かつての駅事務室が高校生たちの学びの場に
全国ではいま、一日中駅員がいない「無人駅」が増えています。その1つ、群馬県にある無人駅がリニューアルされ20日、高校生が無料で使える学習室ができました。そこにはある“狙い”が込められていました。
■にぎわいを取り戻したい町とローカル駅のコラボ
群馬県北部・みなかみ町にあるJR上越線・後閑駅。電車は1時間に1本というローカル駅です。駅前には役場もあり、いわば「町の玄関口」の駅ですが、3年前に無人駅となり地域の住民から、まちのにぎわいが失われるのではと不安の声が上がっていました。
利用者が通過するだけだった駅ににぎわいを取り戻すには…危機感を抱いた町は利用者の多くが高校生である点に注目したのです。無人駅の活用を模索していたJR東日本に学習室としての利用を提案。約2000万円の改修費も町が負担し、今回のリニューアルが実現しました。
■かつての駅事務室が気軽に立ち寄れる場所へ
今回学習室に生まれ変わったのは、無人化する前に駅員が使用していた事務室です。リニューアルされた学習室には、長机と22脚の椅子が置かれ、集中力を高められるよう、パーテーションで区切られたスペースもあり、個人でも利用しやすいつくりになっています。
今後、Wi-Fiも設置される予定です。一部の机は移動させることが可能で、イベントスペースとしてレイアウトを変更できるデザインになっているということです。みなかみ町内に在住、もしくは通学している高校生が無料で利用できます。
開室時間中は町から運営を委託されたスタッフが常駐していて、それぞれ平日は午後3時から午後8時半まで土曜日は午後1時から午後7時まで、(日曜・祝日は休み)利用可能となっています。
■待ち時間のムダ解消に期待の声も
オープンした初日の20日、学習室を早速利用した高校生は、「家族に駅まで迎えに来てもらう際の待ち時間に勉強をして、有効活用できそう」と話していました。
■地域の特産を活かし、にぎわいの場を創出
実は学生のための空間を設置して、にぎわいを取り戻した成功例があります。高知県を走る土佐くろしお鉄道の中村駅。地元特産の四万十ひのきを使って待合室を学習室としても利用できるよう11年前にリノベーションしました。
駅の担当者によると待合室は駅を利用する学生に好評で、帰宅の時間帯には15人ほどが座れる席のほとんどが埋まることもあり、列車を利用しない人にも利用されているということです。
■駅の学習室が地域のつながりを生む場所に
今回、JR後閑駅のリニューアルにたずさわった学習室の運営担当者は日々の学びも大切にしながら、新たなことにチャレンジができて、地域とのつながりを発見できるようなにぎわいの場として高校生たちには活用してもらえたらと話していました。