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校則は何のために?考えることが社会参加

2021年8月3日 18:06
校則は何のために?考えることが社会参加

理不尽とも思える校則も多々あるが、そもそも校則はなぜ必要なのか?また、校則を変えたいと思った時にどう行動すればいいのか。認定NPO法人カタリバで、生徒が主体となって校則を見直す支援を行う、古野香織さん中心に議論した。

■文部科学省も指摘する“ブラック校則”

校則に対する様々な意見が番組に寄せられ、

「髪染めの校則がないのに『前の髪色のほうが良かったよ』と遠回しに髪色を否定される」
「地毛なのに髪色を注意される」
「どれだけ寒くてもブレザーの上にコートを着てはだめと言われる」

など、理不尽とも思えるようなエピソードが並んだ。こういった“ブラック校則”とも呼ばれる行き過ぎた校則に対して文部科学省も問題視しており、校則が社会や時代の現状に即しているか積極的に見直すように指示も出されている。

「校則に基づき指導を行う場合は一人ひとりの児童生徒に応じて適切な指導を行うとともに、児童・生徒の内面的な自覚を促し、校則を自分のものとして捉え自主的に守るように指導を行っていくことが重要」

「教員がいたずらに規則にとらわれて規則を守らせることのみの指導になっていないか注意を払う必要がある」

といった点が言及されている。

この内容を受けて、番組コンダクターの辻愛沙子さんは「自主的に考える」重要性を指摘する。

「自主的という言葉がすごく大事だと思います。生徒が、自分たちで責任を持って考えていく。自由とは何か、自分らしさとは何か、大人になっても考えるきっかけはなかなかありません。そういうことを、初めて考えるきっかけになるのが校則かもしれませんし、本来あってほしい姿だなと思いました」

ゲストの筑波大学附属坂戸高校生徒会長・塩川遥香さんは「時代に合わせて変わり続けること」という言葉に共感する。

「私たちの学校では、制服の校則見直しプロジェクトを立ち上げるとき『時代にピントを合わせる』というキャッチコピーを作成しました。文科省の考え方と同じで、絶えず新しいものを取り入れることがものすごく大事だと思いますね」

■校則はそもそも必要なのか?

校則の見直しの話題が続くが、そもそもなぜ校則があるのか。教師・弁護士であり、学校で生徒指導を担当する神内聡さんに事前に聞いたところ「特に“荒れた学校”では生徒の自立心が不足していることもあり、トラブルを回避するためにある程度厳しい校則が必要なケースもある」という。また、昔に比べて、本来家庭で教えるべきことを学校で指導しなければならなくなっていることも、一つの要因だという。

厳しい校則に対して、守らないという選択をする生徒もいるかもしれない。しかし、守らないのではなく、「校則は自分たちで変えることができると知ってほしい」と古野さんは話す。

「先生に言われたことそのまま受け取らないでいいと思う高校生もいると思いますが、ゲストのお二人のように、校則は自分たちで変えていけます。周りの生徒や先生と話しながら、少しずつ変えていくことができる。この選択肢を、高校生の皆さんに知っていただきたいです」

■校則を変える4つのプロセス

では、実際にどうしたら校則は変えられるのだろうか?古野さんは、4つのポイントに分けて説明する。

1つ目は「友達同士や関係の近い先生と話す」こと。

「自分が抱えるモヤモヤを友達同士で話すことが始めやすいと思います。また、部活の顧問やクラスの担任の先生など、関係性の近い先生に学校のルールをどう思っているか、ぶっちゃけのところを聞くのも良いと思います。私たちもいろんな先生方と話しますが、生徒がいないところで話を聞くと、厳しく指導している先生でも、その内容に疑問に思っている先生もいます。指導するという立場なだけで、思いを率直に聞いてみると、仲間になってくれる先生もいると思います」

2つ目は「アンケートで実態調査を行い『みんなが幸せになるルール』を意識する」こと。

「次に、他の人がどう思ってるかを聞くことは大事と思います。ポイントは、自分や友達だけでなく、全校生徒や先生方、保護者も幸せになるルールはどういうものかを考えて調査することです。例えば、ゲームセンターには保護者同伴でなければ入れないという校則が定められていた学校の場合、厳しいと感じる生徒は多いですが、なんでその校則があるか考えると、保護者の心配があります。みんなが幸せなルールを作るために、保護者や先生たちの思いを聞くような調査をすることが大事と思います」

3つ目は「『どういう生徒が理想なのか?』自分たちで示す」こと。

「今日のお二人のゲストの様に、この学校の生徒としての行動指針、何を大切にしていくかを積極的に示すことが大事と思います。校則を見直しながら、自分たちで行動指針を作り、それに基づいて行動すると言えると、先生の安心感にもつながると思います」

4つ目は「変えたら終わりではなく点検・見直しをする」こと。

「これが一番大事かもしれませんが、校則を変えたら終わりではなく、いかに継続的に対話する場を作れるか。校則を変えて何かが起きたとき、もう一度議論の場に戻して、校則や運用方法について先生と生徒で一緒に点検していくことがすごく大切だと思います」

■高校生らしさとは、責任を持って自分で意思決定をすること

今回の放送のキーワード“高校生らしさ”。この言葉を、古野さんはどう捉えているのだろうか。

「高校生は、『自分の行動に責任を持って自分で意思決定をしていける存在』であるべきだと感じます。18歳で選挙に行けるようになり、世の中の意思決定や社会に参加するときに、自分で考えて、疑問に思ったことを発信して、行動する。高校生らしいというのは、そうやって意思決定に参加していける人だということが、世の中に伝わったらいいと思います」

校則の見直しは、自分の頭で考え意見が社会に反映される体験を、高校生の間にできる取り組みだと古野さんは続ける。高校生当事者であり、都立北園高校前生徒会長の安達晴野さんもその点に同意する。

「自分たちだけの問題じゃなくて、もっと日本社会全体で議論すべき内容なんだなと思いました。考えていくことが、高校生にとっても政治参加や民主主義の勉強になるとも思いました。ただ、“高校生らしさ”という言葉がいろいろ出てきましたが、高校や地域、年代によっても全然変わると思います。“高校生らしさ”と一括りにしようとせずに、“自分らしさ”でもいいんじゃないかと感じました」


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この記事は、2021年6月25日に配信された「Update the world #6 校則って、なんなん?」をもとに制作しました。
 
■「Update the world」とは日本テレビ「news zero」が取り組むオンライン配信番組。SDGsを羅針盤に、社会の価値観をアップデートするキッカケを、みなさんとともに考えていきます。
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