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【解説】「ひずみ」の蓄積は?南海トラフ地震の想定震源域 海底で海上保安庁が進める地殻変動観測

2023年10月30日 22:21
海上保安庁は2006年から南海トラフ地震の想定震源域で海底の地殻変動の観測をおこなっています。この観測によって、震源域で「ひずみ」がどのくらい蓄積されているかわかってきました。将来、高い確率でおきるとされている南海トラフ巨大地震の前兆をとらえるきっかけになるのか? 社会部災害担当・中濱弘道デスクが解説します。【週刊地震ニュース

■震度1以上の地震は33回 沖縄・与那国町で震度3

10月23日から29日までの期間、震度1以上の地震は33回ありました。このうち震度3以上の地震は1回でした。

▼24日午前8時5分ごろ、沖縄県与那国町で震度3の地震がありました。震源は与那国島近海、地震の規模を示すマグニチュード5.9、震源の深さは33キロでした。

■南海トラフ巨大地震、30年以内発生確率は70~80パーセント プレートの沈み込みでたまる「ひずみ」

南海トラフは静岡県の駿河湾から、宮崎県の沖合、日向灘にかけて伸びるプレート境界です。ここでは、海側のプレートである「フィリピン海プレート」が陸側のプレートの下に年間数センチずつ沈みこんでおり、これによって陸側に「ひずみ」がたまります。それが限界に達すると大地震を引き起こすとされています。

政府の地震調査委員会によりますと、今後30年以内にマグニチュード8から9クラスの地震がおきる確率は70から80パーセント、国の想定ではマグニチュード9クラスの地震がおきれば死者不明者の数は、最大で32万人にのぼるとされています。

■海上保安庁 2006年から海底の「動き」を観測

海上保安庁では2006年度から、南海トラフ沿いで海底観測をおこなっています。観測装置を船から海底におろして設置し、船から音波を出して観測点がどのように動いているのか調べます。

陸上で地殻変動を調べるにはGNSSと呼ばれる衛星を使った観測が進んでいますが、海水は電波を通さないため、海ではこの方法は使えません。そこで、海水の中でも使える音波を利用してます。観測船から音波を使い、海底に設置した装置の位置を調べるもので、観測船の位置も衛星を使って正確に把握されるため、より正確な観測ができるということです。

■南海トラフ震源域の「ひずみ」分布を2016年に初公表

こうした海底の観測によって海上保安庁は、2016年に南海トラフの「ひずみ」の蓄積分布を初めて公表しました。黄色の矢印は 海底観測によって、どれくらい海底が動いていたかを示すものです。

海上保安庁によりますと、陸側のプレートにおいた観測ポイントは、海側のプレートの沈みこみとともに年間、2~5.5センチ程度動いていることがわかりました。さらに、この観測によって「ひずみ」がたまっていることがわかりました。東海沖や紀伊半島の南、四国の沖合を中心に「ひずみ」が多くたまっているのではないかと推定されています。

■年に4回程度の観測――現在も「ひずみ」がたまり続ける南海トラフ震源域

海上保安庁では現在も、年間4回程度の海底の地殻変動調査をおこなっています。プレートの沈みこみに伴い、観測点の動きも続いています。ただ現在のところ、この動きに特異なものはみられず「ひずみ」は継続してたまり続けているとしています。

■観測は南海トラフ沿い以外にも 関東・東北沖の日本海溝でも――東日本大震災以降の海底の動きも調査

海上保安庁では、南海トラフ沿いのほかにも関東の東側から東北地方の沖合の日本海溝沿いでも、海底の地殻変動の様子をとらえようと調査を進めています。東日本大震災の影響で、海底も大きく動き「ひずみ」も解消されていますが、次におきるかもしれない地震に備え、観測を続けています。

海上保安庁を含め国の機関などは、様々な方法で南海トラフ巨大地震の震源域周辺の変化を捉えようと観測をおこなっています。海上保安庁は「震源域の地殻変動を継続的にモニタリングすることは、地震直前にでる変化などをとらえるため大切」としています。