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「比較」が子どもに悪影響? 全国アンケート1300件でわかった“子どもたちのホンネ”  親から比較されると学校の満足度も低く……

2024年9月23日 8:30
「比較」が子どもに悪影響? 全国アンケート1300件でわかった“子どもたちのホンネ”  親から比較されると学校の満足度も低く……
イメージ写真:アフロ

親や先生に言いたいのに言えないこと、“子どもたちのホンネ”は?――。日本テレビとYahoo!きっずの共同で実施したアンケートで、約1300件の全国の小中高生の声が集まりました。子どもに頑張ってもらいたいと、つい周りのお友達や兄妹と比較してしまう“親心”。でも約7割の子どもがイヤな気持ちになると回答しています。そして、親の比較が、子どもの悩みの数や学校満足度など様々な悪影響があることが判明。子どもの教育分野での調査、データ分析を行うエビデンス共創機構の伊芸研吾代表理事に、約1300件の声を分析してもらいました。
(インタビュー・文=日本テレビアナウンサー鈴江奈々)

―――アンケート結果の分析から、親子関係にどんな特徴が見られましたか?

◆親子の会話が多い子ほど、家庭での満足度が高く、親とより会話したいと思う

◆夕食を家族と食べる子ほど、家庭での満足度が高く、親とより会話している

◆休日に家族で出かける子ほど、悩みが少ない

1つは、お父さん、お母さんとの会話が多ければ多いほど、家での生活に満足している度合いが高い傾向があったこと。加えて、家庭の生活満足度が高ければ、もっと親と会話したいと答える傾向がみられ、好循環のような結果が見られました。これを逆に返すと、あまり親と会話をしていないお子さんの場合は、家庭生活の満足度はあまり高くないし、親とあまり会話をしたくないという風になってしまって、さらに満足度が下がる負のスパイラルもあり得る点が示唆的な結果でした。

会話以外に、親と子どもの関わり方がどう家庭生活の満足度に影響するのか分析してみると、「夕食を親と一緒に普段食べることが多い」「休日家族で外出することが多い」お子さんは家庭の満足度が高く、親との会話の頻度っていうのも非常に高いというような傾向がみられました。また、家族と夕食を一緒に食べたり休日に一緒に外出したりするお子さんは、悩みの数自体も少なく、さらにお父さんやお母さんが相談相手になっている。そういう関係性も今回見られました。

―――学校生活との関係性は何かみられましたか?

◆夕食を家族と食べる子ほど、学校生活の満足度が上がり、学校に行きたくないと感じにくい

◆休日に家族で出かける子ほど、学校生活の満足度が上がり、学校に行きたくないと感じにくい

◆親に比較された経験のある子ほど、悩みが多い

◆親が比較する傾向にある子は、学校生活の満足度が低く、学校に行きたくないと感じている

夕食を家族と食べたり、休日に親と出かけたりする子ほど、学校生活の満足度が高く、学校に行きたくないと感じにくい傾向があることがわかりました。因果関係はアンケートだけではわからないので解釈は難しいところがありますが、家庭の状況が良いと学校生活にプラスに働いて学校生活の満足度が高い。または、学校生活がうまくいっていれば家も上手くいくというような逆の関係もあるかなと思うんですが、学校と家庭の満足度に関係性があることが今回の調査からは見えてきました。

親とあまり会話したくない、会話が減るということは、家庭生活満足度が下がるということになります。悪いスパイラルに入って、さらに会話もしなくなるし、満足度も下がるということで、やはりお子さんにとっては、よくない環境になっていくということがありました。

■親に誰かと比較される傾向が高いと学校満足度が低く……

今回のアンケートで、普段親があなたと誰かを比べることが「よくある」「ときどきある」と答えた子どもが、5割を超えていました。親が比較するような傾向にあるお子さんは、親を相談相手とあまり思っていない傾向のデータが出ていたんですね。 そして、比較されることがあるお子さんは悩みの数も多かったのですが、それを親に相談ができていないことの影響とも読み取ることができます。そういう意味でも、子どもが他人と比較されることの影響は大きいと言えます。

さらに、比較される傾向が高いと学校満足度も低い。また、学校に行きたくないという感じる度合いも高い。 これも、解釈が難しいところがありますが、家庭環境が悪くなると、学校生活でも悪い影響が出てしまっているのではないか。そう捉えることもできます。家庭だけに収まらず、学校の方にも、比較されることの影響があることが今回のアンケートから見えてきました。

――――逆に、比較することが、子どもにとってプラスになる事はないのでしょうか?

比較をするということは、子ども自身も普段やっていることだと思います。 子ども自身が他者と比較する時に、学力や学習意欲に対して、いい影響もあれば悪い影響もあるという研究結果もあります。比較対象が身近であったり、自分でも到達できそうだったりする場合には、モチベーションが上がって学力も意欲も高まる。その一方でハードルが高い、かなり離れた相手と比較することによって、逆に学習力が下がるというものです。

今回の調査・研究では、自分自身ではなくて、親という外部から比較が持ち込まれているという点にも注意が必要かと思います。お父さんやお母さんは、周りをみて「もっと頑張ってほしい」と発破をかける意味で比較してしまうことがあるかもしれませんが、「外から持ち込まれる動機付け」に関しては、思い通りにはいかない、という研究結果や理論もあります。

比較することが、外から持ってきた動機なのか、子ども自身の内発的な動機なのか。お子さん自身が、「勉強したい」「こうなりたいから勉強したい」という思いとは違って、外から持ってくる動機付けは、なかなか自分の中に落とし込めない、いい影響に繋がっていない、という研究結果もあり、今回のケースでも子ども自身の動機を高める、勉強力を高めるというところまでには繋がってはいないとみられます。

―――「親に比べられた時にどんな気持ちになったか」という質問には、約7割の子どもが「イヤだった」と答えていますよね。

そこからも比較することや比較の仕方にはケアが必要だと今回の結果や他の研究など含めても感じるところです。今回の調査で答えていたのは小学生が主でしたが、中学受験する子もいれば、高校受験、大学受験していく中で、基本的には どんどん他者と比較されざるを得ない状況に置かれていくわけですよね。その時にどう結果を捉えるか、どういうフィードバックを与えるべきか。親だけでなく、学校側や教育者がどういうフィードバックを与えるべきかという研究が今まさに進んでいるところです。

実証研究はなかなか日本のものがないのですが 1つ理論的に言われているのが、“自分ごと”として捉えられるステップが必要ということ。良い比較の仕方、良いフィードバックを与える時の1つの指標として、「自分ごとのように捉えられる」そうしたところがポイントかなと思います。

今回の分析結果から考えると、子どもとの会話の量を増やすことで、相談をしやすい関係性につながっているので、比較をする際の親子関係をちゃんと引き上げておけると、大人からのアドバイスも“自分ごと”に受け取ってもらい良い方向にいくのではないでしょうか。

■子どもの「自己肯定感」を高めるには

―――アンケートでは、約9割が家族と夕食を食べている一方で、「1割の子どもが、一人、もしくは兄弟だけ、塾などで友だちと食べている」という結果でした。親子の時間が合わない家庭もあると思いますが、その場合はどうしたらいいでしょうか。

共働きが主のご時世、ある程度の割合のお子さんが、なかなか親と夕食の時間を一緒に過ごせてないというのは、事実として受け止めなければいけないですよね。その上で、いろいろな対策、対応ができると思います。1つは、今回の調査の中でも夕食を一緒に食べられていなくても満足度が高い子もいます。夕食以外の場でお父さんやお母さんとの会話やコミュニケーションを取れるような機会があったり、休日に時間を過ごす時間があったり、まとまった休みに一緒に旅行に出かけていたり…と別の機会でコミュニケーションの場を作ることでも補えると考えられます。

他にも、子ども食堂なども増えてきているのでそうした場を活用してもらって、他の子どもと一緒に食べるとか、お父さんやお母さんじゃない大人と一緒に夕食の場を囲むこともできるかと思います。

最近、教育分野で注目されている「自己肯定感」という言葉がありますが、自分を肯定する、自分はこのままでいいんだと思えることは、一人ではなかなか身につかないものです。基本的に他の人と関わりの中で、お父さんやお母さんが褒めてくれた、周りの人にこう言われた、という中で、自分はこのままでいんだと好転する気持ちが高まっていきます。自己肯定感を身に着ける上でも、心理的な状況においても 1人にしないのは大事なことだと思います。

自己肯定感というのは、現状について認めるというところですね。まずその現状について不安であるとなかなか次に進めない。自己を認めてあげるという「基盤」をまず固めて、そこから少しずつできることを増やしていくことが今後に繋がるという意味で、まずは自分を認める、肯定するっていうところが重要なポイントです。

―――他者との関わりという点で、今回の分析からわかったことはありましたか?

◆友だちや嫌いな人、先生、勉強や成績、顔や見た目について悩みがある子ほど、学校に行きたくないと感じている

◆相談する人がいる子ほど、学校生活の満足度が上がり、学校に行きたくないと感じにくい

◆相談する人がいる子ほど、家庭での満足度が高く、親とより会話している

◆本音を話せる友だちがいる子ほど、学校生活の満足度が上がり、学校に行きたくないと感じにくい

◆本音を話せる友だちがいる子ほど、家庭での満足度が高く、親とより会話している

相談できる人がいる、腹を割って自分の思いを伝えられる人が身近にいることが非常に大事だと思います。今回の調査では、困ったときに相談できる人がいないと、学校や家庭の満足度も低く、学校に行きたくないと感じている傾向があり、悩みの数も多くみられました。そして、親に比較する傾向にある場合、本音を話せる友だちがいない、少ないという傾向がみられました。

慎重に判断する必要がありますが、周りと比較されることにより、自分をさらけ出すところが難しくなる、なかなか友達とか本音を話しづらい、そうした心理的な影響もあるのかもしれないですね。本音を話しても大丈夫だと認めてくれたり、それに対して真摯な答えが返ってきたり、そういう状況や関係性が大事である。これは子どもだけではなくて、大人、社会人の中でも「心理的安全性」の大切さが言われる中、そこに通じることが、今回の結果からも見られたと思います。

―――最後に、調査を通じて伝えたい事をお願いします。

今回の調査はネット上で広く全国の子どもたちからたくさん回答いただきましたが、やはり子どもたちが不満を持っていたり、満足をしていたり、そういった感情を持っているということが如実に出ています。日々の生活の満足度について、親との会話、周りとの関係が関連性あることも分析から見えてきました。1人の人間としての子どもたちにどうやって接していくか、この結果を多くの人に見ていただいて、今後どういう形で接していこうか、どういう環境を作っていこうか、子どもの成長についてどうやっていこうかと考える一つのきっかけになればうれしいです。

(調査詳細:『親や先生に言いたいのに言えないことは?――全国アンケート“子どもたちのホンネ”1300件 自由記述の声を紹介』)


<連載企画>『子どもたちが、生きやすく』

少子化が進む一方で、子どもたちを取り巻く環境は複雑さを増し、社会の課題は山積しています。今、子どもたちの周りで何が起きているのでしょうか。日本テレビ系列のニュース番組『news every.』は「ミンナが、生きやすく」が番組コンセプト。この連載では「子どもたちが、生きやすく」、そのヒントを取材します。