全国で線状降水帯シミュレーション実験 大学などと連携しメカニズム解明と予測精度向上へ 気象庁
毎年、日本各地で豪雨災害をもたらすものの、予測が難しい「線状降水帯」について、気象庁は予測精度向上に向けたスーパーコンピューター「富岳」を活用したシミュレーション実験を、今年は全国に拡大して行うことを明らかにしました。
気象庁は発生の予測が難しいとされる「線状降水帯」のメカニズムの解析と予測精度の向上を目指して、去年から全国の大学など16機関と連携して研究や技術開発に取り組んでいます。
去年は「線状降水帯」の予測に欠かせない水蒸気の観測を強化するため、アメダスの観測要素に湿度を導入したほか、新しい静止気象衛星の整備なども進めています。
また、理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」を活用したシミュレーション実験では、西日本で発生した「線状降水帯」のケースで、実際の降水量と近い数値が予測されたということです。
こうした中、去年8月には東北地方で初めて「線状降水帯」が発生しましたが、気象庁は今月から「富岳」を活用した水平解像度1キロ四方という高解像度でのシミュレーション実験を、東日本と北日本に拡大して、全国を対象に10月末まで実施していくということです。
気象庁は実験を通して、課題の把握や技術改良を進め、2025年度末には、新たに導入した「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」を使って、1キロ四方で予測時間を18時間先まで延ばすことを目指していきたいとしています。
一方、「観測」も強化します。「線状降水帯」をつくり出す積乱雲の内部構造や発生要因を解析するため、西日本を中心に陸上と海上の両面で集中観測を行うということです。
「線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ」の主査で東京大学・大気海洋研究所の佐藤正樹教授は「線状降水帯を正確に予測して被害の軽減につながるよう、引き続き、気象庁と大学などの研究機関が連携・協力していきたい」と話しています。