日大理事を逮捕…理事長に“かわいがられ”
日本大学本部などに家宅捜索が入ってから1か月。日本大学の付属病院の建て替え工事をめぐり東京地検特捜部は大学理事の男ら2人を背任の疑いで逮捕しました。逮捕された理事は3年前に起きたアメリカンフットボール部のタックル問題で、口封じを図るような発言をしたとされていました。
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東京地検特捜部による家宅捜索は、日本大学のトップ・田中理事長の自宅にまで及びました。国内最大規模の大学をゆるがす、今回の事態。
7日、東京地検特捜部に逮捕されたのは、日本大学で理事を務める井ノ口忠男容疑者と大阪市の医療法人グループの前理事長、籔本雅巳容疑者です。逮捕容疑は背任の疑いです。
特捜部によりますと、2人は日本大学医学部付属板橋病院の建て替え工事をめぐり、大学側の資金2億2000万円を外部に流出させ、大学側に損害を与えた疑いがもたれています。
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その日本大学では、3年前、アメリカンフットボール部の悪質タックル問題が発生。その最終報告書で、タックルを行った選手に対し口封じを図るような発言をしたとされたのが、井ノ口容疑者でした。
日本大学HPより 最終報告書
「(口封じに同意すれば)私が、大学はもちろん、一生面倒をみる。ただ、そうでなかったときには、日大が総力を挙げて、潰しにいく」
井ノ口容疑者はこの問題で大学の理事を辞任しました。去年9月、再び理事に復帰していました。井ノ口容疑者の知人は─。
井ノ口容疑者の知人
「(田中理事長が)かわいがっているから(井ノ口容疑者は)理事になっている。戻りたいといって戻れるものではないから」
田中理事長にかわいがられていたという井ノ口容疑者。その井ノ口容疑者らが関与したとされるカネの流れは、巧妙なものでした。
付属病院の建て替え工事をめぐり、都内の設計会社に対し、着手金としておよそ7億3000万円を振り込んだという日本大学。関係者によりますとその後、井ノ口容疑者の指示で2億2000万円が籔本容疑者側の会社へと流出。
その後、井ノ口容疑者側に6600万円が送金された、2500万円が最終的に井ノ口容疑者本人にわたる、つまり日本大学の資金が事実上、還流され、井ノ口容疑者のもとに戻ってきた疑いがあるのです。
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また、問題となった契約に向けた手続きは、井ノ口容疑者も役員を務める、大学の完全子会社「日本大学事業部」が担当。井ノ口容疑者はこの会社の実権を握っていたといいます。
最近の実情を知る井ノ口容疑者の知人は─。
井ノ口容疑者の知人
「一応、株式会社日本大学(事業部)っていっても、“家庭内工業”で井ノ口が全部仕切って、他の人は口を挟めなかった」
特捜部の任意の事情聴取に対し、事件への関与を否定したという井ノ口容疑者。特捜部は2人の取り調べを本格化し、不透明な資金の流れの実態解明に乗り出すとみられます。