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国産ワクチンの開発進む “自己増殖”とは

2021年9月21日 18:21
国産ワクチンの開発進む “自己増殖”とは

日本でも、3回目の新型コロナウイルスワクチン接種の是非が議論されています。その中、国産ワクチンの開発も急ピッチで進んでいます。副反応などが少ないとされる次世代ワクチンなど、いま注目の国産ワクチンについて、詳しく説明します。

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■気になるワクチン確保状況…国産も開発進む

最新の感染状況について、東京では20日、新たに302人の感染が確認されました。300人台となるのは7月5日以来、およそ2か月半ぶりとなります。

このような感染者の減少傾向の背景にあるのがワクチン接種ですが、現在、厚生労働省の専門部会で3回目の接種、いわゆる「ブースター接種」について本格的な検討が行われています。

そうなると、気になるのはワクチンの確保です。確保状況をみていくと、いずれも来年初頭からの供給で、モデルナと5000万回で契約、ファイザーとは1億2000万回で協議中となっています。また、現在開発中のノババックスとは、開発に成功した場合、来年初頭から1億5000万回の供給となっています。

まだ、接種したくても、できていない人もいます。これは安心材料として、とらえていいのでしょうか。ただ、今年も、世界中でワクチンの争奪戦になりましたし、新たな変異株の出現など、なかなか先の見通しがわからないです。長期的に安定してワクチンを確保することは、大きな課題です。

そこで、開発が急がれているのが、国産ワクチンです。現状をまとめますと、第一三共とKMバイオロジクスは、年内にも最終段階の試験の開始を目指しています。さらに、塩野義製薬などが臨床試験を開始しています。

日本はワクチンの開発では現在のところ、後れをとっています。今後、日本が貢献できる分野もありそうです。

■ベンチャーが開発中“自己増殖するワクチン”とは

いま、注目の新技術を使った「次世代ワクチン」の開発が進んでいます。

それが、日本の創薬ベンチャー、VLPセラピューティクス・ジャパンが開発中の「レプリコンワクチン」です。レプリカという言葉は、複製とか模写という意味です。レプリコンワクチンは体内で自ら増える、自己増殖するワクチンということです。それが最大の特徴で、ファイザーやモデルナのワクチンの「進化版」とも言われています。

ファイザーなどのワクチンは、ウイルスが細胞にくっつくスパイクと呼ばれる部分の遺伝子、つまり設計図を注射して、体内でスパイクを作り出し、ウイルスが入ってきたと身体に錯覚させて、ウイルスと闘うための抗体をあらかじめ作っておくものです。

レプリコンワクチンも、基本的な仕組みは同じです。何が違うかというと、ワクチンの中に特殊な物質が入っていて、体内で遺伝子がどんどん自己増殖します。遺伝子が増殖すると、スパイクもたくさん作られるので、それに対応して抗体もたくさん作られるわけです。

そのため、レプリコンワクチンは、ファイザーなどのワクチンよりも接種する量が少なくて済むということです。例えば、いまファイザーは1回30マイクログラム、モデルナは100マイクログラムの量を打っていますが、レプリコンワクチンは1回に打つ量がその「10分の1から100分の1」で済むことが期待されています。どれだけ少ないかというと、日本人1億2000万人分のワクチンの量が、たったの127グラムです。

まず、1回の投与量が少ないので、副反応も少なく抑えられることが期待されています。また、少量で済むので、ワクチンを素早く生産できます。さらに「さまざまな変異株に対しても対応できるように設計している」としています。来月には臨床試験を始める予定です。

開発した企業の赤畑代表は、次のように意気込みを語っています。

VLPセラピューティクス・ジャパン 赤畑渉代表
「こういったテクノロジーで、安く安全で効果のあるものが、日本国内だけでなく世界の人たちにより平等な形で届けば、我々の会社を含めて、日本の国民の皆さまに喜んでくれるんじゃないかと」

■国産ワクチンの実用化は…「特例承認の条件緩和」検討進む

実際、国産ワクチンはいつごろ、実用化されそうなのでしょうか。実用化のためにまず必要なのが承認です。現在、厚労省などは、国産ワクチンの開発を後押しするために「特例承認の条件を緩和できないか」検討を進めています。

具体的には本来、数万人規模で行う臨床試験を、数千人規模に縮小できないかということを検討しています。

なぜ縮小するかというと、本来の臨床試験は、ワクチンを打った人と打たない人を比較して有効性や安全性を確認するものです。いまこれだけワクチンが世界中で普及する中で、ワクチンを打たない人を一定数生んでしまうことに倫理的な課題があると言われています。

そのため、臨床試験の規模を縮小するかわりに、すでに使われているファイザーのワクチンなどの有効性のデータと比較して、承認することを検討しているということです。

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世界中の企業が日々しのぎを削るワクチン開発で、日本は大きく出遅れてしまいましたが、今回紹介したような国産ワクチンが実用化されれば、日本国内での供給はぐっと安定し見通しが立てやすくなります。ウィズコロナの時代の風景が大きく変わることを期待したいです。

(2021年9月21日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)