被災地「磯焼け」深刻……若手ダイバー奮闘
新型コロナウイルスの感染拡大は、海の中にも影響を及ぼしています。岩手県大船渡市では、生き物が姿を消す「磯焼け」が深刻化。ボランティアは新型コロナの影響で激減し、このゴールデンウイーク中も受け入れられませんでした。そんな中、奮闘する、若手ダイバーらを追いました。
■遺構の眠る海で「磯焼け」深刻化
東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県大船渡市。海の中で地元ダイバーたちが「10年前のそのままのロープが残っています」「エビがいた…」「エビが住んでいますね」と話しました。海底には、津波で流された巨大な防波堤がありました。震災から10年たった今も、「海の震災遺構」が多く残っていました。
この海で今、問題となっているのが、数年前から深刻化する「磯焼け」という、海の砂漠化です。本来、海藻が生い茂っているエリアに、海藻が一本も生えておらず、ウニだらけになっている場所がありました。海水温の上昇により、冬眠するはずのウニが冬眠せず、生き物のエサとなる海藻を食べ尽くしてしまう現象です。
■活動の担い手「10分の1」に
「海藻の豊かな海に戻したい」と再生に向けて動いたのは、地元のワカメ漁師の野田勇志さん(19)。作業で使う白い胴長には「日本一のイケメン漁師」とあります。その所以を聞くと「これ、ちょっと…触れてほしくなかったです」とはにかみました。
海の変化は漁師の生活に直結するため、地元ダイバーや全国のボランティアダイバーらと、磯焼け対策を行ってきました。
しかし、野田さんは「今、コロナなので小規模になってしまうんです」と悩みを明かします。新型コロナの影響で全国のボランティアダイバーが来ることができず、年間500人ほどいた活動の担い手は10分の1ほどに。このゴールデンウイークも、感染拡大を防ぐため、来るはずだった多くのダイバーの受け入れを断らざるを得なくなりました。
■よみがえった「海藻の森」
今は地元ダイバーらで、ウニの駆除や海藻の入った袋の設置などを、通常の10倍もの時間をかけて行っています。
これまで何年もかけて磯焼け対策を続けてきたエリアに、案内してもらいました。
4か月ほど前に設置した海藻の袋からは、長い昆布がゆらゆら。青々とした「海藻の森」がよみがえっていました。姿を消したアワビも戻り、海は大きく変化していました。
■野田さん「どちらも乗り越えたい」
野田さん
「今のコロナっていう状況は、震災と同じような感じで捉えているんです。本当にみんなで乗り越えた後に、自分をどんどんどんどん強くしていってくれるものがあると思うので」
震災とコロナ、どちらも乗り越えたいと野田さんは言います。
「海のために頑張るし、自分のためにも頑張るし、町のためにも頑張る。自分が先陣を切ってやっていきたなと思っています」
(4月29日『news zero』より)