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【解説】豊後水道で震度4南海トラフ地震への影響は―過去にはプレート内でM7クラスの大地震発生も

2023年5月23日 13:17
【解説】豊後水道で震度4南海トラフ地震への影響は―過去にはプレート内でM7クラスの大地震発生も
19日、豊後水道を震源とするマグニチュード4.5、最大震度4の地震が発生しました。この地震は「南海トラフ巨大地震」の想定震源域内で起きたものですが、巨大地震への影響はあるのでしょうか―。さらに「安芸灘・伊予灘・豊後水道」のエリアでは、過去にプレート内部で大地震が繰り返し発生しています。社会部災害担当・内藤ミカ記者が解説します。【週刊地震ニュース

■豊後水道で最大震度4の地震――石川・能登やトカラ列島近海でも地震続く

5月15日から21日までの期間、国内で震度1以上の地震が53回ありました。このうち、震度3以上の地震は3回ありました。

▼16日午前1時34分頃、鹿児島県十島村の中之島で震度3を観測する地震がありました。震源はトカラ列島近海で、地震の規模を示すマグニチュードは3.3、震源の深さは13キロでした。中之島では、13日に震度5弱を観測する地震がありましたが、その後も地震活動が続いています。

▼18日午後7時49分頃、石川県珠洲市で震度3を観測する地震がありました。震源は能登地方で、マグニチュード3.6、震源の深さは10キロでした。

▼19日午前6時56分頃、愛媛県伊方町で震度4、宇和島市や大分県国東市などで震度3の地震がありました。震源は豊後水道で、マグニチュード4.5、震源の深さは46キロとやや深い地震でした。

■豊後水道M4.5の地震は「南海トラフ想定震源域内」で発生 その影響は―?

19日に発生した豊後水道を震源とする地震は、「南海トラフ巨大地震」の想定震源域の中で発生したものです。仮に、想定震源域内でマグニチュード6.8以上の地震が発生した場合、有識者が集まって巨大地震の可能性や関連性を話し合い評価する検討会を開催します。ただ、気象庁によりますと、今回の豊後水道の地震は、マグニチュード4.5と地震の規模が小さいことから、巨大地震への直接的な影響は少ないということです。

■1年間に数センチずつ沈む「フィリピン海プレート」

「南海トラフ」は、陸のプレートの下に、海のプレートである「フィリピン海プレート」が沈み込んでいる部分をさします。「フィリピン海プレート」は、1年間に数センチずつ沈み込んでいます。

■豊後水道の地震震源は“プレート内部”

19日の震度4の地震の震央である、豊後水道付近は、「陸のプレート」と「フィリピン海プレート」の境界付近の深さが30キロほどにあると推定されています。ただ、今回の地震は、プレート境界より、さらに深い、深さ46キロの場所で発生したため、「プレートの内部」で発生した地震となります。

過去に南海トラフ周辺で、繰り返し発生している大規模地震は「陸のプレート」と「フィリピン海プレート」がぶつかり合う「プレート境界」で発生しています。19日の豊後水道の地震は「プレートの内部」で起きた地震。「プレート境界」でおきる地震とはメカニズムが異なります。ただ、プレート境界であっても、プレート内部であっても、規模の大きな地震が発生する可能性があるため注意が必要です。

■「安芸灘~伊予灘~豊後水道」 M7クラス地震 複数回発生『2001年芸予地震』とは?

「安芸灘~伊予灘~豊後水道」のエリアでは、1997年10月から、これまでにマグニチュード2.0以上の地震が、およそ3000個発生しています。また、マグニチュード7.0以上の大地震も時々発生していて最近では、2001年にマグニチュード6.7の大きな地震がありました。

この地震が発生したのは、2001年3月24日午後3時28分ごろです。震源は安芸灘でマグニチュードは6.7、震源の深さは46キロでした。この地震、「2001年芸予地震」と呼ばれています。広島県で最大震度6弱を観測、愛媛県と山口県で震度5強となりました。また中部地方から九州全域で震度1以上の揺れとなっています。震源付近の広島県と愛媛県で被害が大きく、2人の死者が出ました。また、家屋の倒壊、火災も発生し、広島市などでは液状化現象が確認されました。このエリアでは、「陸のプレート」の下に太平洋側から沈み込む「フィリピン海プレート」の内部、深さ40キロから60キロ付近でマグニチュード7前後の被害を伴う大きな地震が起きることがあります。

■「安芸灘~伊予灘~豊後水道」の今後30年以内の地震発生確率は?

政府の地震調査委員会は、マグニチュード6.7から7.4程度の規模の地震が、今後30年以内に発生する確率は40%程度と評価しています。

■「南海トラフ巨大地震」“プレート境界地震”だけではなく、様々なタイプの地震にも注意を

地震の専門家で、環境防災総合政策研究機構の草野富二雄さんは、「プレートが沈み込んだ深い場所で発生する地震というと、被害が小さいと思われますが、プレート内部の地震でも規模が大きければ死傷者や建物被害などを伴う地震となるおそれがあるため注意が必要」と話しています。