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“ブランド食材”大量在庫で…生産者悲鳴

2020年5月22日 19:37
“ブランド食材”大量在庫で…生産者悲鳴

多くの飲食店が休業などを余儀なくされる中、食材の生産者たちも厳しい状況が続いています。全国に知られたブランドの生産者たちも、大量の在庫を抱え悲鳴をあげています。

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全国屈指の「タマネギ」の産地、佐賀県の白石地区。今年は、今が旬で名産のタマネギが大豊作。ところが…

JAさが白石地区 たまねぎ部会・片淵康弘会長「産業廃棄物として処理していく、そういう状況に今はなっている」

収穫期にもかかわらず、畑にそのままにしてあるタマネギ。こうしたタマネギは、1万1000トンにも及び、本来の出荷量のおよそ8割にもあたる量が出荷できずにいるのです。理由は…

JAさが白石地区 たまねぎ部会・片淵康弘会長「加工・業務用を中心に、全国で荷動きが低迷していて」

外食産業の休業などによる、販売の低迷。生食が中心のこのタマネギは長期保存ができず、現在、特殊な保管庫に貯蔵。少しでも寿命を延ばし、販売先を開拓している状態だということです。

今、こうした地域を代表する食材が行き場を失い、生産者が悲鳴をあげています。

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鹿児島県でも…

県の名物「さつま地鶏」。炭火焼きや、刺身で食べることが人気のブランド地鶏ですが、鹿児島県の鹿屋市にある養鶏場では、販売先の休業などにより、先月の売り上げが前の年より7割も減少。「ある悲痛な判断」を迫られていました。

養鶏場を営む浜田洋一さん「(鶏を)処分するしかないという状況。苦しいところもあるんですけど、かわいそうなところも」

手塩にかけて育てたさつま地鶏を、処分しなければならないというのです。

主な理由は「エサ代」。飼育している3000羽のおなかを満たすには、月におよそ100万円もの経費が必要なのです。

さらに、動物相手のこの商売。人件費や維持費は、節約することが難しいといいます。

養鶏場を営む浜田洋一さん「さすがに今のような状況だと手を引かなければならないのかな」

頼みの綱は、今月から力を入れ始めたネット販売。なんとか最悪の事態を回避したいということです。

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一方、新潟県でもブランド米「コシヒカリ」がピンチに陥っています。

コメ生産加工会社 ごはん・大島知美社長「4~5月で90%落ち込んでいます」

倉庫には売れ残ったコメが山積み。その数2000俵。全て有機栽培で、1キロ1600円前後の高級品だといいます。

コメ生産加工会社 ごはん・大島知美社長「(有機栽培は)腰をずっとまげて、田んぼの中をはいつくばってやることとか多い。そういう苦労が、まったくの無駄になってしまう」

普段販売している料亭の営業自粛などの影響で、多くの売れ残りが発生。保存はきくものの、秋の新米の時期には、これらは全て古い「古米」とされ、価格が5分の1まで暴落してしまうというのです。

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一方、大分県では、「ある方法」で、ブランド食材「関あじ」の売り上げを持ち直したといいます。

関あじは、大分県の佐賀関で水揚げされたものだけに名付けられる高級ブランド。

九州の豪華寝台列車「ななつ星」の料理にも使われていたこともあります。

この業者「富士見水産」では、ホテル・料亭などの休業を受け、売り上げが8割もダウン。そこで思いついた「秘策」が…

富士見水産・姫野透社長「フェイスブックで、『関あじを食べてください』と皆様にお願いして」

SNSで、一般向けの販売を呼びかけたのです。価格は、あえて4割引き。すると、これまで高級品を敬遠していた、一般層の購入が相次いだといいます。

富士見水産・姫野透社長「おいしかったよって(返事をくれる)。それが大変うれしい」

売り上げは5%ほど回復。この機会に味を知ってもらい、収束後の販売につなげたいということです。