【解説】“統一教会”解散命令の判断は? 東京地裁で初の「審問」
いわゆる“統一教会”の解散命令請求を受け、東京地裁では22日、教団側と国側の双方から意見を聞く審問が開かれました。
審問とは、東京地裁がいわゆる“統一教会”に解散命令を出すかどうかを判断するため、教団側と国側の双方から意見を聞くものです。22日、教団側からは田中富広会長や法務担当などが参加。国側からは文部科学省や法務省の担当者らが参加しました。審問は非公開で行われ、1時間弱で終了したということです。
国側は、解散命令請求の理由として、「信者に過度な献金や物品購入をさせて、経済的な負担や精神的な苦痛を与えてきた」などとしていますが、教団側の福本弁護士によると、教団側は22日、「当法人が『資金集めを目的とした団体だ』との文科省の主張は明らかな間違い。文科省が発表した『被害規模』は和解や示談が成立した金額が含まれているため、実態とはかけ離れている」などと意見したということです。
今後、裁判所は、これらの意見や提出された資料をもとに、解散命令を出すかどうか判断します。
藤井貴彦キャスター
「今後、どのように審理が進んでいくか。憲法が専門で宗教法人法に詳しい近畿大学法学部の田近肇教授に話を聞きます。教団側はこれまでの国側の主張に対立するかたちとなりましたが、教団側の意見を田近教授はどのように見ていますか?」
近畿大学法学部法律学科 田近肇教授
「22日の審問での教団側の主張というのは、宗教法人法の解釈であるとか、法律論が多かった点は少し意外でした。もう少し事実認定の話が出るかなと思ったのですが、それが出なかったのは少し意外な感じはしましたが、おおむね予想された範囲内かなというふうに思います」
藤井キャスター
「今後の判断について、宗教法人法では『法令に違反して著しく公共の福祉を害する』か、『宗教団体の目的を著しく逸脱した行為』か、この2つにあてはまる場合、裁判所は解散を命令できるということになっています。これは具体的にはどのような行為があてはまるのでしょうか」
田近教授
「例えば、過去のオウム真理教の解散命令の事件の場合であれば、サリンを作って殺人予備罪にあたるというので刑法違反、まさに法令に違反したと、著しく公共の福祉を害するというふうにされたことがあります」
藤井キャスター
「まずは、この条文にある『法令に違反して』という部分ですけれども、“統一教会”の場合は、刑法上は罪に問われていないということですね。民法上の不法行為はどのように判断されると考えていますか?」
田近教授
「民法上の不法行為というのが宗教法人法による法令違反に含まれるのか、含まれないのかというのが1つ、今回の争点になっているわけですけれども、国側は2022年の10月に岸田首相が国会で『含まれるんだ』というふうに答弁されましたので、それを前提にして、民法の不法行為も法令違反に含まれる、したがって旧統一教会というのは解散すべきだ、というかたちで主張しているということです」
藤井キャスター
「この不法行為が認められた場合ですが、2つめの『宗教団体の目的を著しく逸脱した』という判断にも関わってくる内容なんでしょうか?」
田近教授
「関わってくると思います。不法行為をしたら、違法な活動をしていたということであれば、それは宗教団体の目的とは違うという話になるはずでして、それが当然、関わってくるんだろうと思います。あともう1つ、今聞かれたこととはややずれるのかもしれませんが、今後もう1つの問題となるのが、不法行為というのが、その宗教法人の組織ぐるみで行われていたのかどうかということです。旧統一教会の側にしてみれば、問題の不法行為というのは、代表・役員・その他の幹部というのが直接関与しているわけではないので、これはあくまでも末端の信者がやったにすぎないんだから、宗教法人そのものの行為とは言えない、したがって宗教法人を解散する必要はないですよねと、旧統一教会側は言いたいということなんだと思います」
藤井キャスター
「22日は1時間弱、審問が行われたということですが、今後また行われる可能性はあると考えていますか?」
田近教授
「そもそも解散命令請求というのは、これまで行われた事件の数そのものが少ないものですから、普通は何回くらい審問するんですかといわれると、何が普通かというのがよくわからないところがあります。ただ今回、1つは、オウム真理教の事件とか、あるいは明覚時の事件とは違って、民法上の不法行為というのが問題になっているということ、それからもう1つは、いわば事実認定に関わる問題がまだ残っているはずですので、まだ、ひょっとしたら審問が何回か行われる可能性というのもないわけではないのかなと思います」