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よりよい学校にするため、校則を変えるルールメイキング中高生が語りあったことは?

2023年9月25日 21:36
よりよい学校にするため、校則を変えるルールメイキング中高生が語りあったことは?

髪型や服装、携帯電話の扱いなど学校の校則を生徒自らの発案で変えていこうというイベントが東京都内で24日に行われ、中高生が思いや経験を語り合いました。

こどもの支援などを行う認定NPO法人カタリバが主催し、経済産業省の後援で行われた「ルールメイキング・サミット」には、全国25の都道府県、44の学校から約100人の中・高生が集まりました。校則には、髪型のツーブロック禁止や前髪の長さ、下着の色を限定する、制服のスカートの長さ、携帯を持ってきてはいけないといったものがあり、生徒がアンケート結果などを元に教員と話し合って、校則を変える動きが出始めています。

■先生が「私たちの時代はこうだった」「提出しても反応なし」

まず、グループに分かれて、参加者全員が校則を変える活動や思いを発表しました。

「校則改正を提案するとなったら、先生方から『私たちの時代はこうだったけど』みたいに反発があって、対話じゃなくて対立になった」「校則をこう変えたいと先生に提出しても、反応がない。話し合う場さえない」「冬にタイツを履きたいと言ったが、先生からは『制服のデザイナーがダメと言っている』と言われた。デザイナー1人の意見と1000人以上の生徒の健康とどちらが大事なのかと思った」「生徒会役員に男女の区分があり、女子である自分は票を得たのに会長になれず、その後改正案を考えたが、一番納得する案は学校に認めてもらえなかった」「伝統校で、校則が厳しくても生徒が集まるので変える必要はない、先生は困っていないと言われた」など、生徒が声をあげても校則を変えるのが難しい実情が次々に語られました。また、校則は変わるはずがないとあきらめる生徒が多い、校則を変えるための校内組織がある場合も、担当の生徒だけに任され、無関心が広がっているといった悩みも多く聞かれました。

一方で、実際に校則を変えた経験も語られました。ある中学校では、生徒の発案で教員の理解も得て、校則を撤廃。その後、生徒会による「心得」が作られ、学校についての意見は「具申書」として生徒の誰もが提出でき、職員会議で話し合われる。具申書によって自動販売機設置や他県での研修などが実現し、校則がなくなったことで、生徒の意識も高まり、地域からの評判も良くなった。髪型はツーブロックも可能。生徒の髪型が「心得」の範囲内かどうかは風紀委員の生徒が判断し、生徒たちの間でも「自分たちで決めたルールだから」と守る姿勢が見られるということです。生徒の意見を学校生活に反映する仕組みが作られている実例に、参加者からは感嘆の声があがりました。

また、活動の後継者がいないと悩む生徒の一方で、自分の代ではできなかったが、後輩が引き継いで、携帯電話の中学校への持ち込みが実現した、と嬉しそうに話す生徒もいました。さらに、ある中学生が「校内でのタブレット使用が許可されたが、授業中にそれで動画を見たり、絵を描いている生徒もいて、それは違うなと思う。自由ばかりを求めるのではなく、一定のルールを守ってこその自由ではないか」と発言するなど、生徒が決めることには責任が伴う、といった意見も聞かれました。また「消極的な性格だったが、校則を変える活動の中で、自ら考え、意見が言えるようになった」と自分の変化を語る高校生もいました。

そして、ある高校生が「僕は、校則でもなんか違うと感じていて、なんか違うを探し続けている。明確な言葉にできなくても、今日、ここは対話の場だから話せた。『なんか違う』を聞いてくれる人の存在が大切なんじゃないか」と話すと、共感が参加者に広がっていました。

■為末大さん「ルールは変えられる」

この催しには、サポート役として元陸上選手で執筆活動などを行っている為末大さんやモノを共有するシェアリングエコノミーを提唱している石山アンジュさんらも参加しました。

為末大さんは「陸上をやっていると、ルールは変えられない、決められたルールの中でいかにやれるかを考えていたが、社会に出てみると、よりよい状況にするために、ルールは変えていくものだと実感した。ルールは永遠ではない。一回決めたら終わりではなくて、変えることができるんだ、と知ることがとても大事」「ただ、これがいやだというだけで、自分にはメリット、ほかの人にはデメリットというルールは対立をうんで、うまくいかない。それよりも、私の夢はこれだという視点でルールを考え、訴えることが大切ではないか」と話しました。

先生に、生徒の要望がわかってもらえない時にどうすればいいかについて、石山アンジュさんは「相手を変えるより、自分が変わるアプローチもある。私は上の世代の方と話す際には、シェアなどとカタカナ言葉を使わずに、相手の背景を考えて、伝わるような言葉を使うように工夫している」と話しました。すると、参加した高校生から「年下の人にわかりやすく話すことはしているので、それを上の世代の人にもしてみたい」と発言がありました。石山さんはさらに「実際に人に会ってもらうなど、頭でなく心に訴える機会を作る」「意見は人によって違うものなので、私のことが嫌いなんじゃなく、意見が違うだけだと思って、私は寄せられた意見を聴くようにしています。」などと話しました。

熊本大学の苫野一徳准教授は、「ルールは昔、王様など特権階級が作って、人々がそれに従っていたが、人々が自由になるために、皆でルールを作っていこうとなった。人類の知恵だ」「大切なのは、『自由の相互承認』、つまりお互いの自由を認め合うことで、そのためには、どんな国や社会を作るのか、こどもたちが民主主義を学ぶ土台である学校をどのようなものにするかだ。」などと述べました。そして「対立でなく対話にするには?」という質問には、少年院や学校を回って、就労機会の格差を縮める活動などをしている三浦宗一郎氏が「僕は相手が好きなものに関心を持つようにしています。何に興味ありますかと聞いて、それを一緒にやってみる。“入口“の面積を増やすことかな」と答えました。

さらに、去年、このサミットに参加した高校生も登壇。「去年の段階では、校則を変えようとして、先生と対立していた。でも皆で話し合って『より良い学校にする』という最上位目標を決めたところ、徐々に先生の理解を得られ、校則を全面的に見直すことになった。先生に聞くと、生徒がこんなに苦しんでいるとは知らず、生徒と対立した自覚もなかったという。生徒側が、先生とも目標は同じで手段が違うだけだと考え、先生の意図を理解するようにしたら、敵だと思っていた先生が仲間になった。」と経験を語りました。

また、無関心、あきらめている生徒が多いということについては、ある高校の例として、生徒会が校則を変えるアイデアを募るため、お茶会を開催したところ、参加者がゼロだった。しかし、生徒会はあきらめずに、次のお茶会にむけて、生徒1人1人に招待状を出し、お茶会では、生徒も先生もニックネームで呼び合い、意見を出しやすくするなど工夫を重ねて、理解を広めたなどと紹介されました。

■校則変えた経験を糧に、よりよい社会を作る意見表明できる人に

後半には、よりよい学校にするために各生徒が考えた実践案について、民間企業からボランティアで参加した大人が、アドバイスする場も設けられました。

1日のプログラムを終えた生徒は「ルールメイキングとは、単に校則を変えるだけでない色々な良さにも気づけた。」「生徒から先生へ、先生から生徒へ、本音を言い合える環境を作りたい」「対立ではなく、相手の意見を尊重する対話が大事だとわかった。当事者以外の第三者を入れることも有効と聞けてよかった」などと感想を述べていました。そして、「ルールメイキングには決まったゴールがないので、ゴールを求め続けて、皆で語りあって、いろいろな意見を聞き合うのが楽しい」とその魅力を語っていました。参加した教員の1人は「校則は生徒の身の回りのことだが、生徒には、その先の社会を作っていくこと、社会に意見を言っていくことにつなげて欲しい」と話していました。今年4月に施行されたこども基本法は、こどもや若者にかかわる事柄を決める際には、こどもや若者の意見をきくことを国と自治体に義務付けていて、こどもの意見表明のあり方が注目されています。

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