相次ぐクマ出没 3つの原因と遭遇時の対策
最近、各地でクマの出没が相次いでいます。 背景には「新世代クマ」の増加があるとの指摘も。考えられる3つの原因と、遭遇してしまった時の対策をまとめました。
■相次ぐクマの出没 4月~8月で1万件以上
いまクマの出没例が相次いでいます。
石川県加賀市で10月19日、ショッピングセンターにクマが侵入しました。13時間居座り続けたのち、猟友会によって射殺されました。侵入したのはオスの大人のクマで、体長は約130センチ。熊の体長は鼻の端から肛門までの長さをはかるので、立ったらもっと大きいはずです。
8月には長野県大町市のキャンプ場で女性が襲われてけがをし、栃木県日光市ではゴルフ場に子グマが出没しました。 10月に入ってからは、福島県喜多方市の駅前で、出勤しようとアパートを出た男性が襲われました。また、石川県小松市では、女性が新聞をとりに玄関先へ出た際にクマに襲われたケースもありました。
最近は「GoToトラベル」で旅行する人も増えていますが、注意が必要です。
10月16日に群馬県みなかみ町では、温泉旅館で宿泊客が露天風呂に通じる屋外の通路を歩いていたところ、クマに襲われてけがをしたということです。
環境省によると、クマの出没は今年4月から8月までで約1万件以上にのぼっているということで、ここ数年と比較してもかなり早いペースで増えています。
■原因は2年前の「ベビーブーム」?
なぜこんなに出没が相次いでいるのでしょうか。
日本ツキノワグマ研究所の米田一彦理事長に聞きました。米田さんは、クマの調査を40年行う中で、3000回クマに遭遇したことがあるといいます。
米田さんによると、2018年にクマの「ベビーブーム」があったそうです。木の実が豊富だったりするとベビーブームが起きるそうですが、このベビーブームで生まれたクマが今年2歳で体長1メートルぐらいとなり、ちょうど親離れしてエサを求めて活発に動く時期。この2歳グマが多いから出没の件数も多い可能性があるということです。
■背景に「新型コロナ」の影響?
ただ、クマはそもそも山奥にいるものです。では、なぜ私たちに身近な場所で被害が相次いでいるのでしょうか。米田さんは、3つの原因が考えられると指摘しています。
原因1:ドングリの不作
クマが冬眠に備えて大量に食べるドングリが今年は不作だったため、餌を求めて広範囲に動き回っているのではないかと言われています。
原因2:「ソロキャンプ」の増加
新型コロナウイルスの影響で「ソロキャンプ」が人気ですが、山に不慣れな人もいて、食べ物を置いたままで襲撃されたりしています。若いクマが増えている場所に、人も近づいているのではないかということです。
原因3:「新世代クマ」の増加
「新世代クマ」の特徴は、人間を怖がらないことです。 旧世代のクマは、人が立ち入らないような深い山奥に住んでいたため、めったに出てきませんでした。しかし、ここ20年ほどで人里近くにある「里山」が人の管理が行き届かなくなって荒廃し、木が成長して「奥山」化しました。
新世代の若いクマや母グマはこの「里山」に住んでいるということです。すぐそばに人の生活圏があるので、人間をよく知っていて、車の音や人の生活の臭いにも慣れていて、人間を怖がらなくなっています。
そして、今年のように山のドングリが不作でおなかが空くと、一気に人間の生活圏に出てくるということです。
■もしクマに出会ってしまったら
クマに出会わないように、群馬県ではホームページで対策を呼びかけています。
まず、クマと出会わないようにすることが大事です。ハイキングなどで山に入る時は鈴やラジオなど音の出るものを持つということです。キャンプで生ゴミを外に放置しないですぐに片付けることが大事です。
もしクマに出会ってしまったら、大事なのは「慌てない」「騒がない」こと。走って逃げたり、大声で叫ぶのはだめです。クマがパニックになって攻撃してくるからです。
子グマだとしても油断しないでください。実際、先日「犬かな」と思って触ろうとしたら子グマで、親グマに襲われたケースもありました。
そして、クマとの距離に応じて対応することです。距離が遠くてクマがこちらに気づいていない場合はゆっくり静かに立ち去りましょう。距離が近くてこちらに気づいている場合は、目を離さずゆっくり後ろに下がりましょう。 ツキノワグマは100メートル9秒と言われるほど速く、走って逃げるのは不可能です。
万が一突進してきた時に備えて、クマと自分との間に木や電柱などを挟むといいそうです。もうだめだと思ったら、防御姿勢をとって頭を守りしゃがんでください。けがを最小限にすることができます。
「GoToキャンペーン」で山へ出かける人も増えていますが、クマは身近にいます。知識をしっかり備えてくれぐれもご注意してください。
(2020年10月20日 16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)