【解説】「スマホ認知症」増加? 絶えず膨大な情報「脳過労」に… 5分でも“ぼんやり”時間を
スマートフォンの使いすぎで脳の働きが低下する「スマホ認知症」。専門家は「スマホ認知症の患者が増えている」と警鐘を鳴らしています。
●スマホ依存をチェック
●脳が“ごみ屋敷”に
●多い年代と対策
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
「スマホ認知症」とは、スマートフォンを長時間利用することで、脳への負担が増えて認知機能が低下してしまうことをいうものです。その疑いがある患者の特徴には、次のようなものがあります。
「人や物の名前が出てこなくなった」
「簡単な計算さえできなくなった」
「料理が手際よく作れなくなった」
岐阜県で認知症などの患者を診療する「おくむらメモリークリニック」の理事長で、脳神経外科医の奥村歩医師によると、実際、スマホ認知症の患者が増えているといいます。患者の特徴としては、MRIなどの検査では異常がみられないものの、認知機能テストなどを使って調べていくと、脳機能の低下が見られるそうです。
つまり、脳細胞が壊れることに起因するアルツハイマーなどの認知症とは違いますが、“認知症と同じような症状が見られる”ということです。
スマホ認知症のリスクがあるかどうか、スマホへの依存度を確認するための14項目のチェックリストがあります。
“スマホ依存”チェックリスト…奥村歩医師著「スマホ脳の処方箋」より
●無意識にスマホを触る時間がここ数年で明らかに増加
●すぐにスマホを手にとれる状態にしている
●目的もなく無意識にメールなどをチェックしている
●疑問が浮かぶとすぐ検索
●文章が浮かばないと検索の例文を写す
●少しでも時間が空くと触る
●「覚えておかなきゃ」と写真撮影
●家に忘れ…不安で仕方ない
●毎晩就寝直前まで操作
●昼夜問わずメールなど返信
●画面を1日平均2時間以上見る
●着信音・バイブの「空耳」
●スマホ以外で調べ物をしない
●飲食店選びにネットの評判重視
4つ以上該当する場合、スマホ依存の疑いがあるということです。
奥村医師のクリニックの「もの忘れ外来」では、以前は高齢の患者がほとんどでしたが、ここ10年ほどで30代~50代の若年層の患者が増えているということです。
スマホの脳への影響について、奥村医師は「スマホ依存による脳過労が起きているのでは」と指摘しています。スマホから文字や映像など膨大な情報を絶えず取り入れることで、脳が疲労している状態になるということです。
では、なぜ脳が疲労するのでしょうか。
脳の情報処理には、「入力」「整理」「出力」の3段階があります。スマホの長時間利用で、このうち「整理」に支障をきたします。膨大な情報によって脳が疲れて整理ができず、まるで“ごみ屋敷”のような状態になり、必要な時に肝心な情報が取り出せなくなるそうです。
この状態になると、さまざまな症状を引き起こします。
認知機能の低下のほかにも、感情のコントロールの低下や集中力・意欲の低下、イライラしやすいなどの症状も出てきます。さらに自律神経が乱れて、慢性的な疲れや頭痛、腹痛などの症状もあらわれるということです。
内閣府の「令和3年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、10歳から17歳のインターネット利用時間は、「1日平均4時間24分」でした。これは2021年度の調査結果ですが、前年よりも約1時間増えていました。
そして、「何を使ってインターネットを利用しているか」を聞いたところ、約8割が「スマホ」と答えています。奥村医師は「自分の子どもに『スマホを使いすぎだ』とうるさく言う前に、大人がスマホを使う時間を制限するべき」と耳が痛い指摘をしています。
健康な脳を維持するために、必要なことをお伝えします。まず、5分でもいいので、スマホを触らず“ぼんやり”する時間をつくりましょう。情報にさらされずにぼんやりすることで、脳機能の回復につながるそうです。さらに散歩や皿洗いなど、一定のリズムで体を動かすことも脳機能の活性化に役立つということです。
奥村医師は「スマホは脳の“暴飲暴食”につながりやすい側面がある。食事に気を使うのと同じように、スマホの使い方を意識してほしい」と話していました。
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幅広い世代に浸透しているスマートフォンは、デジタル社会の中で、もはや生活に欠かせない存在になっています。ただ、想像以上に私たちの脳は疲れています。奥村医師は、「脳の神経細胞を疲れたまま放置すると、本当に認知症になってしまう可能性もある」と指摘しています。5分でもスマホから離れるなど、今のうちにできることから少しずつ改善していきましょう。
(2023年1月16日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)