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「日本版DBS」国の有識者会議が報告書案 こども家庭庁が秋の臨時国会への法案提出目指す

2023年9月5日 20:37
「日本版DBS」国の有識者会議が報告書案 こども家庭庁が秋の臨時国会への法案提出目指す

性犯罪歴がある人がこどもに関わる仕事に就くのを防ぐ、いわゆる「日本版DBS」と呼ばれる制度について、国の有識者会議が報告書案をおおむねまとめました。

こども家庭庁の有識者会議の報告書案によりますと「日本版DBS」と呼ばれる新たな制度は、性犯罪に関する法律に違反し、有罪が確定した人を新たに作るデータベースに載せるものです。そして、学校、保育所、認定こども園、児童養護施設、障害児入所施設などには、従業員を採用する際、正規、非正規を問わず、その人の性犯罪歴の有無をこのデータベースで確認することを義務付けます。そして、こうした学校や保育所などにはこの制度を活用しているかどうかなどを定期的に自治体に報告するよう求めるほか、確認義務に違反した場合にはペナルティーを科すとしています。

一方、公的な認可を受けずに運営するこども関連の場所である無認可保育所、学童保育、塾やスイミングスクールなどの習い事、芸能の養成所などについては制度導入を義務化せず、任意とし、導入した所には国が「認定マーク」を発行し利用者にもわかるようにするということです。「認定」を受けると、義務化された場合と同じく、自治体への報告などが課せられます。また、以前わいせつ事案があったことを受け、個人のベビーシッターについては、シッターと利用者とのマッチングを行うサイトの運営者が居宅訪問型保育事業の事業者として届け出て、この新たな制度を導入して、認定を受けるよう促すことが適当だと書かれています。

報告書は、痴漢や買春など自治体の条例違反については、罪となる行為や構成要件に自治体間でばらつきがあることから制度の対象とするには「技術的課題があり、更なる検討を要する」としました。また、逮捕されても、不起訴処分となった人については、行為があっても示談の末に不起訴になるという実態を踏まえながらも対象に含めるには「慎重であるべき」と書かれています。そして、行政上の懲戒処分や民間企業の解雇処分については、「対象にすべきという意見もあったが、これらはその主体によって処分の基準や考え方等が異なる」などとし、「その検討には更なる時間を要すると考えられる」「自主退職したから終わりにするという対応を取るべきではなく、犯罪に当たると考えるときは告発をすることにより、対象とすべきものが漏れることのないように」といった意見も記されています。

なお、こども家庭庁は、データベースで性犯罪歴があると確認された人の扱いについて「新規採用では、雇わない場合が多いと推測するが、雇ってはならないというわけではない。(採用時の)参考情報として活用するのが適当だ」と説明、雇用する側の判断で雇った場合、こどもに関わらない業務に配置するなど適切な措置を取るよう求めるとしていて、「適切な措置」の具体的な内容については今後、ガイドラインを作る予定だということです。

また、すでに働いている職員をデータベースで調べて、性犯罪歴が確認された場合について、報告書では「直ちに解雇することは社会通念上の相当性が認められるとは考えにくい」とし、こどもと関わらない業務への配置転換やその職員一人でこどもと関わらないようにするなど措置を講ずることが必要だと盛り込まれました。

今後の論点として残ったのは、性犯罪歴を何年間、データベースに載せ続けるかです。きょうの報告書では、性犯罪歴を永遠に登録するのではなく、「一定の上限を設ける必要がある」と提言しています。というのも、刑法には、禁錮以上の刑については刑の執行終了等から10年間、再犯がなければ他の者と同様に扱われることで更生の意欲を助長する、などとあるからです。報告書は「刑法の趣旨も踏まえつつ、こどもの安全を確保するための必要性と合理性が認められる年数を検討」と提言しました。こども家庭庁は「大きな宿題」だとし、今後、与党などとも調整して決めると述べ、「刑法の大原則という意見もあるだろうし、こどもを守るという大原則で、なるべく長く犯罪歴を載せるという考え方もある。法制的な問題をどうクリアできるかだ」と話しています。

こども家庭庁は、秋の臨時国会への関連法案提出を目指しています。

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