“つながらない権利”で……72.6%が「勤務時間外の連絡拒否したい」 ストレスや「睡眠の質」悪化も【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「つながらない権利…ほしい?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●時間外の連絡で睡眠の質悪化?
●海外で続々導入 日本では?
「つながらない権利はご存じでしょうか? 勤務時間以外に、会社や勤め先からのメールや電話、チャットなどに対応しなくてもいい権利のことです。東京・有楽町で5日、実際どうなのか聞いてみました」
――休日に業務の対応はしていますか?
小売業(30代)
「対応してます。急ぎで返答が必要な内容ですとか、取引先企業からの連絡があったりとか」
建築関係(50代)
「火急の用事でなければ、出なくてもいいかなというのはあります」
医療関係(20代)
「職場からかかってきたらドキッとはするので、いつでも出られるようにはしておくんですけど、あまりかかってくると『うーん』みたいな…」
鈴江奈々アナウンサー
「皆さん、オン・オフをつけたいのだと思います。ただ私もアナウンス部のシフト調整をする立場になると、(例えば)休み明けのシフトについて『急ぎだから連絡したいので、メール見てもらえたら…』と思っちゃうこともあります」
忽滑谷こころアナウンサー
「私の感覚では休みの日にバンバンメールや電話が来る意識はなく、急な用の時は上司の皆さん、いつも『休みの日にごめんね』とものすごく申し訳なさそうな前置きをしてくださるので、ストレスに感じることはあまりないですね」
山崎誠アナウンサー
「アナウンス部でも確かに、電話越しに頭を下げている上司は見たことがあります」
近野解説委員
「私も家で家族と過ごす休日なのにメールを見たり電話をしたりして、嫌がられたり、『どうなのよ』とたしなめられたりすることはあります」
近野解説委員
「日本労働組合総連合会(連合)が去年9月、正社員や派遣社員、パート、フリーランスなど働く人1000人(18~59歳)に行った調査によると、『つながらない権利によって勤務時間外の連絡を拒否できるのであればそうしたい』と答えた人は72.6%でした」
「実際はどうか。勤務時間外に部下や同僚、上司などから業務上の連絡が来ることがある』と答えた人は72.4%でした。このうち週に1日以上あると答えた人は42.4%で、ほぼ毎日という人も10.4%いました。こうした連絡に、62.2%の人がストレスを感じていました」
山崎アナウンサー
「連絡というのは電話、メール、チャットですか?」
近野解説委員
「いろんな形の連絡です」
山崎アナウンサー
「ストレスに感じている方はやっぱり多いんですね」
近野解説委員
「『ごめんごめん』と言いながら、後輩や部下に連絡することはありますよね?」
鈴江アナウンサー
「あります」
近野解説委員
「良くないですね…。街では子どもの立場を含め、こんな声が聞かれました」
小売業(30代)
「(休日の連絡は)ないに越したことはないですけど、早期対応した方が、後々自分の仕事が早く済みますので。(休日の連絡に)受け取り側が返す・返さないは、自分で判断してやった方がいいかなと思います」
建築関係(50代)
「別に連絡ぐらいはいいかなと思うけど、今の若い人たちはオン・オフがハッキリしてるから、そういうの嫌がるのかなというのは感じる」
大学生(10代)
「もしその日に家族で予定がある時に、(親が)急に『仕事あるからごめん』とかはちょっと嫌ですけど…」
鈴江アナウンサー
「夫が常にオンだと、例えば食事など家族団らんの時間も会話がそこで止まるんですよ。そのイライラが家族のみんなに伝染しちゃう、なんてことはありますね」
近野解説委員
「この問題に詳しい青山学院大学法学部の細川良教授に聞きました。つながらない権利が必要とされる背景には、情報通信技術の発展、つまりスマホやタブレットがあればメールやSNSなどでいつでもどこでもやりとりが可能になってしまったことがあります」
「そして仕事と常につながっている状態というのは、心身の健康に影響を及ぼします。深夜に連絡などが来れば寝る直前でも作業することになり、睡眠の質が低下します」
「また、寝てる間に『もしかしたら連絡が来るんじゃないか』と心配していると、よく眠れないということも考えられます。睡眠の質が悪くなると、肉体的にも精神的にもマイナスを及ぼすというのは、皆さんも仕事柄あり得ますよね?」
刈川くるみキャスター
「ありますね。私は社用携帯を持っていないので、仕事の連絡もプライベートの携帯に来るんです。なので鳴るたびに一日中、『何かあったかもな』と思ってすぐに反応してしまうというのはありますね」
近野解説委員
「それは相当、小さくストレスをため込んでいると思います」
近野解説委員
「海外では法律で、つながらない権利について定めているところも出始めています」
「フランスでは2017年から法律で、従業員50人以上の企業は、勤務時間外のメールの取り扱いについて労使で協議するよう義務付けています。つまり『拒みたい』ということを協議の場で労働者が言えます」
「オーストラリアでは今年2月、従業員が勤務時間外に仕事の連絡を無視しても不利益な扱いを受けないという『連絡遮断権』、つまりつながらない権利を定めた法律が制定されたばかりです」
刈川キャスター
「日本ではどうなのでしょうか?」
近野解説委員
「日本ではまだ法整備の動きまでは進んでいませんが、企業レベルなどで導入しているところもありますし、つながらない権利を守るためのアプリを開発した企業もあります」
「レッドフォックスが2021年から提供する『cyzen(サイゼン)』で、退勤後の社員に連絡を取れなくする設定ができます。このアプリは勤怠情報も兼ねて管理し、アプリに『退勤した』と登録されれば、電話やチャットでの連絡が取れなくなるということです」
「通知が行くだけでも仕事との距離を保てず、離れられません。しかしシャットダウンされることで物理的に仕事との距離を保つことができますし、勤務外のサービス残業も防げるといいます」
「導入した企業からは『業務上の連絡がプライベートな時間に来る心配がなくなり、ストレスが減った』という声が聞かれたそうです」
近野解説委員
「一方で細川教授は、日本でつながらない権利について一律のルールを定めるのは難しいかもしれないといいます。それでも企業・職種ごとに仕事とつながらない状況をできる限り作り、まずは各所にそれを理解してもらうことが大切だといいます」
「その上で考えるべきは『休みの質』だそうです。仕事を気にせずしっかり休んで回復することで、より良いパフォーマンスを生み出すことにつながります」
近野解説委員
「私たちの不用意な連絡は、その回復の時間を奪っていると気づくことが第一歩だと、私は今日気づきました」
鈴江アナウンサー
「いつでもどこでもつながって仕事ができるようになりました。すごく便利になってテレワークも進み、効率的になっている部分もある半面、非効率な部分もあります。便利さを使いこなすためにもマイルールを作ったり、職場のルールを整えたりするのは大事ですね」
近野解説委員
「そうなんです。やり方はいろいろあるそうですので、研究する余地は非常にある案件です。特に私たちの仕事ではやりがちですので…。気を付けたいと思います」
(2024年4月5日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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