【解説】“マグニチュード9”南海トラフ巨大地震 地球の中を「直接観測」で巨大地震前兆をつかめ
11月13日から19日までの期間、震度1以上の地震は38回ありました。このうち震度3以上の地震は1回でした。
▼18日午後10時49分ごろ、鹿児島県の十島村の中之島で震度3の地震がありました。震源はトカラ列島近海、地震の規模を示すマグニチュードは3.8、震源の深さは12キロでした。
トカラ列島では今月7日から地震が頻発していて11日には、中之島で震度4、口之島で震度3を観測する地震も発生しています。19日までに観測された地震は、震度1が12回、震度2が2回、震度3が3回、震度4が1回の計18回となっています。
今月6日、静岡県の清水港を出航したのはJAMSTEC=海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」です。船には、高さ約120メートルのやぐらのようなものがあります。ここから海底に採掘ドリルとパイプをおろし、海底を掘り進んで地球の中に入っていくというものです。今回、高知県の室戸沖で南海トラフ地震の震源域の海底下を掘って観測装置を取り付けるというミッションをおこなっています。
将来、巨大地震の発生が懸念されている南海トラフ沿いの深いところではプレートの沈みこみによって「ゆっくりすべり」や「スロースリップ地震」が繰り返しおきていることが知られています。地下にある断層が、通常の地震より長い時間かけてゆっくりとすべる地震で、数日から数週間以上かけて断層がゆっくりと動くため揺れはほとんど感じません。
この「ゆっくりすべり」や「スロースリップ地震」、実は2011年の東日本大震災の本震や前震の前にも、おきていたことが分かっています。まだ、「ゆっくりすべり」と巨大地震の関連は正確に評価するのは難しいということですが、巨大地震の前兆の可能性もあるとして注目されています。また、国も南海トラフで巨大地震発生の可能性が高まった時に発表する南海トラフ地震臨時情報を出す判断基準の1つとしています。
今回、海洋研究開発機構が設置する観測機器、長い筒の中に、光ファイバーひずみ計や水圧計があり、これを水深2600mの海底から更に500mほど掘り進めて出来た穴の中に設置して観測をおこないます。
南海トラフ巨大地震の震源域、まさにその海底の下に観測機器を設置するJAMSTECの取り組み。すでに東南海地震を対象に紀伊半島の南東沖の熊野灘に3基設置されています。
今回は光ファイバーひずみ計など新型の装置を、初めて南海地震のエリアである室戸沖に設置します。南海トラフ地震の震源域では、「DONET」と呼ばれる地震計や津波を観測する水圧計を備えた観測網が紀伊半島や高知県の沖合の海底に整備されています。データはリアルタイムで気象庁などに送られています。
今回、室戸沖の海底の下に設置される光ファイバーひずみ計なども2024年1月にすでに設置済みの観測網「DONET2」と接続される予定で、観測データをリアルタイムで送られるようになるということです。また、今後は高知県沖や日向灘など南海トラフ巨大地震の想定震源域の西側エリアでも観測する計画があるそうです。
海洋研究開発機構の地震津波予測研究開発センターの堀高峰センター長は次のように話しています。
「こうした観測によって普段の動きをしっかり見ておくことが重要。そして仮に異常なデータが見つかって南海トラフの臨時情報が出た際には、より一段と地震への備えを高めて少しでも減災に結びつけたい」
南海トラフの震源域の海域で設置作業をおこなっていて、「ちきゅう」では、X(旧ツイッター)でその様子を更新しています。