「内定辞退セット」就活生に人気 そのワケ
「内定辞退セット」という商品が、就職活動中の学生の間で注目されている。初版は1か月足らずで完売したという。なぜ、それほどの人気を集めているのか、背景には、今の時代ならではの“事情”があった。
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今、就活生に大人気なのが「内定辞退セット」。内定辞退の手紙が簡単に書けるセットが入っていて、先月下旬に発売したところ、初版5000部が売り切れたという。
このニュースにネット上では…「内定辞退セットってなんやねん」「私の時代は内定とるのに必死だったのに」「欲しかった。電話で断るの辛かった」などの声が。なぜ内定辞退セットが売れるのか――。
内定辞退セットを開発したのは日本法令という法律関係の書籍などを扱う会社。きっかけは何だったのだろうか?
日本法令開発部・飯田義久部長「(学生が)ラインとかSNSを使って内定辞退の連絡をしてトラブルになっているという(話を聞いた)」「こういうものを使えば(トラブルを)解消できるのかなと」
セットの中には封筒と便せん。さらには内定辞退を伝える例文が書かれた下敷きが入っている。この下敷きを使うと、うっすらと字が透けて見える。あとは例文をなぞるだけで内定辞退の手紙が完成する。
日本法令開発部・飯田義久部長「内定を辞退するのは、学生からしたらすごく気持ちが怖くなったりすることが多いと思うので、何か役にたてば」
このセットが売れる背景にあるのが、学生側の“売り手市場”。今年度は複数企業から内定をもらう学生も多く、6割以上が内定辞退を経験。多くの就活生にとって内定辞退が“当たり前”になっている。
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一方、こうした売り手市場を背景に“ある問題”も…。オワハラとは“就活終われハラスメント”のこと。人材を確保したい企業側が、就活生に他の企業への就職活動を終わらせるように強要すること。
オワハラを受けた・大学4年生「他の会社の選考を断っていただかないと内定を取り消さなきゃいけないです、みたいなことは言われたことあります」
友達がオワハラを受けた・大学4年生「ここの内定を出すなら今この場で全部電話かけてくれ、って言われた子がいて」
もちろん、内定を辞退すること自体は就活生に与えられた権利。ただ、企業側にとっては学生の採用に長い時間とコストをかけていて、簡単には受け入れ難いのも事実。
そうした中、JTBメディアリテーリングでは学生とのコミュニケーションをより深めるための取り組みをしている。
JTBメディアリテーリング総務課人事担当・小林美咲さん「今年からはスマートフォン1つあれば、いつでもどこでも説明会に参加できるということで、ウェブ上での説明会を実施しました」
内定者には不安払拭の機会を作っているという。
それでも内定を辞退せざるを得ないとき、学生と企業、双方にしこりを残さないようにするには…。
就活市場に詳しい DISCOキャリタスリサーチ・武井房子上席研究員「(企業側は)できるだけ早めに連絡をしてもらいたいのが本音だと思うので、(学生は)悩みすぎないで早めに伝えて」「しっかりと内定を出してくれたお礼のような誠意をもって伝えるといいのかなと」
社会人の第一歩という意識が大事だという。