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山火事の火元は?消火より…空中放水の目的

2021年2月24日 20:39
山火事の火元は?消火より…空中放水の目的

栃木・足利市の山火事は4日目に入り、24日16時現在も延焼を続けています。毎年、実におよそ1200件発生する山火事。その原因やヘリによる空中放水の目的など、足利市の火災の最新情報も交え、詳しく解説します。

■消火活動の難航…火元はハイカーの「休憩場所」か

栃木・足利市の火災は、強い風の影響もあり、消火活動ができなかった23日夜の間にさらに燃え広がったということです。火は21日(日)から燃え続けていて、これまでに焼けた山林は約50ヘクタール、東京ドーム10個分を超える広さとみられています。

24日午前6時からは、自衛隊のヘリコプターが空からの消火活動も行っているということですが、現場付近では7メートルの風が吹いていて、消火活動の難航が予想されます。

24日午後に開かれた足利市の会見によると、火元は、両崖山の山頂より少し南よりにあるハイカーなどの「休憩場所」だと推測されるということです。

24日午後2時現在で避難勧告が出ているのは、西宮町で54世帯、本城で98世帯、五十部町などで25世帯の合わせて177世帯で、近くには中学校や高校、保育園などがあります。

付近のワイナリーに取材したところ、「今日(24日)になって煙の臭いがしてくる。不安に思っています」と話していました。

■消火より延焼防止…空中放水の目的

鎮火までには、どのくらい時間がかかるのでしょうか。元東京消防庁麻布消防署長の坂口隆夫さんによると、一般的に、燃え広がった山火事を消すのはとても難しいとのことです。山の斜面を歩くだけでも大変なうえ、消防隊員が入っていく道がない場合が多く、ホースを延ばしていくことが困難だと言います。そこで、山ではヘリコプターによる空中放水が中心になるという話でした。

足利市でも、自衛隊のヘリコプターによる放水が行われています。一度にまくことができる水の量は、例えば、東京消防庁の中型機では約900リットル(ドラム缶4本半)、自衛隊の輸送ヘリでは5000リットル(ドラム缶25本分)。燃えている場所の上空は危険なので、燃えている所に直接水をかけるのではなく、燃え移りそうな所に放水するそうです。地上の放水は火元の炎を直接消すことが目的であるのに対し、ヘリからの放水は延焼を防ぐのが目的という違いがあります。

現場付近では24日も空気が乾燥し、7メートルの風が吹きました。坂口さんは、映像を見る限り「24日中の鎮圧は難しい」とみています。

■東京・青梅市でも大規模火災 ほぼ消し止められる

東京・青梅市でも大規模な火災が起きました。23日午後、青梅市沢井の住宅から出火したのち周辺に飛び火したとみられ、300メートルほど離れた寺も燃えました。さらに、火は寺のそばの山林に燃え広がり、丸1日たった24日午後、ようやく火の勢いはおさまりました。これまでに東京ドーム約1.8個分となる約8万5000平方メートルが焼けました。

■意外と多い? 毎年1200件の山火事

日本では毎年、意外と多くの山火事が起きています。ここ最近の平均で見ると、1年間に約1200件。記憶に新しいところでは、2017年に岩手県釜石市で大規模な山火事がありました。14日にわたって燃え続け、136世帯、348人に避難指示が出されました。

データを見ると、山火事は2月から急増、3月から5月がピークとなります。3月にかけて急増する理由として、林野庁は主に次の要因を挙げています。

(1)空気が乾燥

(2)冬の枯れ草が多い

(3)春先で暖かくなり山に入る人が増える

特に3月は大規模な火災になりやすいと言います。

■山火事の原因は「人間の不注意」

山火事になる「原因」は何なのでしょうか?日本の山林火災は、原因の多くが人間の不注意となっています。件数でみると次のような割合になっています。

(1)たき火 30.2%

(2)野焼き 17.5%(火入れ含む)

(3)放火 8.4%(疑い含む)

(4)たばこ 5.1%

(5)火遊び 2.3%

青梅の火事も、火元の家の男性が家の庭で「たき火」をしていました。栃木・足利市の火災もハイカーたちの「休憩場所」が火元ではないかという情報が入ってきています。坂口さんは、「たき火が大きな火災につながると思ってやる人は少ない」「バケツ1杯くらいの水をかけて少し土をかけても、火種が残っていて、また燃え上がってくることもある」と言います。

近隣住民のみなさんが安心して暮らせるよう、一日も早い鎮火を願っています。引き続き最新情報に注意しながら過ごしていただきたいと思います。

(2021年2月24日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より