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薬局に「在庫がない」異常事態…医療現場の実情は【バンキシャ!】

2023年11月13日 10:34
薬局に「在庫がない」異常事態…医療現場の実情は【バンキシャ!】

本格的な冬の到来を前に、薬不足がより深刻になっています。厚生労働相が、製薬会社のトップを集めて増産するよう直談判する事態に。バンキシャ!は、この難局をどうにか乗り切ろうとする医療の現場を取材しました。(真相報道バンキシャ!)

10日、バンキシャ!は都内の薬局へ。ここでは約2500種類の薬を取り扱っている。全国で広がる薬不足。その状況は…。

──(記者)実際どういった薬が不足している?

葵薬局 目黒駅前店 管理薬剤師・川中彬寛さん
「せき止め」

薬局のケースには薬がひとつもない。在庫がなくなったらクリニックに伝えるようメモに書かれていた。
別のせき止めの薬のケースにも「もうない!!」というメモが。ケースの中を数えると11錠しか入っていなかった。

葵薬局 目黒駅前店 管理薬剤師・川中彬寛さん
「何にもならない。1人分にも足りない」

たんを切る薬も在庫はたったの1錠。

葵薬局 目黒駅前店 管理薬剤師・川中彬寛さん
「どうしようもないです。もうその一言につきます」


東京・荒川区にある別の薬局では、10日の朝、薬剤師が紙を持ち向かいのクリニックへ入っていった。

田辺薬局 薬剤師
「きょうの在庫表になります」

武田内科小児科クリニック 武田千賀子副院長
「ほとんど…」

田辺薬局 薬剤師
「ほとんど在庫がありません」

薬があるかどうか毎朝、報告。リストには「在庫なし」の文字が並んでいた。せき止めの薬が「在庫なし」という状態が、1週間続くという異常事態に陥っていた。そのため薬をもらえなかった人も…。

女性
「せき止めの薬がない(と医師から聞いた)」

風邪でせきが止まらないという女性。実は1週間前もせき止めがもらえず、その時は…。

「前回は近隣の薬局を3軒回って、やっとせき止めを手に入れられた」と話す女性。今回はどうするのか。

女性
「またせき止めの薬を何店舗も自分で探さなきゃいけない。もう雨なので、時間も遅いので…」

処方薬を諦め、自宅にある市販のせき止めでしのぐという。


さらに、11日にバンキシャ!が出会ったのは4歳の男の子とその母親。

息子がせきの症状の母親
「(息子の)のどの痛みとせきと」

息子は1週間ほど前から風邪の症状があり、診察を受け薬局に来たという。しかし…。

息子がせきの症状の母親
「せき止めがないということだった。他の薬局に行ってください(と言われた)」

そこで、この母親は自転車で600メートルほど離れた別の薬局へ行くことに。冬のような寒さの中で薬局をハシゴ。薬は手に入るのか…。

──お母さん、呼ばれて説明を受けていますね

そして…。

──どうでしたか?

息子がせきの症状の母親
「せき止めあったので、無事もらえました」

──お子さん用ありました?

息子がせきの症状の母親
「ありました」

1週間分のせき止めを手に入れることができた。この日の夜。

息子がせきの症状の母親
「飲めたね」

息子(4)
「ごちそうさまでした」

なぜ、いませき止めの薬などが不足しているのか。医薬品に詳しい専門家は、2つの原因を指摘する。

神奈川県立保健福祉大学大学院・坂巻弘之教授
「せき止め、たん切りの薬については、インフルエンザの急拡大によって需要が増えている。需要を満たすだけの供給ができていない」

もうひとつの原因は、3年ほど前から相次ぐジェネリック医薬品メーカーの不祥事。すべての注文に対応できない限定出荷と供給停止になった薬も。

この状況を医療現場はどう乗り越えようとしているのか。東京・杉並区にある医院には10日、風邪の症状がある2歳の女の子が…。

田村院長
「せきは結構でますよね?」

風邪の症状がある娘の母親
「最初いつもせきから始まる」

田村院長
「せき止めをお出しするんだけど、今せき止めが1個足りないので、もう1つのせき止めとたん切りを出します」

この医院では、同じような効果がある薬を代わりに出したり、処方する日数を短くしたりして薬不足をしのいでいるという。

風邪の症状がある娘の母親
「もし(薬が)なかったらどうしようと思いながら来た」

「いつもと違う感じのお薬ではありました」

しかし、代わりの薬を出すことで新たな問題も。

田村院長
「一般的なせき止めが足りない。ぜんそくの方に出すせき止めを処方するケースが増えてくる」

このまま薬不足が続くと、ぜんそくの患者に薬が行き届かなくなるおそれもあるという。この薬不足はいつまで続くのか。

神奈川県立保健福祉大学大学院・坂巻弘之教授
「(薬の)増産は年明けから。おそらく数か月、春ぐらいには、改善が見込まれるのではないか」

しかし、根本的な解決にはなっていないと指摘する。

神奈川県立保健福祉大学大学院・坂巻弘之教授
「もう少し安心して医療を提供できるように、薬の提供について企業・厚生労働省が責任を持つことが必要である」

(11月12日放送『真相報道バンキシャ!』より)

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