増加する世界人口 昆虫の力でゴミを資源に
世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見をうかがう「opinions」。今回のテーマは「増加する 世界の人口」。昆虫の「命の力」を活用して、人口増加による食料危機の解消を目指すムスカ代表取締役CEOの流郷綾乃さんに話を聞いた。
国連の推計によりますと世界の人口は2019年の77億人から、2050年には97億人、さらに2100年には109億人へと増えることが予測されています。特に、サハラ以南アフリカの貧しい国の人口は2050年までに倍増するとみられていて、人口増加により、「飢餓と栄養不良への対策」や「貧困の根絶」などに対し、追加的な課題が生じるとしています。
この現状をどう捉えられているのでしょうか。流郷さんのご意見をうかがいます。
――まずはフリップをお願いします。
「ゴミ=資源」と書きました。
まず世界人口が増えるということは、そのぶんゴミがどんどん増えていくということにつながっていて、要は皆さんも食べたりするとゴミが出てきます。生活活動を行っていくに伴ってゴミが増えるという問題を解決できるのが、我々のような昆虫産業だと思っていて、その一役を担いたいと思っています。
飢餓人口の話までいくと、もう食料危機だけの問題ではなく、結構複雑にいろんな問題が絡みあっているので難しいですが、世界人口が増えて食料危機になって、なおかつゴミがどんどん増えていく。その問題に対して一役を担えるのは私たち昆虫産業かなと思っています。
――これまでゴミだったものを資源にしていく。
それこそ、昆虫自体も今まで使われていなかった資源だと思っています。なかなか昆虫を使ったビジネスって聞かないじゃないですか。昆虫食というのもそうですし、我々のような昆虫食とはちょっと違った、昆虫のテクノロジーを生かした企業がどんどん出てきて、ゴミ、それこそ厄介物で皆さんがお金を払って捨てているようなものに昆虫を活用することによって、しっかり資源に変えていく。我々ですと飼料と肥料に変えていくことが、飼料は食を作る一番大事な餌になったり、肥料は作物を育てるために必要なものになるので、この2つを増やすことは結構重要だと思っています。
――一方で人口減少にある日本にとってはどういう意味になるのでしょうか。
食料自給率という問題があり、日本は飼料をほとんど世界に頼っているような状態で、特に動物性タンパク質飼料や穀物もそうです。世界の人口が増えるということは、日本以外だけでも消費できるわけで、日本に売らなくてもよくなる。そういった意味で、人口が減ってしまう日本は食料自給率をちゃんと上げていかなければ、国全体でまかなえない、自分たちの国民の食料をまかなえないという状態になってくる。日本は、本当は世界人口が増えることを危機として感じないといけないと思います。
■流郷綾乃さんプロフィル
ムスカ代表取締役CEO。ムスカは昆虫テクノロジー企業。学名で「ムスカ・ドメスティカ」と呼ばれる「イエバエ」を利用している。使うのは旧ソ連の研究をもとに約50年間1200世代選別交配し続けたイエバエ。普通のイエバエよりも成長速度が速く高密度で飼っても死ににくく一度に大量の卵を産卵する。畜産で出る糞尿を堆肥化するのに従来数か月以上かかっていたのを、わずか1週間で肥料と飼料に転換できるという。昆虫の「命の力」を活用して、人口増加による食料危機の解消を目指している。
【the SOCIAL opinionsより】