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【解説】“原因不明”子どもの急性肝炎 “関係”着目のウイルスも…日本では検出少なく どう気をつけるべき?

2023年4月4日 20:07
【解説】“原因不明”子どもの急性肝炎 “関係”着目のウイルスも…日本では検出少なく どう気をつけるべき?

原因不明の子どもの急性肝炎の疑いがある事例で、国内で初めて死亡が確認されました。

●150人超える報告
●最も多い症状は
●ウイルスとの関係は

以上のポイントを中心に詳しく解説します。

■“原因不明”子ども急性肝炎…報告数 症状は


厚生労働省によると、この急性肝炎の疑い例は国内で、2021年10月から2023年3月16日までに162人の報告がありました。死亡例について発表していません。

一方、国立感染症研究所によると、2月16日までに156人の報告があり、このうち肝移植が必要になった症例が3例、死亡が1例確認されたということです。これが、国内で初めての死亡例となりました。亡くなった子どもの年齢や性別などは公表されていません。

これまでの報告例では、患者の年齢がかなり低いことがわかります。

感染研で報告のあった156人の年齢は「1歳から9歳」で、男の子が84人、女の子が72人となっています。また、症例は全国から報告されています。つまり、性別や地域的な偏りはみられないということです。

肝炎の症状について、そもそも「肝炎がどういったものか」というところから確認します。

肝炎は、「肝臓に炎症が起こって細胞が破壊されている状態」のことをいいます。「慢性」のものと「急性」のものがあり、今回の原因不明の肝炎は「急性」です。

具体的な症状について、国内の症例で最も多かったのが「37.5℃以上の発熱」で、100人いました。次に腹痛や下痢、嘔吐などの消化器症状が86人でした。そのほか、目や皮膚が黄色くなる黄だん、せき、白色の便、意識障害といった症状が報告されています。

■“関係があるのでは…”着目される新型コロナ・アデノウイルス 日本では検出少なく…

世界では去年時点ですでに1000人以上の報告があり、日本国内で初めて確認されたのが去年4月です。そこからさかのぼって調べたところ、2021年時点ですでに疑われる症例があったことがわかりました。これだけ時間がたっていても、まだ原因がわかっていないのです。

“関係があるのでは…”と着目されているのが、「新型コロナウイルス」と胃腸炎などの原因となる「アデノウイルス」です。

去年、アメリカで取材した女の子、リヴィアちゃんの例を紹介します。リヴィアちゃんは去年1月、原因不明の急性肝炎で肝臓の移植手術を受けました。リヴィアちゃんは「肝臓をとられたの」と話し、母親は「彼女は一生、薬を飲み続けないといけません」と娘の今後の人生にまで肝炎の影響が及ぶことを明かしました。

病院の医師によると、リヴィアちゃんは抗体検査で新型コロナウイルスの陽性と判定されたほか、アデノウイルスも検出されたということです。ただ、肝炎との関係はわかっていません。

リヴィアちゃんのように2つのウイルスが検出される、もしくはどちらかが検出されるケースは世界でも多く報告されています。WHO(=世界保健機関)の去年7月の発表では、ヨーロッパで16%の症例で新型コロナウイルスが、52%でアデノウイルスが検出されたということです。

一方、イギリスのグラスゴー大学などは「『アデノ随伴ウイルス2型』というウイルスが関係している」とする調査結果を発表しています。このウイルスは通常、人に感染しても病気を引き起こすものではなく、アデノウイルスとの同時感染が急性肝炎と関係しているとしています。

これらのウイルスが原因なのではないかとも思えてきますが、日本国内の症例からはそうとは言えません。

日本で調べた症例のうち、新型コロナウイルスの検出は7%、アデノウイルスが検出されたのは11%で、1割前後とかなり少ないです。そのため、感染研も現時点で「原因となる病原体に明らかな傾向は認められない」としています。

■どう気をつける? 黄だん・白い便…特徴的な症状も

“原因不明”となると、子育て世代には子どもが体調不良を訴えた時、この急性肝炎が頭をよぎる人も多いのではないでしょうか。子どもが小さいと、体調不良について自分で具体的に説明するのが難しい場合もあり、「よく見ておかなきゃ…」と不安になる人も多いと思います。原因がわからない中、どのような点に気をつけたらいいのでしょうか。

埼玉県立小児医療センターの岩間達医師は「どんなウイルスかは関係なく、手洗いやうがいなどの基本的な対策は続けるべき」としています。

また、肝炎は発熱、倦怠(けんたい)感、食欲がなくなる、腹痛などといった風邪に似た症状のほか、黄だんや白い便といった特徴的な症状も出ます。見極めが難しいものもありますが、とにかく「いつもと違う、おかしいと思ったら病院に行って相談した方がいい」ということでした。

    ◇

岩間医師は「原因は特定できていないが、新型コロナのように急に日本で拡大することにはならないだろう。ただ、国内での動向は今後も注視が必要」と話しています。基本的な感染症対策を続けること、子どもの体調の変化を注意深く見守ることが大切です。

(2023年4月4日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)

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