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「辺野古移設反対」の沖縄県 対抗策狭まる~南西防衛力強化の逆風も、世論が鍵に

2022年12月31日 14:00
「辺野古移設反対」の沖縄県 対抗策狭まる~南西防衛力強化の逆風も、世論が鍵に
再選を果たした玉城デニー知事(中央)

沖縄のアメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設計画をめぐる国と沖縄県の対立は、2023年も続く見通し。しかし、県側の対抗手段が徐々に限られてきているうえ、加速する南西防衛強化の流れが、沖縄県をさらに追い詰めている。今後の鍵を握る世論の行方は。
(那覇支局 佐藤拓)

■浅瀬埋め立ては進ちょく

土砂の投入開始から4年を経た辺野古では、2022年11月末までに埋め立て計画全体で使用する土砂の量のおよそ13%が投入された。アメリカ海兵隊キャンプ・シュワブの南北を囲うように埋め立てる計画で、このうち南側の浅瀬に限ると、計画量の82%の土砂がすでに投入されたことになる。

しかし、北側の深い海では広い範囲で軟弱な地盤が見つかっていて、今後、埋め立てを完了させるためには大規模な地盤の改良工事が必要とされている。

■続く法廷闘争

この埋め立てをめぐっては、沖縄県による埋め立て承認撤回を取り消した国土交通大臣の裁決の適法性を争った抗告訴訟で、2022年12月、最高裁が沖縄県の訴えを退け、県側の敗訴が確定した。

一方で、地盤改良のための工事の設計変更の申請を不承認とした沖縄県の処分を、国土交通大臣が裁決で取り消したことをめぐる裁判が、引き続き2件、沖縄県と国との間で争われている。

このうち地方自治法に基づいて沖縄県が起こした裁判は、2023年3月に高裁判決が予定されているが、行政事件訴訟法に基づく抗告訴訟は、沖縄県が2022年9月に地裁へ提訴したばかりで、2023年も沖縄県と国との間で法廷闘争が続く見通し。

ただ、2022年12月の最高裁判決が国土交通大臣の裁決について、「(法律は)都道府県が抗告訴訟で、裁決の適法性を争うことを認めていない」と判示したことは、今後の裁判でも県側に不利な要素として影響する可能性がある。

■陰る「オール沖縄」の求心力

沖縄では“選挙イヤー”となった2022年、「辺野古移設反対」を掲げる「オール沖縄」陣営は、7月の参院選で勝利し、9月の知事選でも玉城知事が再選を果たした。

しかし、2022年にあった7つの市長選では、辺野古移設を容認する自民党が推した候補者がすべて勝利するなど、「オール沖縄」の求心力は陰りがみられる。

衆議院の解散・総選挙は別として、県内では当面、大型選挙は予定されていないが、裁判での敗訴が続き、玉城知事の支持基盤も揺らぐ中、沖縄県がいつまで辺野古移設反対を掲げ続けることができるのか、先行きの不透明感は増している。

■有事への不安が逆風か

さらに、ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮によるミサイル発射、中国・台湾間の緊張といった国際情勢を受け、国民の間で有事への不安感が高まっていることも、基地負担の軽減を求める沖縄県にとっては逆風となりそうだ。

政府は2022年12月に閣議決定した安保関連3文書で、沖縄に駐留する陸上自衛隊第15旅団の師団への格上げや、敵基地攻撃能力(反撃能力)となるスタンド・オフ防衛能力の強化、部隊への輸送・補給のための空港・港湾の整備・強化など、沖縄を含む南西地域の防衛体制を抜本的に強化する方針を打ち出した。

文書では、普天間基地の移設を含む在日アメリカ軍再編の着実な実施もうたわれている。

しかし、3文書が公表された4日後、報道各社のインタビューに応じた玉城知事は「丁寧な議論と地域への説明」の必要性を強調し、アメリカ軍と合わせた基地負担の増加には懸念を示す一方、防衛強化の政府方針そのものの是非には踏み込まなかった。

県内では、中台間の有事に巻き込まれれば沖縄の基地が標的となり、島々が戦場化するリスクが高まるとして防衛強化に強く反発する声がある一方、アメリカ軍とは異なり、自衛隊の役割には期待して配備を受け入れる住民の声も一定数あって、知事も明確な態度を取りにくい課題となっている。

玉城知事は2023年、辺野古をめぐる裁判闘争のほかに、一期目から続ける全国各地でのトークキャラバンや、国連などの国際舞台で沖縄の基地負担の現状や辺野古移設の不当性を訴え、沖縄県の主張への共感を国内外に広げることで、普天間基地問題の解決につなげたい考え。

しかしその成否は、国際情勢を前に揺れる世論の動向に委ねられている状況といえ、玉城知事には苦しい状況が続きそうだ。