アカウミガメに“異変” 海水温“上昇”で北海道に 産卵場所も“激減”で…
絶滅危惧種に指定されている「アカウミガメ」が、北海道で相次いで確認されました。この時期の水温としては異例の事態です。一方、愛知県ではアカウミガメの産卵が激減しています。
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5日に漁船で撮影された写真にうつっていたのは、網にかかった絶滅危惧種に指定されている「アカウミガメ」です。このアカウミガメが発見されたのは、北海道登別市の10キロの沖合です。専門家によると、この時期に北海道周辺で確認されるのは珍しいことだといいます。発見した刺し網漁をする漁師の橋本和也さんに聞きました。
漁でアカウミガメを発見した橋本和也さん
「網を上げに行くたびに2~3匹とかかっていましたけど、一番多いときは9匹。(漁師を)34年やってきて見たことがなかったので、ビックリしましたね」
9月に初めて確認して以降、多い日には1日に9匹も網にかかったというアカウミガメ。
「異例」ともいえる事態に、専門家は、原因の1つに「海水温」の上昇があると指摘します。
日本ウミガメ協議会会長 松沢慶将さん
「水温がそこにいても、凍えないくらい十分に温かい。表面水温をみてみますと、ちょっと水温が高めかなというふうに出ています」
日本海側を流れる「対馬暖流」の大部分は津軽海峡を通り、太平洋側へ流れます。ところが、暖流の勢力が例年より強いため、北海道付近の海水温が例年より高く維持されているとみられています。
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相次ぐアカウミガメをめぐる異変は、産卵場所の1つ、愛知・豊橋市の海岸でも起きていました。調査員が砂を掘り返すと、ふ化しなかったアカウミガメの卵がありました。
この場所では産卵した約2か月後の9月下旬ごろにはふ化を終えているはずですが、卵の中で死んでしまった子ガメがいました。その原因は、気温や雨が卵の成長に悪影響を与えた可能性があると指摘します。
調査員 伴慎太郎さん
「一番は温度だと思う。卵がふ化する適温というのは24℃から33℃。それより高かったり低かったりすると、胚は死ぬと言われている」
そして、異変は他にもありました。今年7月に確認されたのは、産卵のため穴を掘りながら、卵を産み落とさなかったウミガメです。
豊橋市の記録によると、この10年間で産卵場所の数は約20分の1まで減少しました。
日本ウミガメ協議会会長 松沢慶将さん
「ウミガメの産卵・上陸に一番影響するのは、海岸の光です。ウミガメのメスは、明るい砂浜を基本的に避けます」
専門家は、夜間に人が海岸でたき火などをすることによって、アカウミガメの上陸を妨げていると指摘します。
日本ウミガメ協議会会長 松沢慶将さん
「人の海岸利用と生物の共存をどうしたらやっていけるのか。うまく調整できるといい」
豊橋市では市民にウミガメの実態を知ってもらおうと、定期的に観察会を開いています。
アカウミガメの絶滅を防ぐため、安心して産卵・ふ化できる環境の確保が必要となっています。