鉄道開業150周年 歴史伝える「SL」保存費用など課題…“後世に残すため”個人で譲り受けた人も
今年は日本で鉄道が開業してから、150周年の節目となります。ところが、その歴史を伝える蒸気機関車を保存するのか、解体するのか、各地で揺れています。こうした中、個人の力でSLを残そうと、維持費用の問題で放置されていた車両を譲り受けた人に話を聞きました。
◇
東京・大田区の入新井西公園で、夏休み中の子どもたちに大人気だというのが、蒸気機関車「SL」です。この車両は、1974年に当時の国鉄から大田区に無償で貸与されました。メンテナンスにかかる費用は、年々上がっているといいますが、地元の住民に愛され、大事に保存されています。
――どういう時が好き?
「動いてるとき。ポッポーって」
一方、同じ都内の東村山市では、市内の公園に長年展示されてきたSLを3年前に解体し、撤去しました。東村山市は解体の理由について、「車両に残っている発がん性物質の『アスベスト』が飛散するおそれがある」と説明していました。
◇
鉄道開業から今年で150周年。その歴史を伝えるSLを保存するか、解体するか…宮城県大崎市では、分岐点に差しかかっています。
今から50年ほど前に、SLの車両を当時の国鉄から無償で貸与され、市内3か所に展示してきましたが、地域住民の要望もあり、3つある車両のうち1つを既に解体し、撤去しました。
残る2つのSL車両も――
宮城・大崎市 建設部建設課 千葉徹也さん
「こちらが老朽化で、サビが出ている部分になります。近くに寄って見るのが、危険な状態となっています」
市は当初、解体方針を打ち出していましたが、この2つの車両については、一部の住民から反対する声があがりました。保存か、解体か、再検討しているということです。とはいえ、市民の理解を得られない限り、保存は難しいとしています。
宮城・大崎市 建設部建設課 千葉徹也さん
「走らないにしても、本格的に補修する形になっていきますので、何千万円という大きなお金がかかりますし」
◇
全国各地でSLを巡る課題が浮き彫りとなる中、滋賀県多賀町では個人の力でSLを残そうと奮闘する人もいます。石川昭さん(75)は、維持費用の問題で放置されていた滋賀県多賀町のSL車両を、4年にわたる交渉の末、譲り受けることになりました。
石川昭さん(75)
「100年のサビには、100年の歴史がある」
実は、石川さんは設備の溶接や解体などを行う会社の社長とあって、この手の作業はお手の物です。
石川昭さん(75)
「こういうもの、タンクをつくるとか。そういう仕事だから、関連してますよ」
自身の地元・愛知県豊田市に運搬し、SLを展示する準備を着々と進めています。
石川昭さん(75)
「何百、何千(万円)とかかりますね。根性とか、金とかが要りますな。でも、それがないと、できんぜ。何も」
肝心の維持費用についても、後世に残すための資金を十分に用意していると話します。
石川昭さん(75)
「歴史を残すってことかな。当時はこれだけのものを人間の手だけでつくったというのを感じられると思う。“宝物”なんじゃ。二度とないんだもん」
再びSLを走らせるのが、今の夢だということです。