小学生が生成AIをツールとして活用――学びの充実につなげる狙いは
■小学校でも利用広がる生成AI
千葉県・印西市立原山小学校では小学校6年生が生成AIを自分たちで使いながら、その特性や使う時の注意点について、実践的に学んでいます。
この学校は2023年度まで文部科学省の授業時数特例校、2024年度からは教育課程特例校の指定を受けていて、「みんなのコード」という児童生徒向けの生成AIの提供などを行っている団体と連携し、高学年の児童を対象に、生成AIの特性や使う時の注意点などについての授業を行っています。
この日行われた授業では、グループに分かれ、「学校の昼食は給食と弁当どちらがいいか」というテーマで、生成AIを活用し、相手を説得する文章を作るという課題が出されました。
▼課題の条件
・制限時間20分
・生成AIを活用し、自分たちの主張を添削してもらうこと
・主張を裏付けるデータをつけること
あるグループでは、「給食」のメリットについて「親の負担の軽減」や「栄養バランスの確保」などと全員で意見を出し合ったあと、意見をまとめて、AIに添削してもらう係と、裏付けのデータをネット検索する係に分かれ、より説得力のある文章を作成していました。
グループワークの振り返りでは、「グループでまとめた意見をAIに聞くと、ほかの色々な意見も出てきてまとめづらかった」といった意見や「生成AIの回答と、ウェブ検索で調べたことで、どっちが正確かなど比較した」など、生成AIの使い方の工夫や、難しかった点について共有していました。
■勉強にいかすための生成AI
生成AIの利用については、個人情報の漏えいや危険な質問をするリスクなどが指摘されていますが、この小学校で使われている生成AIは、入力した対話ログを先生が確認できる機能があるほか、対話内容がAIの学習データに利用されないシステムになっているといいます。
現在の6年生は、去年から生成AIの特性について学んでいることから、学校は6年生に対し、このAIを授業や家庭で自由に使ってよいと許可しています。
生成AIの利用については、生成された答えをうのみにするなど、思考力や創造性の低下が懸念されていますが、日常的に生成AIを使っている児童からは「授業や自分の勉強に生かすためにAIを活用することが重要」という声があがっていました。
▼小学校6年生
「AIに答えだけを教えてもらうと、その場しのぎで終わるには終わるけど、その後のテストで解き方がわからなくなって、点数が取れない。」「答えを教えてもらうだけではなくて、ちゃんとどう解くのかを理解して、問題を解くのが大事だと思っています」
さらに、ほかの児童は1年を通じて繰り返し生成AIを使うことによって、使い方に変化があったといいます。
▼小学校6年生
「最初はわからないことを聞くことが多かったけど、今は自分が最初考えてから、わからないことをまとめて聞くようにしています」
また、生成AIを利用するときに気をつけていることについて聞くと……
「出してきた回答をうのみにせず、必ず確認して自分でもすること」「あとは例えば文章を書くときに、最初から生成AIに書いてもらうと自分の意見が書けなくなってしまうので、まずは自分で書いて、それを添削してもらうようにしてます」
■“生成AIっぽさ”に気づく感覚
小学校段階での生成AIの利用については、生成された答えの丸写しや悪用など、思考力や創造性の低下が懸念がある一方で、特性を理解し、使う回数を重ねることで、いくつかメリットもあるといいます。
和田先生
「生成AIにどんどん質問をして、対話を重ねる中で、こどもたちは生成AIが作成してきた文章の”AIっぽさ”に気づける感覚が身についているように感じます」「実際に僕が生成AIで作成した文章に対して、先生それAIでしょと指摘されたこともありました」
さらに学校で使うメリットとして、友達同士で使い方のコツや生成AIを活用できる場面などについて共有し、使い方の幅が広がっているといいます。
学校によって取り扱いに差が出始めている生成AI。文部科学省では現在、生成AIの教育現場での利用についてガイドラインの改訂に向けた議論を開始していて、今年の冬頃に更新される見通しとなっています。
今後、こどもたちが向き合っていくことになる生成AIについて、正しく性質を理解し、ツールとして使いこなせるよう、こどもたちにどう学びの場を提供するか問われています。