「薬が足りない」インフルエンザ患者急増の中… 韓国で日本のかぜ薬“違法販売”も
各地でインフルエンザの患者数が増加する中、薬不足が深刻になっています。こうした中、韓国では、日本のかぜ薬が違法にネットで販売される事態も起きています。
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8日は「立冬」です。暦の上では冬。これから気温が下がり、風邪などをひきやすい季節なのに、かぜ薬が圧倒的に足りていません。
主婦20代
「薬局にもらいに行ったら、ちょうど品切れで」
会社員50代
「(病院に)薬が出せないので診察できませんと」
都内にある調剤薬局では――
葵薬局・目黒駅前店 管理薬剤師 川中彬寛さん
「痰(たん)切り(の薬)、ムコダインは1錠しかなくて、もう1人分も出せない感じ」
――空っぽですね
管理薬剤師 川中彬寛さん
「ほぼ空で、これも痰切りだけど、これも完全に…これも1錠。1日3回は飲む薬なので、正直、何の役にも立たない状態」
ここ最近の寒暖差で体調を崩す患者が増え、今月はさらに需要に対して供給が追いつかないというのです。
そのため、薬剤師の朝一の仕事は――
管理薬剤師 川中彬寛さん
「在庫が用意できない状態になっていまして、先生(医師)に相談して…ほかの薬も今ないんですが」
8日もまた、医師に在庫が厳しいと伝える電話です。
管理薬剤師 川中彬寛さん
「もうこればっかりですね、こんなのばっかりで。患者さんがその場にいれば直接、話すというのもあるんですけど」
電話を切った直後、今度は別の病院から、かぜ薬の在庫についての電話がかかってくるほどでした。本来、薬剤師の仕事ではない電話対応に忙殺されているのです。
そんな中、8日、1か月ぶりに解熱鎮痛剤が1箱入荷しましたが…
管理薬剤師 川中彬寛さん
「先月は2箱、(先月分は)2日で終わって、きょう1箱入っても1日持てばいいかなという状況。焼け石に水なところ。薬剤師としては、患者さんに申し訳ない気持ちがかなりある」
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冬に向け、さらにかぜ薬の不足を招く大きな要因となりそうなのが、インフルエンザ患者の急増です。
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長
「インフルエンザA、陽性が出ました」
都内のクリニックでは最近、検査を受けた14人中10人がインフルエンザ陽性だった日もあったといいます。全国的に見ても10週連続で患者が増加しています。
医師は患者に対し、あらかじめ――
伊藤博道院長
「せき止めが不足しているので、もしかしたら薬局では『ありません』となるかもしれません」
さらに、院内の在庫を見せてもらうと――
伊藤博道院長
「これがなくなったら、おしまいです。宝物のような、なけなしの緊急用の1箱だけど」
厚労省は7日、不足が続くかぜ薬などについて、製薬企業に対し改めて増産を要請しましたが――
伊藤博道院長
「今欲しいんですよね。今、号令をかけているということは、しばらくはかかるだろうし、果たして追いつくんだろうか」
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ただでさえ、日本の医療現場でかぜ薬の不足が深刻なのに、お隣、韓国では日本のかぜ薬がよく効くと人気のためか、韓国の薬事法で許可されていないかぜ薬の販売が横行。当局が“違法なサイト”などを摘発する事態となっています。
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一方、富山県の病院では薬不足に加え――
富山市立富山市民病院 藤村隆院長
「現在、薬剤師は不足している状態。大体5人募集をかけても、1人か2人ぐらいしか応募がない」
「富山の薬売り」と言われるほど薬のイメージがあるのに、県全体で薬剤師不足に陥っているというのです。
富山市立富山市民病院 藤村隆院長
「(薬剤師が)都会の方に出てしまうということが多いので、(少ない薬剤師で)薬をどうやって供給・購入するかまで考えなきゃいけない」
本来の業務ではない薬の調達など、薬剤師の負担は増える一方、冬に向け全国で薬不足の危機感が高まっています。