺れに見舞われ脱線しました。新幹線の地震対策を進めるJR東日本は、地震の早期検知システムの改良をおこない、送電停止を約2.6秒短縮することに成功、2024年3月から運用を開始します。320キロの高速走行から少しでも早く減速・停止させることで被害軽減を目指す取り組みとは? 社会部災害担当・中濱弘道デスクが解説します。【週刊地震ニュース

■震度1以上の地震は34回 静岡県で震度3

12月4日から10日までの期間、震度1以上の地震は34回ありました。このうち、震度3以上の地震は1回ありました。

▼4日午前11時21分ごろ、静岡県熱海市で震度3の地震がありました。震源は伊豆半島東方沖、地震の規模を示すマグニチュードは3.9、震源の深さは7キロでした。

■地震から新幹線を守る システム改良で「平均1.3秒で送電停止」

東北新幹線では、2022年3月に福島県沖で発生した最大震度6強の地震で、走行中の新幹線が1編成、17両の車両のうち16両が脱線しましたが、乗客や乗員にけがはありませんでした。JR東日本は12月5日、「新幹線早期地震検知システム」の改良をおこない、2024年3月に運用を開始すると発表しました。改良によって平均1.3秒で新幹線への送電を止めるというものです。

JR東日本 深澤祐二社長
「地震発生時に新幹線をさらに早く緊急停止させます」
「(新幹線は)320キロで最高速で走っておりますから、できるだけ早く止めるというのが安全性を高めます。できるだけ被害を少なくするためには、1秒でも早く止めることが重要」

■「早期地震検知システム」とは? 1982年の東北・上越新幹線開業時に整備され改良を重ねる

「早期地震検知システム」は、地震が発生すると近くに設置された地震計が、伝わる速度の速いP波と呼ばれる初期微動を検知して震源や地震の規模を推定、S波と呼ばれる大きな揺れが到達する前に被害が予測される沿線の送電を止め、走行中の新幹線に非常ブレーキをかける仕組みです。

■「早期地震検知システム」の鍵は多数の地震計 新幹線沿線だけでなく、東北地方の沖合にも

システムの鍵となる「地震計」はJR東日本の東北・上越・北陸新幹線沿線のほかにも、東日本エリアの海岸や内陸部にも多く設置されています。さらに気象庁の緊急地震速報や、東北地方の沖合の海底に設置されている防災科学技術研究所の海底地震計などのデータも取り入れています。

■改良によって「平均2.6秒短縮」 わずか数秒でも、強い揺れ到達前に新幹線を減速

東北新幹線の最高速度は320キロです。そこで非常ブレーキをかけても新幹線が停止するまで約3800メートル進んでしまいます。

JR東日本によりますと、現在の「早期地震検知システム」では、地震検知してから送電を停止させ、非常ブレーキをかけるまで平均3.9秒かかっていて、それが2.6秒短縮されるということです。このシステム改良によって、送電が停止されるまでの時間が約1.3秒となった場合、現在よりも約230メートル手前で停止できるということです。

■システム改良以外にも、高架橋耐震対策、逸脱防止対策など複数の地震対策で安全性向上へ

このシステム改良による、早く新幹線を緊急停止させる仕組みは、2024年3月から運用が開始されます。またJR東日本では、新幹線をいかに早く止めるかだけでなく、高架橋の耐震対策や地震に強い電柱への切り替えなども引き続き進めています。