コロナで「うがい薬」に波紋 専門家は?
大阪府の吉村知事が4日、「ポビドンヨード」という殺菌成分があるうがい薬でうがいをすると、新型コロナウイルスが減る効果が得られる可能性があると発表し、波紋を呼んでいます。厚労省から「効果があると言うには時期尚早」、日本医師会からは「エビデンスが不足している」という指摘も。また、うがい薬の使用には、気を付けるべき「注意点」がありました。
■都心は今年一番の暑さ 熱中症にも注意
5日、東京では新たに263人の感染が確認されました。年代別にみると、20~30代が全体の6割以上を占めています。40~50代も全体の約2割と、傾向は変わっていません。重症者は21人で、4日よりは1人減りました。
また、熱中症にも注意が必要です。5日、東京都心では今年一番の暑さとなりました。 3日には、今年に入ってはじめて都内で熱中症で亡くなった方もいます。熱中症の搬送者も連日いて、5日の午後3時時点の速報値で、6歳~94歳の男女45人が搬送されたということです。そのうち2人が重症となっています。
■「うがい薬」の呼びかけ 「前のめり」という声も
こうした中、大阪府の吉村知事が発表した内容が波紋を呼んでいます。
吉村知事は4日、 「ポビドンヨード」という殺菌成分があるうがい薬でうがいをすると、新型コロナウイルスが減る効果が得られる可能性があると発表し、うがい薬をつかったうがいを呼びかけました。
「大阪はびきの医療センター」が研究したのですが、研究対象となった軽症患者が41人とまだ少なくはっきりとした効果は分かっていないとした上で、今後、大阪府と大阪市と協力して対象を2000人に広げ、効果を見極めたいとしています。
まだ治療の効果が認められたわけではなく、第一次の研究結果がでた段階で論文にもなっていません。その段階で行政の長がすすめるのは「前のめりではないか」という質問が記者会見でも出ました。
吉村知事は「口の中のウイルスが減ることで人にうつしにくくなるほか、肺炎など重症化が抑制されるのではないか」と述べ、ウイルスにかかっていない人の予防になるわけではないと強調しています。
吉村知事は5日、改めて次のように述べました。
「予防薬でもなければ治療薬でもない。ただ感染拡大防止についてはかなり寄与する可能性がある。いま感染が広がっている状況の中で呼びかけをした」
■うがい薬の注意点:転売は違法
4日の発表があってから薬局にうがい薬を買う人が殺到し、一部で買い占めも起きています。さらにフリマサイトでは高額で出品されているということですが、これは違法です。転売はもちろん、許可なく医薬品を売ることは禁止されていますから、売るのも買うのもだめです。サイトの運営会社は出品を削除するなど取り締まりの強化を始めています。
うがい薬の販売元は、引き続き供給していくので買いだめはしないでほしいと話していました 。
■うがい薬の注意点:妊婦は使用避けて
使用の際に注意も必要です。
赤ちゃんの甲状腺機能の低下につながることもあるので、妊婦の方は使用を避けること。また、甲状腺の機能障害がある人も避けた方がいいとのことです。
厚生労働省のクラスター対策班・小坂健教授は
「唾液の中のウイルスが減ることで、他の人に感染するリスクを減らす可能性はある。ただ、重症化の予防になるのかは詳しい情報がないとなんとも言えない」と話しています。
昭和大学病院・相良博典院長は「消毒薬として効果はあるが、直接治療するものではない。また、口の中の常在菌も無くなるので、むやみに使用すべきではない」としています。
■厚労省「効果があると言うには時期尚早」
厚生労働省がどう受け止めているのか、国会内で開かれた野党の会合で5日、このようなやりとりがありました。
山井和則議員「ポビドンヨードを含んだうがい薬が、コロナについてどんな効果があるのか」
厚労省の担当者「今後引き続き研究が拡大され、より確かな証拠がでることを期待する。国として推奨するとか推奨しないとかいう段階ではない。現時点において効果があると言うには時期尚早ではないか」
日本医師会も会見で「現時点ではうがい薬に対するエビデンスが不足している。有識者会議などでしっかり検証する」と言っています。
吉村知事はコロナ対策でも注目を浴びて、全国的にも影響力があります。引き続き、リスクや不確かな点、副作用、次の大規模調査の結果も含めて、丁寧に説明を続けてほしいと思います。コロナの感染対策としては、手洗い、マスク着用、3密の回避といった、基本の対策をまず徹底しましょう。
(2020年8月5日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)