【解説】オミクロン株対策“新方針”検査なしで受診も?「検査キット」不足の懸念は…
新型コロナウイルスのオミクロン株による感染急拡大を受け、医療現場の負担は増す一方です。厚生労働省は「濃厚接触者に発熱などの症状があれば、検査せず医師の判断で感染を診断できる」とする新たな対策を発表しました。現場の負担軽減にどうつながるのか、詳しく解説します。
25日に決定する予定のまん延防止措置について、首都圏や沖縄、愛知など16の都県に適用されているのに加え、政府は北海道や大阪、福岡など18道府県にも適用する方針です。
これで適用される自治体は、34都道府県になります。
追加の18道府県の期間は、27日から来月20日までとなります。すでに適用されている広島、山口、沖縄の3県についても、今月末、31日までの期限を来月20日まで延長する方針です。
今後の感染状況によっては、医療提供体制にさらに大きな負荷が生じかねないということから、このように判断されたということです。
■外来診療に殺到減らす…後藤厚労大臣が“新方針”
オミクロン株は、感染のスピードが速い特徴があるので、すばやい対応が求められます。
25日、政府の新型コロナ対策分科会終了後、尾身会長は次のように話しました。
新型コロナ対策分科会 尾身茂会長
「有効な検査のやり方とか、たくさんの軽症者も出ますから、どうして医療を支えるか、社会機能を支えるか、濃厚接触者などどうするか――基本的には、相手が(オミクロン株に)変われば必要な対策が変わってきますよね。すばやく対応することが大事だと思います」
感染者がこのままのペースで増加し続ければ、多くの患者が受診し、外来診療に影響が出てくるということになります。現に、発熱外来で「相談の電話がつながりにくい」「予約が取れない」といった状況が生じている地域もあります。
このため、後藤厚労大臣は外来への患者の殺到を少しでも減らすため、「自治体の判断で外来診療の在り方見直し」ができるようにする方針を示しました。
■“重症化リスク低い人”自ら検査し受診に?
では、どのように見直すのか。2段階に分かれています。
まずは第1段階について、診療や検査を受けるのに時間がかかる場合は、次の3つの方針があります。
1.発熱などの症状があっても「重症化リスクが低い人」は「抗原検査キット」などを使って自ら検査した上で受診
重症化リスクの低い人とは、例えば、「40歳未満で基礎疾患・肥満などがなく、ワクチンを2回接種済みの人」などが想定されています。
また、本人が希望する場合や症状が重い場合は、検査前でも受診は可能ですし、重症化リスクが高い人、つまり、高齢者や基礎疾患がある人は、これまで通り「受診できる」としています。
さらに、自分で行った検査結果が陰性でも、症状が続く場合は、医療機関を受診することになります。
陽性だった場合は、受診時に医師に見せられるように「検査結果をスマホなどで写真を撮っておくといい」ということです。
2.電話やオンラインの診療を積極的に活用することを呼びかけ
3.感染者と同居などする濃厚接触者に何らかの症状が出た場合は、検査を受けなくても医師の判断で「感染した」と診断できるようにする
■医療ひっ迫想定の場合…自ら検査し“健康観察”も
さらに第2段階、外来医療のひっ迫が想定される場合です。
症状が軽く、若くて持病などもない重症化リスクが低い人には、医療機関を受診せずに、自分で抗原検査キットなどで検査し、陽性なら自治体が設置する健康フォローアップセンターに自分で連絡し、健康観察を受けられることにしました。
つまり、病院やクリニックをとばして、自分で検査して、健康観察を受け始めてよいということになります。まったく、医師に診てもらわないということになるのではなく、健康フォローアップセンターには医師が常駐しています。
ただ、これもたとえ重症化リスクが低いからといって、受診してはいけない、ということではありません。こういうことも可能だということで、後藤大臣は「国の方針を示したが、各自治体の自主的な判断を認めるものだ」と説明しています。
つまり、感染者や濃厚接触者が増えて、検査・受診を速やかに受けられない状況になってきたという時に、自治体の判断でこのような対策をとってもいい、という方針を国が示したということになります。
■“自ら検査”で「検査キット」不足の懸念…対策は
これについて、岸田総理大臣は24日、「地域によっては検査キットが手に入りづらくなっている、との声も聞いている」とし、現状では460万回分を確保しているといいます。
さらにメーカーに対し、「国が買い取りを保証して、1日80万回分まで供給量の引き上げを要請している」ことを明らかにしました。
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自治体はこれまでのコロナ対応での経験から、地域の事情を一番よくわかっています。そのため、従来の一律のやり方にとらわれず、診断方法でもいろんいろな選択肢をつくって柔軟に対応するのは、ある意味、当然のことです。国はしっかり後押しして、感染拡大を食い止めていくことが重要です。
(2022年1月25日午後4時半ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)