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返還合意から四半世紀 動かぬ普天間基地

2021年1月3日 17:09
返還合意から四半世紀 動かぬ普天間基地

沖縄の米軍普天間基地の返還が日米間で合意されてから2021年4月で25年になる。しかし、返還の条件とされた基地移設の進展は見通せず、普天間返還のめどは立っていない。

■なぜ「世界一危険な基地」に…
宜野湾市中心部のおよそ480ヘクタールを占める普天間基地は、1945年の沖縄戦のさなか、米軍が集落を破壊して建設した飛行場だ。戦後、土地を奪われた住民らが、基地の周辺に移り住み、やがて市街地化したため、軍用機は住宅や学校、病院などをかすめて飛ぶようになり、「世界一危険な基地」と言われるようになった。
この普天間基地の全面返還に、日米両政府が合意したのは、1996年4月のことだ。しかし、返還の条件とされた沖縄県内での基地移設は県民の根強い反発を受けて計画が二転三転し、当初「5年から7年以内」とされた普天間基地の返還期限は守られなかった。

■埋め立て進むも…しかし工事は難航
現在進められているのは、2006年に日米が合意した名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブの沿岸を埋め立てる移設計画で、政府はおよそ2年前、海への土砂の投入を開始。これまでに浅瀬部分の2工区で、埋め立てが進んでいる。

だが今後、埋め立てを予定する水深の深い海域では、海底に軟弱な地盤が見つかっている。その改良工事に必要な県知事の承認を現在の玉城知事から得られる見込みがない上、政府の見通しでも完成までさらに1兆円近い費用と10年以上の期間がかかるとされているのだ。

■騒音と事故への不安いつまで…
返還時期を見通せない普天間基地には現在、米海兵隊の輸送機MV22オスプレイなど58機が配備されているほか、F15やFA18、F35など所属外の戦闘機も頻繁に飛来し訓練を実施している。2020年12月には、普天間基地の周辺住民およそ4200人が軍用機による騒音への賠償と、深夜や早朝の騒音発生の差し止めを求めて、3度目となる裁判を起こした。

また、2017年12月に、普天間基地近くの保育園に、米軍ヘリコプターの部品が落ちてきた問題でも、警察は米軍に強制力を持った調査を行えず、2020年12月、米軍ヘリからの落下物と特定できないまま、事実上調査を終了させたことに県内では反発が広がっている。

学識者らでつくる沖縄県の諮問機関「万国津梁会議」は2020年、「辺野古移設を伴わない普天間飛行場の速やかな危険性除去と運用停止のための方策を検討することは、辺野古移設をこれ以上追求するよりもはるかに近道」だとして、日本とアメリカ、沖縄の有識者でつくる専門家会合の設立を玉城知事に提言した。

返還合意から四半世紀が過ぎても動かぬ基地と隣り合わせで暮らす住民の騒音被害や事故への不安にどう向き合うのかが、政治に問われる節目の2021年になりそうだ。