海水温「熱帯」級 今年の台風が強いワケ
台風10号は猛烈な勢力となり、週末にかけて九州などに近づく見込みで、最大級の警戒が必要です。今年の台風はなぜ厳重な警戒が必要なのか。急速に発達するワケと、コロナ対策の中での避難の方法をお伝えします。
■海水温が「熱帯」レベルに 2つの要因は
台風について気象庁は、今年の台風はより発達しやすくなるとしていて、その理由について日本近海の“ある異変”を指摘しました。
日本近海の海面の水温を示した画像(ことし8月)を見てみます。
海面水温約30℃を示すエリアが、30年前と比べて、日本列島のすぐそばまで広範囲に広がっていることが分かります。こうした海域では1982年の統計開始以降、海面水温が最も高くなっていて、熱帯と同じくらいの水温になっているのです。
なぜこんなに海面水温が高くなっているのか。気象庁によりますと、要因は2つあります。
要因(1)
地球温暖化が進んでいることが背景にあるといいます。
温暖化の影響で、日本近海の海面水温は四国・東海沖、関東の南東方、沖縄の東、どれをみても過去30年間右肩上がりで上昇しています。
要因(2)
ことしは8月までの台風の発生数が少なく、近海の海水がかき回されませんでした。そのため、海底の冷たい水と表面の暖かい水が混ざり合わずに水温が高いまま9月を迎えました。
こうしたことから、ことしの海面水温は記録的な高温になっています。
■海水温が高い状態は9月下旬まで
そもそも台風が発達するためのエネルギー源は、海水から与えられる水蒸気です。海面水温が高いと、より多くの海水が蒸発して水蒸気が発生するため、台風がより発達しやすくなります。
気象庁によると、海面水温が高い状態は今後も9月下旬まで続く見込みです。台風がどのようなコースを通っても、暖かい海面水温の海域を通過して台風が日本に近づいてくるため、より勢力が発達し、危険な状況になると危機感を示しています。
■世界で相次ぐ異常気象
地球温暖化による異常気象の影響は、世界各地にもあらわれています。
アメリカ・カリフォルニア州のデスバレーでは、8月、最高気温54.4℃という記録的な高温を観測しました。カリフォルニア州では山火事が相次いでいて、焼失面積は8月下旬には東京都の1.4倍にも及び、住宅地への延焼も広がっています。
世界的に有名な観光地にも影響が出ています。
フランス・パリでは8月、40℃近い猛暑が続いていて、印象派絵画の巨匠クロード・モネの名作「睡蓮」のモデルとなった池では、ことし、睡蓮の花がかつてないほど見事に色づいています。池の水温が上がり、生育に最適な環境が整ったということです。
気象庁は、台風10号について、3日、次ように強い危機感を示しました。
「特別警報級の勢力を保って接近してくるという状況が想定されるので、最大瞬間風速が60メートルくらいになってきますと、住家によっては崩壊するようなおそれもでてくる。それ以上の現象も想定されるという状況で警戒が必要」
これから本格的な台風シーズンを迎えますが、コロナ対策の中、あらかじめ避難先を考えることが大切です。例えば東京・足立区は、ことしは避難所での3密を避けるため「分散避難」を前提としてルールを作りました。
(1)在宅避難
浸水・倒壊の危険がない丈夫な建物に住んでいる場合は、自宅にとどまる。戸建てなどの場合は2階以上など高い階に避難する。
(2)縁故等避難
浸水のおそれがない家族や親戚、知人の家やホテルなどへの避難。日頃から避難先の友人などと連絡を取っておくことも大切です。
(3)以上が難しい方は、避難所への避難
とはいえ、避難所に行くことも想定し、日頃から非常用の持ち出し品を用意しておくことも大切です。
タオル、着替え、ポリ袋、簡易トイレなどがあると便利です。そのほか、感染症対策としては、マスク、アルコール消毒液、体温計、ハンドソープやせっけん、使い捨てのビニール手袋などを準備しておくといいです。どこへ避難する場合でも、検温やかぜ症状の確認など、健康状態のチェックをすることが非常に大切です。
避難は早めの行動が肝心です。いつもは川の水位が上がってから避難する人も、その時には暴風雨で避難できない可能性もあります。特に今回ほどの危険な台風の場合、早め早めの行動を心がけしょう。
(2020年9月3日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)