ねぶた祭中止も…若者奮闘 小型ねぶた運行
新型コロナウイルスの影響で、この夏中止された青森ねぶた祭。いつもの年なら開幕日となる8月2日に、ふるさとの伝統行事を途切れさせたくないと、若者たちが小型ねぶたを地元で運行し、地域を元気づけました。
運行を企画した工藤公太さん「3か月間の準備がきょうという日に集結しているので」
──頑張りましょう、きょうは。青森を元気に!
青森市郊外の石江・新城地区です。大型ねぶたの運行は中止されても地域の伝統行事を途切れさせるわけにはいかないと、地元の若者たちが小型ねぶたの運行を企画しました。
高さ2メートルほどの小型ねぶたの題材は荒々しい「不動明王」です。ねぶた師の立田龍宝さんが1か月かけて制作しました。
新型コロナウイルスを蹴散らすねぶたにと、赤い炎を背に邪悪なものや疫病ににらみをきかす力強さです。
ねぶた師・立田龍宝さん「この不動様が、いろんなものを蹴散らしながら、運行までたどり着けばいいですね」
しかし、運行2日前に青森市内で新型コロナウイルスの感染者が確認され、運行を取りやめるか関係者たちを悩ませました。
運行責任者・関貴光さん「地域の方々の意見をまず電話して聞いたところ、『やってほしい』という声がいちばん大きかったので」
地域住民からの後押しで、ねぶたの運行を決めました。
運行を企画した工藤公太さん「私たちもやっぱりコロナは怖いです。コロナ対策をして、ねぶたを運行できるということを、青森市民に伝えたい」
当日の参加者は、全員マスクの着用や花笠に透明なシールドを施すなど、徹底した感染防止対策をとりました。
自分が制作したねぶたの運行を立田さんも楽しみにしていました。
ねぶた師・立田龍宝さん「やっぱり動くねぶた。生の囃子に勝るものないです」
いよいよ待ちに待った運行です。囃子(はやし)の音色に誘われて家から出てきた地域の人たちが沿道や交差点でねぶたを待ちます。
青森市民「お囃子を聞けば、何となく心が浮き上がってきてね、あぁ夏だなという感じ、青森の夏だなって感じでした」
青森市民「黙って家の中にいられないでしょ」
ねぶた囃子に心が踊り、思わず跳ねてしまう子どもたちもいました。
青森市民「良かったです。(ねぶた運行は)なくなったと思ったから」
運行コースの後半は高低差のある住宅街です。急な坂でもねぶたを引っ張り、たくさんの人に見てもらおうと住宅地の隅々まで練り歩きました。
3時間にわたってねぶたを引いた関係者の表情は、達成感に満ちていました。
運行責任者・関貴光さん「地域の方々の笑顔が見られたというのが、すごく良かったと感動してます」
運行を企画した工藤公太さん「さっぱり、最高、感無量」
ねぶた師・立田龍宝さん「運行できたということで、来年に何かつながっていけるひとつの明かりがともったと思っています」
新型コロナウイルスという目に見えない不安を抱えながら運行された地域ねぶた。ねぶた文化を途切れさせたくないと奮闘した若者たちの熱意が地域を元気づけました。