【解説】感染者数や検査数、正確に把握されず?「データと実態がかい離」とは
新型コロナウイルス感染拡大のピークアウトは、いつになるのでしょうか。厚生労働省の専門家会議でも9日、議論が行われました。一方、感染者などの報告に遅れが出ていて、感染状況の実態が把握しづらくなっている現状も見えてきました。詳しく解説します。
■「感染者数の増え方が緩やかに」本当にピークアウトする?
政府は、東京や愛知など13都県に適用している「まん延防止等重点措置」の期限を今月13日から3週間延長し、高知県にも今月12日から適用することを10日夜、正式に決定します。いずれも期間は来月6日までとなり、全国36都道府県に「まん延防止等重点措置」が適用されることになります。
9日、東京都で新たに1万8287人の新型コロナウイルス感染者が確認されました。 前週の同じ曜日を下回るのは今年初で、昨年12月17日以来の約1か月半ぶりでした。
いよいよピークアウトするのか気になりますが、9日に開かれた厚生労働省の専門家会議でも議論になりました。脇田座長は次のように述べました。
厚労省アドバイザリーボード 脇田隆字座長
「減少傾向にはあるんですけど、このまま本当にピークアウトするかというところには議論があって、全国で新規感染者数の増加速度が鈍化していますけれども、療養者数・重症者数・死亡者数の増加は継続しています」
新規感染者の増え方は緩やかになってきたものの、重症者・死者の増加はまだ続いているということです。
■「データと実態がかい離」感染者数が正確に把握されず?
また「感染者数の増え方が緩やかになった」という評価の一方、脇田座長は「報告の遅れや検査のひっ迫で、公表されているデータと実態がかい離しているとの指摘もある」としています。
「データと実態がかい離している」というのは、つまり、感染拡大の実態が正確に把握されていない可能性があるということを意味しています。
なぜ、“かい離”している状態が起きているかというと、感染者数があまりにも増え過ぎているため、一部地域で「新型コロナウイルスの発生届」の提出が遅れているということです。
発生届には、陽性となった人の名前・住所から、症状、診断方法、感染原因・経路など、非常に細かく記入しなければなりません。
こうしたことが現場の業務を圧迫する一因になっているとして、厚労省は9日、報告すべき項目の数を減らすと自治体に対して通知を出しました。
■検査数・陽性率の公表を停止した神奈川県
現場の対応が追いついていないことによる影響が、陽性率に出始めています。神奈川県では7日時点で、1週間平均の陽性率が84.93%と異常に高い数字となりました。100人検査したら、85人が陽性というすさまじい数字です。
8日、県はウェブサイトに「検査数の把握が困難となっていますので、いったん、検査数・陽性率の公表を停止します」との通知を出し、陽性率のグラフが表示されなくなりました。
感染者数だけでなく、検査数の把握も追いついていないことには、理由がいくつかあります。
陽性率をどう計算しているかというと、陽性者数を検査数で割った数字です。分子は、その日に報告された陽性者数の合計です。分母の検査数は、症状があり、濃厚接触者が公費で受ける「行政検査」と、陰性証明をもらうため症状なしの人などが受ける「自費検査」の両方の検査数を足し合わせたものが分母となります。
ただ、医療機関などの業務ひっ迫によって、検査数の報告が遅れ、分母の数が実態よりも少なくなっているということです。
■神奈川県担当者「実態とは違う陽性率を公表し続けるのは違う」
さらに、最近では、検査をせずに症状だけで診断する「みなし陽性」のケースもあります。この場合、検査していないので、検査数は増えないのに、陽性者数だけが増えるということで、必然的に陽性率が高めに出てしまうことになります。
神奈川県の担当者は「オミクロン株の拡大で、医療現場がひっ迫し、検査数の報告などは後回しにならざるを得ない。実態と違う陽性率を公表し続けるのは違うと感じる」と話しています。「実態を正しく写し出していない」ということが指摘されてきています。
■高齢者の感染が増加…重症者や入院者数も
一方、増えているのは高齢者の感染です。しかも、注意すべきは感染者数だけではなく、重症者や入院者数も増えている点です。
東京都の入院患者数を年齢別にすると、70歳以上が1月から急増しています。800人ほどだった第5波のピークをはるかに上回り、1800人を超えています。
脇田座長は、重症者・死亡者の増加を食い止めるためには「高齢者の感染拡大を、いかに抑止していくかが重要だ」と強調していました。
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オミクロン株拡大のピークアウトは、誰もが待ち望んでいることだと思います。感染者の増加の度合いが少し収まっていますが、まだ、ほとんどの地域では増加傾向にあります。もうしばらく、感染対策を続けていくことが必要です。
(2022年2月10日午後4時半ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)