【NNNドキュメント】産科医がいない… 妊婦が"長距離移動" お産を巡る地域の医療課題 NNNセレクション
石川県・奥能登地域には産科医が1人しかおらず、お産のため長距離の移動が必要な妊婦たちがいる。自宅から遠く離れた病院で無事に出産を迎えられるか不安を抱える妊娠7か月の女性。その奥能登で起きた新生児死亡事故。お産を巡る体制強化に向け行政が動き出した。
◇◇◇
遠距離出産。ふるさとで、命をつなぐこと。
石川県の北部、能登半島にある能登町。この町に産科医はいません。
「家族と離れずにお産がしたい」という山本真弓さん(当時36)。
真弓さん
「娘もいるので、できればギリギリまで一緒にいてと思うんですけど、でもやっぱり(病院が)ちょっと遠いし…そこは不安やし」
実家も近く、子育てがしやすい。生まれ育った“能登”で産みたい。この日、真弓さんは検査のため、朝早くから支度をしていました。
夫・樹さん
「自分も行ってあげたいなというのはありますけど、ちょっと(役場の)仕事の関係もあるんで…心配です」
車を運転して向かうのは、1時間以上離れた病院です。
真弓さん
「(樹さんは)ずっと心配して、よほどじゃない限り自分が送りたいって言ってくれているんですけど」
七尾市の恵寿総合病院に到着。産科医が複数いて、安心感があります。
医師
「すべて心臓が正常な形で正常に働いていますね。だから何も心配いらない。今日は送ってきてもらったんですか?」
真弓さん
「自分で…」
医師
「自分でしょ? 車の運転って、ものすごく腹筋を使うのでね。急ブレーキでもかけてシートベルトが強く締まると、それで赤ちゃんがダメージを受けたりっていうようなことも、実際にあったりするので」
帰りも1時間かけて運転。妊婦にとって、長距離の運転は負担です。
分娩を取り扱う全国の医療機関はこの25年程で半減し、2020年には2070か所に。出産できる場所は、どんどん減っています。石川県でも、お産のリスクが高まっていました。
市立輪島病院の会見・2022年5月
「ご遺族に対しまして取り返しのつかないことを引き起こしてしまいました」
市立輪島病院で新生児が死亡する医療事故が発生。県では自治体や医療機関などで構成される「赤ちゃん協議会」を設置。奥能登のお産を支える議論が始まりました。2024年4月からは、医師の時間外労働に上限が設けられ、さらなる人手不足も懸念されているのです。
9月。臨月を迎えた真弓さん。
真弓さん
「あと10日ほど。予定日21日なんで。楽しみでもあり、ちゃんと病院までたどりつけるのかという不安もあり…」
真弓さん
「久しぶりの健診です」
夫・樹さん
「そうやね」
真弓さん
「3週間ぶり」
『来週には生まれているかも』。医師からは、そう言われました。
真弓さん
「ここ誰おるん?」
長女・結心ちゃん
「おいも(おとうと+いもうと)。そーっと」
真弓さん
「そーっとやね」
健診から4日後の深夜、その時が訪れました。
真弓さん
「1時半までには(病院に)着くと思います。着替えて、お母さんに結心ちゃんお願いして」
自宅を出て1時間あまり。午前0時48分。七尾市の病院に到着。
夫・樹さん
「頑張って」
感染対策のため、夫・樹さんはお産に立ち会えません。
助産師
「ゆっくり、ふーって(息)吐けます? 鼻から大きく吸って」
医師
「生まれるよ、生まれるよ」
午前2時24分。3456グラムの男の子の誕生です。
真弓さん
「生まれてきて声を聞いたらほっとして…よかったと思う」
遠距離出産について医師は。
医師
「言ってみればギリギリですよね、分娩施設(まで)が1時間を超えるっていうのは。やっぱり危ないなって」
能登地区の救急救命士たちが学んでいたのは、分娩に関する知識と技術。能登のお産を守るため、妊婦と病院とをつなぐ救急隊員たちとの連携は重要です。
産科医がいない。
夫・樹さん
「これからは4人一緒。パパとママと結心と暁斗ね、オッケー?」
このまま続けば、地域にどんな未来が待っているのでしょうか。
2023年10月8日放送 NNNドキュメント’23『遠距離出産 “能登で産みたい”』をダイジェスト版にしました。
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遠距離出産。ふるさとで、命をつなぐこと。
石川県の北部、能登半島にある能登町。この町に産科医はいません。
「家族と離れずにお産がしたい」という山本真弓さん(当時36)。
真弓さん
「娘もいるので、できればギリギリまで一緒にいてと思うんですけど、でもやっぱり(病院が)ちょっと遠いし…そこは不安やし」
実家も近く、子育てがしやすい。生まれ育った“能登”で産みたい。この日、真弓さんは検査のため、朝早くから支度をしていました。
夫・樹さん
「自分も行ってあげたいなというのはありますけど、ちょっと(役場の)仕事の関係もあるんで…心配です」
車を運転して向かうのは、1時間以上離れた病院です。
真弓さん
「(樹さんは)ずっと心配して、よほどじゃない限り自分が送りたいって言ってくれているんですけど」
七尾市の恵寿総合病院に到着。産科医が複数いて、安心感があります。
医師
「すべて心臓が正常な形で正常に働いていますね。だから何も心配いらない。今日は送ってきてもらったんですか?」
真弓さん
「自分で…」
医師
「自分でしょ? 車の運転って、ものすごく腹筋を使うのでね。急ブレーキでもかけてシートベルトが強く締まると、それで赤ちゃんがダメージを受けたりっていうようなことも、実際にあったりするので」
帰りも1時間かけて運転。妊婦にとって、長距離の運転は負担です。
分娩を取り扱う全国の医療機関はこの25年程で半減し、2020年には2070か所に。出産できる場所は、どんどん減っています。石川県でも、お産のリスクが高まっていました。
市立輪島病院の会見・2022年5月
「ご遺族に対しまして取り返しのつかないことを引き起こしてしまいました」
市立輪島病院で新生児が死亡する医療事故が発生。県では自治体や医療機関などで構成される「赤ちゃん協議会」を設置。奥能登のお産を支える議論が始まりました。2024年4月からは、医師の時間外労働に上限が設けられ、さらなる人手不足も懸念されているのです。
9月。臨月を迎えた真弓さん。
真弓さん
「あと10日ほど。予定日21日なんで。楽しみでもあり、ちゃんと病院までたどりつけるのかという不安もあり…」
真弓さん
「久しぶりの健診です」
夫・樹さん
「そうやね」
真弓さん
「3週間ぶり」
『来週には生まれているかも』。医師からは、そう言われました。
真弓さん
「ここ誰おるん?」
長女・結心ちゃん
「おいも(おとうと+いもうと)。そーっと」
真弓さん
「そーっとやね」
健診から4日後の深夜、その時が訪れました。
真弓さん
「1時半までには(病院に)着くと思います。着替えて、お母さんに結心ちゃんお願いして」
自宅を出て1時間あまり。午前0時48分。七尾市の病院に到着。
夫・樹さん
「頑張って」
感染対策のため、夫・樹さんはお産に立ち会えません。
助産師
「ゆっくり、ふーって(息)吐けます? 鼻から大きく吸って」
医師
「生まれるよ、生まれるよ」
午前2時24分。3456グラムの男の子の誕生です。
真弓さん
「生まれてきて声を聞いたらほっとして…よかったと思う」
遠距離出産について医師は。
医師
「言ってみればギリギリですよね、分娩施設(まで)が1時間を超えるっていうのは。やっぱり危ないなって」
能登地区の救急救命士たちが学んでいたのは、分娩に関する知識と技術。能登のお産を守るため、妊婦と病院とをつなぐ救急隊員たちとの連携は重要です。
産科医がいない。
夫・樹さん
「これからは4人一緒。パパとママと結心と暁斗ね、オッケー?」
このまま続けば、地域にどんな未来が待っているのでしょうか。
2023年10月8日放送 NNNドキュメント’23『遠距離出産 “能登で産みたい”』をダイジェスト版にしました。