【解説】性別変更…生殖機能なくす要件は違憲 最高裁が初判断 今後どうなる?
性別を変更するには、実質的に「生殖機能をなくす手術が必要」とされている法律の要件ついて25日、最高裁判所は「違憲」との判断を示しました。これにより、今後どう変わっていくのでしょうか。また「戸籍上の性別を変更すること」と「銭湯など女性・男性のスペースに入っていくこと」は別の話です。詳しく解説します。
有働由美子キャスター
「初めて『違憲』という判断が示されましたが、これで今後どう変わっていくのでしょうか。ネット上では、さっそく次のような声があがっています」
●男が「心は女だ」と言って女風呂に入れる時代だ
●男や女と言い張れば性別とは逆のトイレに入れちゃう
「これはまったくの誤解で、そういう最高裁の判断ではないんですよね、小栗さん」
小栗泉・日本テレビ解説委員長
「そのとおりです」
小栗解説委員長
「25日に違憲と判断されたのは(5つの要件のうちの)『生殖腺や生殖機能がない』という『生殖機能をなくす要件』についてです。『変更する性別の性器に近い見た目をもつ』という要件については、判断が示されませんでした」
「最高裁の判断が出たからといって、たとえば手術していない男性が、急に性別を変えて女湯に入りたいと思っても、そうはいかないんです。性別を変更するには、こうした要件のほか、2人以上の医師の診断が必要で、紙1枚ではなく診療履歴などかなり詳細な診断書も必要になります」
「戸籍上の性別を変更することと、銭湯など女性・男性のスペースに入っていくことは別の話ですよね」
小栗解説委員長
「最高裁では『見た目を近づけることを求める要件』も違憲だとする意見をつけた裁判官もいました。ただ『公衆浴場等の風紀は、外観(見た目)を基準とするので、混乱が生じることは極めてまれだ』といった趣旨の記述もありました。つまり、銭湯などでは見た目で判断していますから、仮に『見た目を近づけることを求める要件』がなくても、これまでとルールは変わらないのではということなんです」
小栗解説委員長
「自らもトランスジェンダーでこの問題に詳しい仲岡しゅん弁護士は『見た目を近づける要件』も違憲、つまりなくすとなったら、そこで初めて、たとえば更衣室など女性に関する運用のガイドラインづくりなどが必要になってくる』と指摘しています」
有働キャスター
「私はそもそも当事者の方たちと、悪意をもってスペースに入ってくる人たち、それを同じ土俵で考えること自体が、差別なんじゃないかと思ったりもしますが」
■「白か黒か」ではなく…ケースごとに判断や理解を進めていくことが大事では
有働キャスター
「辻さんはどう思われますか?」
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(『news zero』パートナー)
「当事者の方たちは日常の中ですでに不自由な思いをたくさんしていて、その上、数百万円かけて痛い、しんどい思いをして手術しなければいけないという今の状況、本当につらいだろうなと思います」
「ただ、これだけ性被害がたくさん問題になっている社会なので、不安に思う人たちがいるというのも、ある意味理解できます」
「そのどちらも不安や痛みがベースにあるから『0か100か』あるいは『白か黒か』でつい議論してしまいがちなところだと思いますが、今回の判決も『生殖機能をなくす要件』は違憲とした上で、外観要件である『見た目を近づけることを求める要件』は、判断がついていないわけですよね。そうやって当事者の声に耳を傾けていきながら、それぞれのケースごとに判断や理解を進めていくことが大事なんじゃないかと思います」
◇
有働キャスター
「前回4年前は合憲の判断が出て、きょうは違憲。ということは、日本の社会は変化してるという1つの判断が出たわけです。そうすると、じゃあ、私たち一人ひとりが尊重されて生きやすい社会にしていくにはどうしたらいいのか、考えるきっかけにしたいです」
(10月25日放送『news zero』より)